専属侍女ソフィア
いざ、ソフィアに話そうと思ったけど……
——緊張して言葉が出ないわ
もし、気持ち悪がられたらどうしようとか、怖がられてしまったらと考えてしまう。
——不安が尽きないわ
それでも話さなくちゃと気を整えた時、
「お嬢様、お茶をお入れしましょうか?」
(何か大切な話をしようとしているのね。お嬢様、とても緊張しているわ。お茶で、少しでもリラックスできると良いのだけれど)
ソフィアの、私を気遣っている声が聞こえる
——何に迷うことがあったのだろう。
彼女はいつだって私のことを、しっかり見てくれている。
「そうね、美味しい紅茶を入れてくれる?そして、一緒に座ってお話ししましょう」
一瞬のことだけれど、ソフィアの心からの気遣いがわかり安心した。
だからこそ今は、ソフィアに自分のことを聞いてもらいたい。
——ソフィア、なんて言うかかな?
能力が特殊だから、誰にでも言えるわけではない。伝える人を選ぶ能力だと思うからこそ、
ひとりで抱えるには、重たすぎるの……
自分のこれからの為には『信用できて、支えてくれる人』を、増やしたほうがいい。
「お待たせいたしました」
そっと、ティーカップが目の前に置かれた。
ソフィアは自分の分も準備すると、姿勢を正して向かいのソファーに座った。
「お嬢様、とても大切なお話なのでしょう?以前から、何か伝えたそうな表情をしておられました。やっと話してくださるのですね?」
ソフィアは、いつもの穏やかな笑顔だ。
「雰囲気から察するに、とても難しい話のようですが、私でよろしければ、お嬢様の抱えるお荷物を一緒に持たせていただけませんか?」
ソフィアが、気遣ってくれた言葉を聞いただけで、涙が出そうだった。
「ありがとう、ソフィア。今から言う話は、どんな事があろうと他言無用です。家族であっても、一切誰にも言ってはいけません」
だから、どうか……
「ちなみに、この話を知っているのは、私のお父様とお母様、たった二人だけです」
ソフィアのくっと息を飲む音が聞こえた。
「お嬢様、私はどんな話でも受け入れるつもりです。しかし、そのような機密を、私のような立場の者が聞いても大丈夫なのでしょうか?」
(お嬢様のことであれば、すべて知っておきたいけれど、それによってお嬢様が不利な立場になるようなことがあってはいけないわ)
ソフィア、やっぱり私のことを優先的に考えてくれるのね……
(私のような立場の弱い人間が、お嬢様の秘密を抱えるならば、この命をかけなければ!)
「ソフィア、命はかけなくていいわ」
私の言葉に、ソフィアが目を見張った。
「お嬢様、私、今口に出しておりましたか?」
(思いが口から溢れてしまったのでしょうか?たとえお嬢様が許してもら私は命をかけて、全力でお嬢様の秘密をお守りしたいと思います)
「あのね、ソフィア。あなたは口に出してはいないわ。これは私の能力なの」
スッと、ソフィアの表情が真面目になる。
「私の能力は『以心伝心』口にしていなくても相手の心が聞こえるの」
ソフィアはハッとして私の顔を見た。
——ソフィアの驚きは最もだわ
「秘めている思いも、全てよ。だから、周りの人は、私には何も隠し事ができなくなります。裏も表も、すべて私には聞こえてしまうの」
専属侍女になんか、ならなければ良かったと思うかしら?
「これから先、私の能力は、人を助ける為や揉め事を回避するために使います。一番側にいるソフィアには、知っていてもらいたかったの」
ソフィア、ごめんなさいね。あなたはもう逃げられないのよ。
「全て聞かれるなんて、怖くはないかしら?」
私が話し終えると、ソフィアはボロボロと涙を流していた。
——そんなの、やっぱり気持ち悪いわよね
「そんな!素敵な能力です!素晴らしいじゃないですか。私の心であれば、いつだってどんな時だって聞いていただいて構いません」
ソフィアは立ち上がると、涙を流しながら、怒涛のように話し出した。
「むしろ私の、お嬢様への愛が、すべて伝わるかと思うと嬉しくてたまりません」
神に祈るかのように、ソフィアは手を組んで私を見つめている。
「いつも言葉にできない思いを抱えて、何とかこの思いが。伝わればと思っていたくらいです。全ての神に感謝したいです」
——やだ、本当に祈りだしたわ
「私にお嬢様の秘密を、打ち明けていただく名誉を授けてくださり、ありがとうございます」
ありがたいけれど、なんで、彼女はこんなに、私に尽くしてくれるのかしら?
「大げさよ、ソフィア。受け入れてくれてありがとう。これからは、貴女には沢山負担をかけるかもしれません」
とりあえず、受け入れてくれて良かったわ。
「逃げたくても、ソフィアのことは、もう逃がしてあげることができません。私とずっと一緒にいてくれますか?」
お父様は、約束を疑えるような時は、その時は始末すると……そのような事にならないように、私がしっかりと努力をしなくちゃ。
「一生どころか死んでも望むところです。むしろ幸せです。前から言っておりますが、私はお嬢様に仕えることが幸せなのです」
ソフィアからは、さっきからずっと裏の声が聞こえてこない。
「私には、お嬢様の考えを読むことができませんが、誰よりも理解できるように、これからもそばに侍ります。よろしくお願いします」
打算などではなく、心からそう考えてくれているんだろうな。
——貴重な存在だわ
きっとこれから振り回すことになるけれど、
よろしくね、ソフィア。




