ガッカリよ
私は思い悩んだ末に、ヘルグ兄様に手紙を書いていた。
「『……なので、一緒にアズール様への贈り物を選んでいただけませんか?』こんな感じでいいかしら?」
ソフィアに、書いていた手紙を見せる。
「他の殿方への贈り物を、別の殿方に相談すると言うのは、いかがなものかと……当人同士が納得されているなら問題ないのでしょうか?」
ソフィアはやれやれ、と首を振っている
「あら、ヘルグ兄様は、そんなことは気にしないわ?それにアズール様のお友達だから、一緒に選んでもらったほうが効率が良いの」
あれこれと、しきたりが面倒臭いのよ
「お嬢様は御令嬢なのですから、効率よりも思いを込められてはいかがでしょうか?」
ごもっともな意見で耳が痛い。
——いやよ面倒くさい。
「思いも何も、ほとんど会ったこともないような相手なのよ?そんな人に贈り物をするなんて初めてなんですもの。困ってしまうわ」
家の立場を考えると、変なものは贈れないし
「お嬢様はその方のことを、とても気にしてらっしゃるのですね?どうでもいい相手なら、菓子折の1つ送っておしまいじゃないですか?」
——ギクッとした。
確かに気にしすぎかも。
もっとあっさりで良いのかもしれない……
けれど、全くの他人として何を考えてるのかわからない状態より、いっそ、近くで様子を見たほうが安全のような気もする。
あれ以来、私はあまり能力は使っていない。
——怖くて使えないのよ
でもうまく使うには、適度に能力に慣れて失敗をしないようにしなければならない。
「素敵なものを頂いてしまったから……」
今のところは、お父様とお母様以外には誰にもバレていない。
——もう少ししたら、学園が始まる。
それまでに、隠しながら、上手に使えるようになりたい。
ふと、ソフィアを見ると、彼女がじっとこちらを見ている。
——何か不自然な点でもあったかしら?
何かあったのか、と首をかしげると
「僭越ながら、お嬢様お尋ねしたいことがあるのですが」
ソフィアが、真剣な顔で答えてきた。
——何か感づいてしまったかしら?
「どうかしたの?」
と、恐る恐る尋ねたら
「もしかしてなんですけれど、いえ、違うかもしれないのですけれど、なんていうか、その、お嬢様は、もしかして?」
ソフィアが言い淀んでる。瞳に力を入れてこちらを見ている。
まずい、まさか、ソフィアに能力がバレてしまったのかしら?
急に居心地が悪くなり、私は姿勢を正した。
「お嬢様は、アズール様のことが、殿方としてお好きなのですか?」
ソフィア?!その考えたは、がっかりだわ!
「はぁ……ソフィア、一瞬しか会ってないのよ。どうやって好きになれと言うの?」
姿勢を正し、力んでいた力が一気に抜けた。
「お嬢様、世の中には『一目惚れ』なるものがございます。それであれば、一瞬でアズール様を好きになっていてもおかしくありません」
ソフィアは、両手を握り締めて、頬を赤らめて、力強く訴えてくる
「いやいや、それはないでしょう?」
私、どれだけ惚れっぽいと思われてるの
「お嬢様、私の調べによりますと『宰相閣下のご子息』のアズール様は、大層見目麗しく、お年頃の令嬢や女官からも人気とのことです」
あら、アズール様はそんなに人気なね?
「ですからお嬢様が一目惚れをしたとしてもおかしくありません。贈り物もとてもセンスが良く、お嬢様にぴったりのものです」
ソフィア熱量がすごいわ。
「ソフィアはお嬢様を応援しております。ですから、お嬢様、ソフィアにだけはお心の内を話して頂いても大丈夫ですよ」
——そして、見当違いで間違っているわ。
「ソフィア、気にしてくれるのはありがたいけれど、全く違うわ。アズール様のことを、そのような目で見るほど時間は過ごしておりません」
だから、それはあり得ない勘違いだわ。
今度会うときに暴走しないように、しっかり釘を刺しておくべきね。
「そうなのですか?てっきりそうなのかと思ってしまいました。申し訳ありませんでした」
ソフィアは、私の能力も起こった事も知らないから、違和感を感じているのかもしれない。
毎日、それこそ家族より側にいるから、ちょっとの変化でも見逃してもらえない
——時間の問題よね
ソフィアに能力のこと隠すのは、そろそろ潮時かもしれない。
久しぶりに頭の中のスイッチをオンにする
(お父様、お母様、聞こえますか?)
((聞こえるよ。聞こえるわ。))
(ちょっとご相談があります。このままでも構いません。今お時間大丈夫ですか?)
(とりあえず私は大丈夫よ)
(返答は少し遅くなるかもしれないが、話しながら聞こう)
(ありがとうございます。専属侍女のソフィアの件です。彼女に私の能力を話しても良いですか?
彼女はいつも私を心から大切にしています)
心が聞こえる私だからこそ、ソフィアの忠誠心に間違いがないことがわかる。
(彼女に、能力を隠すことがいいとは思えません。口止めをし、協力者にしたほうがいい気がします。お父様とお母様はどう思われますか?)
(私は、あなたが伝えたいと思うなら、いいと思います。専属侍女をうまく使えるかどうかは、あなたの力量次第じゃないかしら?)
お母様は、あっさり了承してくれた。
(お母様、ありがとうございます)
(ティト、お前が信用できると言うなら、きっと大丈夫だろう。ただ、ソフィアが、約束を違えるようなことがあったら……)
お父様も了承してくれてはいるけど……
(その時は、彼女の存在を消すよ。そんなことにならないように、ティトがしっかりと手綱を握っておきなさい)
裏切りに対しては、かなり厳しくなりそうだ。
(お父様もありがとうございます。この後ソフィアと話します。頑張ってみますね)
(頑張るのよ)
(がんばりなさい)
(はい、では繋がりを切ります。ありがとうございました)
私は、瞬きを1つして繋がりを切ると、念のため、能力はつけたままソフィアに話しかけた。
「ソフィア話があるの。聞いてくれる?」




