隠せない
見つけてくれてありがとうございます。
更新は不定期になります。出来る時に頑張ります
事件の後、3人で魔力のペンを購入した。
ヘルグ兄様とアズールは、王子の分を購入するか悩んだ末、バレて文句を言って来た時用に自分達の分と共に購入していた。
「結局、皆お揃いになりましたね」
2人は楽しそうにペンを弄っている。
「4人お揃いなのに、ひとりは面識ないのがちょっと面白いよね」
アズールが小さな魔法で、水玉を作りながらヘルグ兄様にぶつける。
「あー、これ絶対に学園始まったら、ティトに合わせろ!と寂しがり屋の王子様がうるさくなるよな?!うわっぷっ!!」
話をしている最中に、急に顔に水玉をぶつけられたヘルグ兄様が、顔を手で拭った。
「ふふふ、明日、ユングの悔しがる顔が見れるのも、このペン使うのも楽しみだよ」
アズールはペンを使いこなし始めている。
ヘルグ兄様は、仕方がないなとアズール様を見て笑っていた。
「皆さんご一緒だから、王子へのイタズラが見られるのよね。ちょっと羨ましいですわ」
イタズラされる王子とか、見てみたいわ。
「寂しがり屋のティト」
とアズール様は笑う。
「だな?」
ヘルグ兄様も、賛同しにやにやしている。
「寂しいですよ?だって、いない所で楽しい事が起こりそうなんですもの。
私が殿方だったら、一緒に執務室でお手伝いが出来たかもしれないのに。残念ですわ」
ちょっとだけしょぼんとしてしまう。
「ティトが男か…それも楽しそうだな」
ヘルグ兄様は.男装の私でも想像してるのか、
やっぱりにやにやしている。
「うーん、ティトが男は勿体無いかな」
あら?2人の意見が分かれたわ?
「アズール何が勿体無いんだ?」
ヘルグ兄様が、ニヤリとして突っ込むと
「え?だって可愛らしいから?」
アズール様は、ヘルグ兄様を首を傾げて見つめていたが…
自分が何を言ったのか、理解したアズールの顔がだんだん赤くなって
「見ないでください」
顔は腕で隠しているけど、赤くなった耳が丸見えだった。
それを、間近で見ていた私も、つられて赤面してしまった。
「ヘルグ兄様のバカ」
私は、火照る顔を手でパタパタした。
アズール様はヘルグ兄様の頭を抱え、拳をグリグリ頭に当てていた。
「イテテテ!別にいいじゃないか!俺もティトの事は可愛いと思うよ?客観的にみて」
ため息と共に、ヘルグ兄様は解放された。
ヘルグ兄様も頭に血が上って、顔が赤くなっていた。アズールとはお互い赤い顔のままでチラッと目があった。
ちょっと恥ずかしかったけど、3人共揃って赤い顔をしていたのが面白くて、やっぱり3人で笑ってしまった。
帰宅して、応接室でお茶をすることにした。
ひとしきり笑ったから喉も渇いていたので、アイスティーが美味しい。
室内に来てから、何となく皆黙っていた。
こうなる予感はしていたんだ…
だから、あえて無邪気に笑い合っていたのかもしれない。
王子の護衛をやるヘルグ兄様や、側近の役回りをするアズール様が気づかないわけがない。
何かがおかしいと分かっていて、敢えて口にしなかったのだと思う。
アイスティーの氷がカランとなった。
「ティト、聞いてもいいかな?」
ヘルグ兄様が優しく聞いてきた。
「何ですか?」
出来るだけ冷静に。
「人払い出来るか?」
ヘルグ兄様は、ソフィアをちらっと見た。
「それは何故ですか?」
やっぱり私の能力のことだよね…
「君の『能力について』だからだ。基本的に人に話す事じゃないだろ?」
やっぱり…何とか誤魔化せ…ないよね?
「大丈夫です。ソフィアは私の能力を知っています」
せめて、逃げ道を作りたいわ。
「うん。それはいいんだ。俺の能力の話もするから、出来れば遠慮して欲しい」
だよね、分かってはいたけど…
「分かりました。ソフィア、少し外して下さい」
ダメね、もう隠せないよね。
せめて、家族には迷惑をかけたく無いわ。
「単刀直入に聞く。ティトの能力はなんだ?
声を出していなかったアズールと会話したり、さっきの馬車の停止。
あの女性の救出は、偶然とは思えない。
後、ツァオバライ商会で初めて会った日も、急に俺に話しかけて来たよね?
あの時も、事故は未然に防がれた。今言った話は偶然ではないよね?」
全部気付いていたのね。
——確信するまで話さないとか狡いわ。
「ヘルグ兄様、確信して物を言っていますね。
ご想像の通り、偶然ではないです」
さすがだな…
「やっぱりそうか。そもそもアズールが記憶違いを起こす訳がないんだ」
え、それはなぜかしら?
「俺の能力は『絶対記憶』なんだ」
アズールが、自分の能力を明かした。
——私が聞いてしまっていいのだろうか
「俺は『野生の勘』だよ」
ヘルグ兄様も…兄様の能力は、ずるいわ?
私が不利なのは確定ね。もう逃げられない。
——逃す気もないでしょうけどね
「ティトの能力は、不可思議だ。俺の勘でずっと違和感があると言っていたんだ。
さっき馬車を止めた後、女性が救出された。偶然にしては、出来過ぎだと確信を得た」
ですよね、迂闊なのは分かっていたわ。
「ティトの能力に思い当たることがある。昔読んだ歴史書に記載してあった。
会話もしてないのに伝わる能力で、確か100年に一度の能力『以心伝心』。ティトの能力はこれじゃないか?」
——さすが『絶対記憶』
バッチリ当てられてしまったわ。
「そうだとしか言えない状況に追い込んで、もし違ったらどうするつもりだったのですか…。
とりあえず、私の能力は強すぎるんです。
知られてしまったら、権力者に良いように利用されてしまうのでは?と考えました」
だから黙っていたのに…
「そもそも貴方達は、私の能力を利用する可能性のある親を持ち、2人も、先の時代の最高権力者の側近なんですよね…
だから、本当に会うのを躊躇したのよ。
本当に、貴方達には会いたくはなかった」
2人が押し黙ったまま聞いている。
「この事を、ご自身の親や王子様や王様にお話ししますよね?
多分、すぐに私は隔離されて、厳重に管理されるでしょう。
そうなることを危惧して、私はお父様やお母様に口止めしました」
私は自由に生きたいだけだった。
「2人には、外す事が出来ない立場があるでしょう?言っても構いませんよ。
今後、私が権力者の要望を聞かない場合、危険人物扱いされ、能力封印されるでしょうね。
もしも権力者が私を、自分の我欲のために利用しようと考えた場合は、私は自ら即座に命を絶ちます。
私の能力は余りにも強力で、扱う権力者によって、生命と尊厳が脅かされる能力なのだと、
くれぐれもお忘れなく」
もう、自由なんて無くなるわね
「貴方達も権力者ですよね?私を国の為だ!とか言って、都合良く利用しますか?
私の能力は私の物です。私が必要だ、と判断したときにしか使いたくありません。
政治利用や戦争、派閥の問題に利用されるなどまっぴら御免です。
私が守りたいと思い、助けたいと思った人、その人達の為だけに私は能力を使いたい」
2人を睨みつけ一気に言ってやった。
——どうせ捕まる。もうどうでもいい。
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