勇者(聖女、魔法使い)賢者
私は、チャコ姉に先日に起こった、アルゼとの出会いを話すことにした。
「彼女に初めて会ったのは、襲われたのを偶然助けた後だったし、アルゼは貴族と距離をとる立場が染み付いているの」
家柄だけなら、アルゼも高位貴族なのに
「多少は緩んだけどね。私は気にしないのに」
チャコ姉も、アルゼの家族の話を聞いているからか、アルゼの考えが理解できるのだろう。
ちょっと困ったような顔をしていた。
「そうか、だから知らなかったことにしたんだね。その方が賢いわ」
急に、チャコ姉が大人っぽく見えた。過去になにか思うことがあったのだろうか。
「因みに私は、聖女にはまだ会っていないわ?
見ての通り子供だから、一人では行動できないもの」
空気を変えるために、私はチャコ姉に聖女の話を振った。
「ティト、貴方今幾つなの?」
今更、チャコ姉が私の年齢を聞いてきた。
「え、今?11歳ですわ」
気持ちが。切り替わったならいいけど…
「まだ子供だもの、遠方へ一人で行動するのは確かに無理ね?聖女はフェルゼンにいるらしいよ。私は、アルゼに紹介状書いてもらったよ」
聖女、すでにフェルゼンにいるんだ……
「そうなの?近いうちに行く機会があるから、私もアルゼに紹介状書いてもらおうかな」
もしかしたら、いつか会えるかもしれないわよね?
チャコ姉もせっかく会えたんだし、討伐後に、帰ってしまわないといいのだけれど……
「ティトは、前世の記憶しっかりあるの?」
ちょっと、しんみりした気持ちで、前世の話を尋ねられ、ついうっかり、記憶が色々よぎってしまった。
「しっかりあるわよ? 能力開花した時に全て思い出したの」
普段は、あまり思い出さないようにしているから、不意打ちはちょっと困る。
「……何かあった?」
チャコ姉は、私の顔色が変わったのを、感じ取ったのだろう。
しまったな……
「うん、まあ納得はしているかな。今思えば結構大変だったなって思うのよね」
前世だもの、今更隠すことでもないし、終わったことだわ。
「変なこと聞くけど、魂の転生者って……」
チャコ姉は、おそるおそる聞いてきた。
「ん?死んで転生するんだよ?知らなかった?」
前世に対しては、あまり実感はないのよね。
「アルゼは、人間関係の記憶がないとしか言わなかったわね」
チャコ姉は、アルゼのことも考えたみたいだ。記憶がないのは、少しだけうらやましい気もする。
「そっか、ある意味幸せかもね?私は死に際までしっかりあるわよ」
死んだ自分の姿を見てから転生したの
「なんなら向こうで忘れていた記憶まで、能力のおかげで見れるのよ。疲れるから見ないようにしているわ」
覗いたところで、あまりいいものでもない。
「それは、大変そうね?」
——チャコ姉に気を遣わせてしまったわ。
「見なければ平気よ?ただ、しっかりある記憶に関しては、こちらとの違いを比較しちゃう時もあるのよね」
おかげで気を付けていないと、考えが殺伐としてしまうの。
「前世、大変だったの?」
チャコ姉が同郷だからだろうか?
こちらの人じゃないから、前世の私の話を、少し話してもいいと思ってしまった。
「よくある話よ?親がクソだったことと、悪い男に良いように利用されただけ」
——どこにでもある話だわ
「ようやく解放されたのに、若いのに病気で早死が予定外なくらい?」
自分で言ってて悲しくなるわ?
「かなり、ハードモードじゃない! 幾つだったの?」
チャコ姉が、衝撃を受けているわ。
同情じゃなくて、ただ驚く感じになんだかちょっとほっとするわ。
「26歳だったかな?自分で店を持って2年?若いからあっという間だった」
もう少しくらい、時間くれたって良かったと思うのよね。
「ごめん、軽く聞いて良い内容じゃなかった」
チャコ姉も、もしかしていろいろあった人なのかもしれない。彼女は、私を可哀そうだとは見ていないようだ。
——ありがたい存在ね。
同情されると、こちらが申し訳ない気持ちになるから……
「いいの、終わったことだし、今は幸せだから」
あの頃の私は、もう少し肩の力を抜いても良かったかもしれないな。
「それは救いだわ」
チャコ姉は、ほっとして笑ってくれた。
ちょっとしか話をしてないけど、チャコ姉はいい人なんだろうな。
そう思ったら、今度は私が彼女のことが知りたくなってしまった。




