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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
第1章 始まりのお話

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眠り姫と懐かしの人

 ep2、全ての物語に始まりがある。

 続きの時間軸になります。



 ***



 馬車は、ガタゴトと揺れながら、王宮を背にして街道を走っている。



「ティト、身体は? もう大丈夫なの?」


 馬車の中は、お母様と2人だ。


 パーティーを抜け王宮を出る時に、能力はOFFしているので、お母様の考えは読めない。


「お母様、私はもう大丈夫です。今日は、能力をONにしたので、会場の子供の剥き出しの感情と、人の熱気に当てられて……」


 あんなに疲れると思わなかったの。


「噴水で休憩しようとしたら、青年の存在に気付かず、心の声と会話してしまいました。とりあえず誤魔化して、立ち去りましたが」


 ——何か気付いてしまったかしら?


「まあ、大丈夫なの?」


 お母様も、私の能力がバレなかったか、心配な様子だ。


「青年も、会話したかどうかあやふやな様子でしたので、大丈夫かと。その後、会場の反対側に向かってしまい、遠回りになって……」


 ——そう言えば、彼は誰だったのかしら?


「それで疲れて階段で眠っていたの?」


 お母様は、あらまぁと頬に手を当てている。


「眠る予定ではなかったのです。足がとても痛くなってしまい、階段で休憩したら会場に戻る予定でした」


「でも座ったら、気が抜けて、思わず眠ってしまったの。令嬢として、恥ずべき失態でした。お母様、ごめんなさい」


 ——本当に恥ずかしいです。


「そうね、令嬢としては、有るまじき行為です。第一王子と護衛騎士が、内密に客間に運び、医官が診断する間に伝えてくれました」


 第一王子様にご迷惑をおかけしたなんて……


「そのお陰で、人の目に晒されることもなく、大事にはなりませんでしたが、王子達が紳士的な行動をしたから、良かっただけですよ」


 ありがたいことだけど、貴族令嬢失格ですわ


「あなたは令嬢なのよ? 軽はずみな行動は、

 醜聞だけでなく、身の危険もあるということ、しっかり覚えておきなさい」


 お母様、ぐうの音も出ないです。


 ——本当にその通りだわ。


「お母様、第一王子と護衛の方に、お礼になる物をお届けした方が良いでしょうか? どのような方でしたか?」


 男性には、お礼をする際に何を差し上げたら良いのかしら?


「お礼の品は「シュピネル家から」として用意するので大丈夫よ。貴方は、素敵な便箋で彼達に、丁寧に御礼状を書きなさい」


 丁寧な御礼状……


 書き方を思い出さなければ。


 ——まずい、すっかり忘れてるわ。


 お母様に知られたら、淑女教育のやり直しを一からさせられてしまう。気を付けなきゃ。



「そういえば、貴方を抱えてくれた護衛騎士、ヘルグラウ様よ。ツァオバライ商会で出会って、仲良くしていたの覚えているかしら?」


 お母様は、ウキウキしながら「懐かしいわ」と、ヘルグ兄様の話をしている。



 ——しっかり覚えてますわ。



 ヘルグ兄様に向けられた、怒りと、冷たい冷気を纏った、シュト兄様の笑顔と一緒に……


「覚えてますわ。折角仲良くして下さったのに、あの後、全然会えなくて、あの頃はガッカリしていましたもの」


 そっか、ヘルグ兄様が運んでくれたんだ


「実は、シュト兄様に邪魔されていたと、最近になって知ったのですよ? シュト兄様には、ちょっとキツめに文句を言いましたわ」


 全く、シスコンは厄介でしたわ……


「私が怒ったら、この世の終わりみたいになってしまったシュト兄様が、心底面倒くさくて、嫌になりましたわ」


 ——思い出すのも嫌ですわ


 ちょっとだけ眉間に力が入り、お母様も迷惑そうな顔をしている。


「あの頃のシュヴェルトは確かに酷かったわ。あの時フェルトシュパート家から、何度も来訪の打診を頂いていたのよ」


 そうだったのね。会えなくて残念だわ。


「あの子が無駄に才能を発揮して、悉く話が流れたのよ? 何だったのかしら?」


 本当、なんでそんな時ほど優秀なのよ……


「普段から、冷静で策略家ではあるのだけど、ティトに対してだけは、何故かおかしな方向に向いてしまうのよね」


 お母様もお兄様の行動を思い出したのか、疲れた顔をした。


「ティトに不利益や、直接的な害がないから見逃してはいるけれど……ねぇ……」


 お母様は、困るわね。とため息をついた。


 確かに実害は無い。妹として大切にしてくれているのも分かる。


 ——要するに、ただのシスコンだ


「先日、文句を言ったら、シュト兄様がやさぐれてしまって、仕事にならないと従者達に泣きつかれ仕方なく、フォローしましたわ」


 シュトのは部屋の隅でジメジメしていて、今にもカビが生えそうだった。


「その際に、今後、私の付き合いに口出ししたら絶縁すると、しっかり釘も刺したので、以前よりは少しはマシになりましたよ」


 ついでに、言いたいことを全部言ったから、ちょっとスッキリしましたわ。


「……シュヴェルトの事はどうでもいいわ。それより、久しぶりにお礼も兼ねて、ヘルグラウ様を、お茶にでもお招きしてはどうかしら?」


 お母様は、お兄様の話はあっさり切り捨て、ヘルグ兄様を迎える計画をしていた。


「第一王子には、別でお礼の品を送るとして、ヘルグラウ様からも、ティトが謝罪していたとお伝え頂くのが、良いのではないかしら?」


 お母様は、シュト兄様の話とは違い、とても嬉しそうだわ。


 ——ヘルグ兄様、私を覚えているかしら?


「ヘルグラウ様にとって、お招きしてもご迷惑でないなら、お会いして謝罪したいです」


 会えるなら、もう一度会いたいわ。


「抱えて運んで頂いたのに、御礼状だけだと、

 かつてのシュト兄の迷惑もあるし…・1申し訳なさで心苦しいです」


 シュト兄様の事を絶対に謝らなければ。


「では、帰宅したら招待状を送りましょう」


 謝罪のためだけど、ヘルグ兄様に久しぶりに会えるなら、とても楽しみだ。



 何か、贈り物でもしようかしら?




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