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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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家族の食事でも気が抜けないわ 

 夕食の時間になると、食堂に兄弟と妹が、それぞれ従者を連れて集まって来た。


「今日はヘルグラウ様たちと、お出かけと聞いていたので、お姉様とは夕食はご一緒できないかと思っていました。良かったです」


 妹のディアがニコニコしながら、私に話しかけてきたら、今度は弟のシャルが


「僕とディアは、今日はお庭でお茶会の練習をしていました。お姉様は今日のお出かけ、どちらに行かれたのですか?」


 シャルは何にでも興味を持つお年頃だから、お茶会の練習の話より、私の話が気になってしまうみたいだ。


 私は、そんな2人が可愛くて、食事が始まるけど、少しだけ話をしようと思っていたら……


「そうだよティト、どこにいたんだい?」


 シュト兄様が、少し遅れて入室してきた。


 ディアの言葉は聞いていなかったようだ。


 そのおかげか、和かに嬉しそうに、私たちの話に参加してきた。


 ——知られてなくて良かった


 シュト兄様は、ヘルグ兄様の存在だけでもうるさい。アズ兄様も一緒だと言えば……


 ……余計なことは考えちゃダメ。疲れるわ。


 とりあえず知られたら、食事前にかなり面倒くさくなていただろうな。


「ディア、シャル勇者資料館に行ってきたわ」


 私が、弟妹に外出先を伝えたら


「勇者? いいなぁ……ティト姉様、楽しかった? 僕もいつか行きたいです」


 最近、剣術を習い始めたシャルは、勇者に興味津々だ。


「展示もあるけど、ディアとシャルには、今は見ても、よく分からないかもしれないわね」


 そう伝えると、2人はちょっとガッカリした。


「シャルは、剣ばっかり振らないで、ご本をしっかり読んで、勉強をたくさんしなきゃ、きっと理解できないわよ」


 ディアとシャルは双子のせいか、遠慮なく言いたいことを言い合う。


「えー、僕、本は嫌だなぁ。でも、きっと大きくなったら理解できるよ」


 ディアに忠告されたシャルは、平気そうな顔で笑っている。この2人は性差はあれど、なんだかんだと仲良しだ。


「ディア、シャル。大きくなっても、異世界の物ばかりだから、2人には展示品が何か、よく分からないかもしれないわよ?」


 あのアズ兄様ですら、説明文だけでは理解していない時があったもの。


「……ティトは、異世界の物を見て、理解できたのかい?」


 シュト兄様は、わざとではないけど、痛いところを突いてきた。


「……説明文を読み、実物を見て、同行者たちと考察しただけですわ」


 ——危なかった。


 実際、うまく説明できなくて、アズ兄様とヘルグ兄様が、いろいろ想像して、こちらに確認したのが正解だけど……


「勇者資料館で考察したのか? ティト、一体誰と行ったんだい?」


(またヘルグラウか。でも、ティトは『同行者たち』と言ったよな……他は……まさか?)


 シュト兄様の心の貫通にはだいぶ慣れたけど、困ったことに、いつも私のことになると、やたら察しがいい。


 ——本当にやめてほしいわ


 貴族令嬢は、自ら好んで勇者資料館には行かないだろうから、今回は分かりやすかっただろうけど……


 ——余計なことを言って、墓穴を掘ったわ。


「お兄様……目つきが怖いです」


 だからこっち見ないでください。と、目を逸らしていたら


「シュヴェルト話をやめなさい。ティト、お食事の手が止まっていますよ。この後、お父様に呼ばれてますから、お食事に集中なさい」


 タイミングよく、お母様からお小言を使った助け船が出された。


(お母様、ありがとうございます)


 私は即座にお母様に念話を繋いだ。


(気にしなくていいのよ。シュヴェルトは余計な暴走をするから、ティトは立ち回りには気をつけなさい)


 お母様は、上品に黙々と食事を続けた。


(お母様。暴走って……実の息子ですよね?)


 私も、黙ったまま、本日のメインのお魚のポワレに取り掛かった。


(シュヴェルトは、普段は優秀なのに、妹のことになるとおかしくなるの。なぜかしら?)


 お母様の食事が終わると、給仕がお茶を準備し始めた。


(それは……シュト兄様が『シスコン』だからでは?)


 私は、上品さが損なわれない程度に、急いで皿の料理を口に運んでいく。


(ティト、あなたいつの間にシュヴェルトの能力を知っていたの?)


 お母様の眉間が一瞬ピクッと寄った。


(知ったのは、私が能力を授かってすぐですわ。シュト兄様の心の声、ダダ漏れで……)


 私は、食事に集中したせいで、うっかり崩れた言葉を使ってしまった。


(ダダ漏れ……伝えたいことは分かりますが、こちらにはない表現ね。ティト、前世の言葉なら気をつけなさい)


 お母様には、やっぱり注意されてしまった。


(はい、申し訳ありませんでした)


 私も、ちょうど食事を食べ終わった。


(ティト、もしかして『シスコン』って、前世の言葉なのかしら?)


 お母様に尋ねられ、きれいな所作で食事を進めているシュト兄様を、ちらっと見てみた。


(お母様、その通りですわ。後からお伝えしましょうか? 本来は素敵なお兄様なのに『シスコン』のせいで台無しなのです)


 私の声を聞いて、お母様はお茶を飲みながら目を閉じてしまった。


(ティト、今後、シュヴェルトに婚約関連のこと、話しても大丈夫だと思う?)


 お母様は、お茶を飲み終わるとフッと息をついている。


(シュト兄様が余計なことをする未来しか見えません……やっぱり、お兄様には正式に決まるまでは言いたくありませんわ)


 私の食事が終わり、シュト兄様の食事が終わる前に、お父様が声を掛けてきた。


「ティト、もう食べ終わったのなら、話があるから、そろそろ執務室に来てくれ」


 お父様に言われ、私はお母様との念話を止めて、部屋を移動するために席を立った。


「お父様かしこまりました。すぐに参ります」


 おかげで、食後のシュト兄様に捕まることなく、両親と共に執務室に向かった。



 ——シュト兄様から逃れて良かったわ



 シュト兄様は、何をやっても有能な人だ。


 だからきっと、ヘルグ兄様の存在だけでなく、アズ兄様のことにも気付いているはず。


 ——絶対、アズ兄様の邪魔してくるわよね


 シュト兄様のことだから、きっとアズ兄様を認めたくなさすぎて、あえて口にしないのだ。


 頭の中から存在を消しているんだろうな。

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