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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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シスコン兄は調べたい


 最近、シュト兄様と懐き、私について歩いていたはずのティトが相手をしてくれない。


「……いつからだろうか?」


 思い返してみれば、能力が目覚め、眠りから覚めた後あたりからか?


 ——明らかに距離を置かれている。



「シュト兄様、この本を読んでください!」


 下の妹と弟が、ふたりで本を持って来た。


 今日は交代勤務の仕事が休みなので、一日中家にいるからか、双子の弟妹が隙あらば構ってもらいにくる。



「いいよ。でも、この本は、まだ2人には難しくないかな?」


 2人が持って来た本は、勇者が魔王を討伐するまでを記載した歴史書だ。


「ティトお姉様のお部屋にあったのよ!シャルと一緒に勇者のお勉強するの!」


 ディアはそう言って、私の膝の上に座った。


 ティトが借りて来た本なら、私も見てみたいと思い、ふたりに読み聞かせることにした。


 右膝にディア、左膝にシャル。


 双子のいつもの定位置だけれど、そろそろサイズ的に無理が出てきた。


「さすがに全部読むのは時間がかかるから、少しだけだよ」


 そう言って、細かなことは飛ばしながら、物語的な文章だけ抜粋して読み上げた。


 ふと、膝の重さが増したので2人を見たら


「眠ってしまったか……」


 やはり、ふたりには難しかったみたいだ。


 シャルは従者に任せ、ディアを抱きかかえ、部屋まで連れていく。


「いつの間にか、大きくなったな……」


 ついこの間まで赤ちゃんだと思っていたのに、今じゃすっかり小さなレディだ。


 ベッドに下ろして頭を撫でた後、本の続きを読もうと居間に戻った。


 お茶を入れてもらい、本を読み進め、最後まで目を通していたら、ふと気になった。


「……ティトは、なんでまた急に勇者なんか気にしたのかな?」


 気にはなるけど、話してはくれないだろうなと、少し悲しくなる。



「ディアも……私に冷たくなるのかな」


 ——考えただけで泣きそうだ。


 ティトは確かに冷たくなったけど、ちょくちょく私にイタズラを仕掛けている。


 分かっているけど、満足そうな顔が可愛くて、最近はわざと引っかかっている。


 ——構われるだけ、まだマシだな。


 でもここ数日、ティトの様子がおかしい。


 イタズラすらしてこない。


 ——なんなら避けられている気がする。


 勇者資料館へ行った日、食後に父と母に連れられ話をしていた。


 後から父母に尋ねてみても、なんでもないとしか言われなかった。


「絶対何かあるな……しかも重要なことだ」


 何があるだろうかと考えていたら


「只今戻りました……シュト兄様、その本」


 ティトが学園から帰宅し、居間に入るなり、私の手元の本を見て、


 凍てつくほど冷たい視線を投げてきた。


「これは、ディアとシャルが勇者の勉強をするから、私に読んでくれと持って来たんだ」


 ——勝手に部屋には入ってないよ。


 言い訳ではない。本当のことだ。



「……そうですか。では返してください」


 ティトが手を出しているので、読み終わっているし、私は素直に本を渡した。


「ティト、何か私に隠してないかい?」


 さっきから、目を合わせてくれない。


 昔から、隠し事があるとティトは目を逸らす癖があるんだよな……


「ありません!あったとしても、シュト兄様には関係ありません!」


 ティトは少し慌てるように、部屋を出て行ってしまった。


「ティトは隠し事が下手すぎるな……」


 関係ないと言われると、返って気になる。



 ——とりあえず、調べるか?



 私は席を立ち、父の書斎へ向かう。


 普段から家の執務を手伝うため、書斎への出入りは自由だ。


 ——特に変化はないな。


 パッと見、父親の書斎には何も変化はない。


「……こっちはどうかな?」


 デスクの引き出しを、上から順に空けて確認していく。


 父はマメな性格なので、引き出しごとに内容を振り分けている。


 右の引き出しは、上2段は侯爵として、下2段は外交省として、国務を担う書類などが入っている。


「特に何もないな……こっちは……」


 左の引き出しは、上から、私、ティト、ディア、シャル。


 中央の引き出しは、父と母の引き出しだ。


「……ティトの引き出しだけ、魔法錠?」


 国務に関係する物以外は、普段から鍵などはかけないはずだ。



「私には……見せられないと?」


 ティトに関する秘密……?


 嫌な予感がして、部屋を出て厨房に向かう。




「ヘルリッヒ、近いうちに我が家に来客はあるかい?」


 料理長を見つけたので、そう尋ねてみた。


「シュヴェルト様?晩餐などの予定は、聞いてはおりませんが……どうかされましたか?」


 大鍋をかき混ぜる手を止め、ヘルリッヒはこちらに意識を向けた。


「済まない、作業を続けてくれて構わないよ。茶会などがあるなら、休日の予定を変えようかと思っただけだ」


 私は適当な言い訳をして、厨房を離れた。




「……晩餐じゃないなら、茶会か?」


 そのまま中庭に出て、庭師を探す。


 シュピネル家は茶会の場合、母の自慢のガーデンに案内することが多いからだ。


 中庭の片隅で、うずくまって作業をする庭師を見つけた。


「クラウト、今度は何を植えるんだい?」


 いきなり茶会の話は、おかしいだろう?


 ——まずは世間話からだ。


「シュヴェルト様、お散歩ですか?」


 クラウトは手に鋏を持ったまま、被っていた帽子を脱いで胸に抱えた。


「手を止めさせて済まない、作業をしたままで構わないよ。ちょっと考えをまとめたくて、外の空気を吸いに来たんだ」


 クラウトの前で伸びをして見せたら、


「それでしたら、週末に使うガゼボの花が見頃ですよ。もしお疲れなら、そちらにお茶をお持ちするよう、侍女に頼みましょうか?」


 クラウトは心配しながら伝えてくれた。


「……ありがとう。お願いするよ」


 私はそう言って、奥にあるガゼボに向かう。


 クラウトが進めただけあって、ガゼボに咲く花々は見事だった。


 ジャスミンの甘い香りが漂い、スズランとリンドウが小さく揺れている。


「……ティトを表したかのような庭園だな」


 ジャスミンの花言葉は……あなたに寄り添う


 ティトの秘密は、ひょっとして……


 私は、ある予感に気づいたけれど、あまりにもガゼボに流れる風が心地よくて、


 そのまま眠りに誘われてしまった。

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