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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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報告と心の叫び 

「それじゃあ、また明日」


 ヘルグ兄様は、にこやかに


「ご両親にも、よろしくと伝えて」


 アズ兄様は、何か含みを持たせたように、それぞれ挨拶をして馬車は去って行った。


「ごきげんよう」


 私は疲れを感じたまま、馬車が角を曲がるまで見送った。



「お嬢様、お帰りなさいませ」


 ソフィアが出迎えてくれたので、荷物を預けて一緒に自宅に入ると、


「おかえりティト」

「ティト、遅かったわね?おかえりなさい」


 玄関口に、なぜか両親が待ち受けていた。


「お父様、お母様? そんなに遅くはないはずですが……わざわざ出迎えて下さったの?」


 なぜかしら?


「今日はグランディエラ様と、どちらまでお出かけになっていたのかしら?」


 お母様から、お出かけの話を尋ねられた。


「3人で、勇者資料館まで行って、帰りに噴水広場のカフェへ行ってきましたわ。その……何か不都合でもありましたか?」


 ヘルグ兄様の事は聞かないのかな?と思ったけど、チャコ姉に出会ったことを内緒にしたいから、余計な事は言わない。


 万が一、チャコ姉が勇者だと話が流れたら、私が先生に恨まれそうだしね。


 チャコ姉のことは……今は黙っておこう。


「勇者資料館?また、子供が行くには随分と珍しい場所へ行ったな」


 勇者資料館は、なかなかにマイナーな施設のようだった。


「先日、授業で聞いた後、ヘルグ兄様から勇者は『転移者』が多いと聞いたから、興味を持ったのです」


 お父様とお母様なら、私が魂の転生者だから、気になったと伝わっただろう。


 2人とも、シンクロしながら頷いている。


「カフェに寄ったなら、夕食は一緒には食べないのかしら?連絡はしたの?」


 お母様は、一緒に食事することが出来ないのかと、少し悲しそうだ。


「いえ、少しだけしか口にしていないので、夕食は一緒に食べさせてください」


 ついでに、カフェで起こったことを、二人に伝えておこうかな?と、考えていたら、


「ティト、玄関口で話すものではないよ。夕食には少し早いし、リビングに向かおうか」


 お父様に注意されて、私たちは玄関からリビングに向かった。


 ソファーに座ると、ソフィアは迅速にお茶を淹れてくれる。


 ——彼女は仕事が早いわね。


「お父様、お母様、先程カフェで起こったことなのですが……」


 私はカフェでの出来事を、2人にかいつまんで話をした。



「呼ばれもしないのに、VIP席に?!」


 お父様は、驚きのあまり声が上擦っていた。


「しかも、ノックの返事も待たずに……」


 お母様は、マナーの悪さに顔を歪め、そのまま絶句してしまった。


「フルオリート家は、娘可愛さのあまりに、貴族教育以前に『人としての教育』すら出来ていないみたいだな」


 お父様の表情、お仕事の時の厳しい顔になっているわ。


「ノックの返事を待つことすらできないなんて、獣と同じですわ。今後、店の利用は控えるように、今度のお茶会で皆にお伝えしますわ」



 ——これだから、貴族社会は怖いわ。


 内容にはよるけれど、子供の失態すら、その家の評判を下げることになるのよね。


 ——最近緩んでるし、気を引き締めなきゃ


 私が彼女を庇って、言わずにいても、アズ兄様とヘルグ兄様は必ず報告するだろう。


 私だけが沈黙すると、今度は、事を知らなかった両親が、周りから非難されることになるのだから、黙っておく選択はない。


「アズ兄様、その令嬢に付き纏われて、困っていたみたいなので、丁度よかったみたいです」


 私の言葉に、2人は顔を合わせて、頷き合い納得していた。


「アズール君も、大変だったのだな……」


 お父様は、何やらとても共感している。


 ——同じような経験があったのかしら?


「しつこく言い寄るなど、淑女として恥ずべき行為ですわ。今回のことも、グランディエラ家の事だから、しっかり対応されるでしょうね」


 お母様は、余程、嫌悪感が酷いのか、目を瞑り頭を振っている。


 2人ともアズ兄様のことを、気にかけているみたいだわ。


 ——何かあったのかしら?


「そういえば……お父様とお母様、朝、アズ兄様達と何を話していたの?」


 ふと、朝のことが頭をよぎったので、尋ねてみたら、


「うん、まあ、なんだ。ティトの気持ち次第ではあるが……今はまだ、気にしなくていい」


 お父様は、何だか煮え切らない返事だ。


「旦那様、悠長に構えていてはなりませんよ。今回のこともありますし、早急にお返事をお願いしますね」


 お母様は、お父様を急かしている……


 私とアズ兄様が関係すること……



 ——あ!これはもしかして。



「もしかして、私、アズ兄様と婚約することになるのですか?」


 私の質問に、両親はびっくりしている。



 ——そんなに驚くことかしら?



「アズール君と話をしたのかい?」


(もしかして、心の声を聞いたのか?)


 お父様、焦って心の声が貫通しています。


「ティト、能力を使ったわね?」


(グランディエラ様との事は望みだったの?)


 お母様も貫通してますし、どちらも違います。


「いえ違いますよ。何となく話の流れ的に、そうなのかなと思っただけです」


 貴族令嬢の年齢的にもあり得る話だし、このくらいなら、心を読むほどのことではない。


「そうか、今は話す時間がない。ラヴェル、ティトと共に、食後に執務室に来なさい」


(はあ、そうだった、娘は見たままの精神年齢ではなかったな)


 お父様は、苦渋に満ちた顔をしている。


 アズ兄様との婚約に何か、懸念しなければいけないことでもあるのかしら?


 お父様の苦悶の表情に、私は少し不安になってしまった。


「旦那様、その顔おやめくださいな。ティト、お父様は怖い顔なさっているけど、悪い話ではないから、気にしなくていいのよ」


 お父様は、お母様に注意をされると、手で顔を塞いで天井を仰いでいる。



 ——どう見ても、難題にしか見えないわ。



(嫌だ!まだ、娘は嫁にやりたくない!)



 お父様の、貫通した声のおかげで、お母様の言う通り、気にしなくていいと理解した。

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