ティーフロート14歳の朝
第二部が始まりました・:*+.\(( °ω° ))/.:+
コンコン
——ああ、もう朝だわ。
ガチャッ
「ティト様、失礼致します」
——ソフィアが起こしに来たのね
シャァッ
「ティト様? ティーフロート様! 朝ですよ」
——ん、眩しい……もう少し眠りたいわ。
バサリ
「……お嬢様、おはようございます」
私の侍女は、お構いなしに暖かくて幸せな布団を剥ぎ取った。
「……ソフィア、酷いわ」
一気に冷たい空気にさらされたので、私は横になったまま膝を抱えて丸くなる。
「……お嬢様、『新学期初日は、門が混み合うから早く迎えが来る』のでは?」
ソフィアは呆れた顔をしながら、剥ぎ取った布団を畳むと、私の手を握り、無理矢理引き上げた。
「……まだ眠いですわ」
体を起こしはしたけど、動きたくない。
でも、ソフィアがお嬢様と呼ぶ時は、注意が必要だわ。
「お嬢様、学年も変わりますし、髪型を新しく変えましょうか? リボンはどちらを?」
やる気の出ない私とは違って、ソフィアはリボンを手にして準備万端ね。
「……任せるわ」
だって、今は何も考えたくないもの。
ぽすんとドレッサーの椅子に座ったけれど、真っ直ぐ座ることすら、ままならない。
「お嬢様、しっかりしてください。せめて、姿勢だけでも維持してください! 変な頭になったら困ります!」
髪を梳かされるたび、私の頭はグラグラと櫛についていくから、ソフィアが根を上げた。
「……ソフィアなら、大丈夫よ」
小言を避けたくて、軽くほめておく。
根拠はないけど、ソフィアならなんとかできてしまうの。
だって、私の侍女は、仕事ができるもの。
「くっ、ティト様からの期待……ここで応えられなきゃ女が廃りますね」
単純なソフィアに身を任せたまま、いつまでもふわふわと微睡んでいた。
***
「お父様、お母様、行ってまいります」
玄関ロビーまで、見送りに来てくれた両親に挨拶をして、迎えに来ていたグランディエラ家の馬車に乗り込むと、
「ティト、おはよう」
「へぇ、ティト、髪型変えたんだな?」
婚約者のアズ兄様と、幼馴染のヘルグ兄様が爽やかに挨拶をしてくれた。
——ヘルグ兄様、よく気がついたわね?
「おはようございます。新学期だからソフィアが頑張ってくれたのよ。どうかしら?」
私は首を左右に揺らし、2人に髪型をアピールしてみた。
「ティトは、何をしても可愛いよ」
アズ兄様は、愛おしそうに目を細めて微笑み、私の髪をするりと撫でた。
——うっ、朝から眩しいわ。
「ティトのことだから、どうせソフィアに丸投げだろ?」
ヘルグ兄様は、ケラケラ笑いながら図星を突いてきた。
——理解され過ぎて、ちょっと不満だわ。
「ヘルグ兄様、ディアとシャルがいないからって、言葉遣いにはお気を付けくださいませ」
ヘルグ兄様は、妹のディア(フリーディア)と婚約して以来、妹と私の扱いの差が激しくなった。
ヘルグ兄様、ディアには紳士的だし、いちいち甘いのよ。
「別に、ディアとシャルがいてもティトへの扱いは同じだけど?」
ヘルグ兄様は、アズ兄様に向かって、何か違ったか? と首を傾げている。
「今日ディアとシャルは、朝から実行委員の仕事か?」
アズ兄様は、ヘルグ兄様に苦笑いして見せた後、最近一緒に登校する弟妹のことも、気にかけてくれた。
——始業式参加はは希望者だけだものね。
今日は王子が午前中は城での教育があり、そのため側近の二人も役目を外れてる。なので、三人して始業式への参加は見送った。
「そうなの。ディアとシャルったら、いつのまにか式典の実行委員になってて、随分早くに学園に向かったみたいだわ」
私と違って、弟妹は朝から元気いっぱいだったと、朝食の席でお母様から聞いた。
——さすがディアとシャルだわ。
「さすが俺の婚約者だな」
ヘルグ兄様は、自慢げに腕を組んだので
「待って? ディアは私の妹よ?」
私を下げられたことも含めて、ヘルグ兄様の言い方にちょっとムカついたので、つい張り合ってしまった。
「ティト、落ち着いて? 俺はティトの朝が弱いところも気に入っているよ」
横から、アズ兄様のちょっとズレたフォローのせいで、頭に血が上ろうとしたけど、勢いがなくなった。
「アズ兄様、なんで……私が朝が弱いのを知っているんですか?」
私はにっこり笑って、アズ兄様を見つめた。
——能力オン!
「あ、えっと……どうしてだろうね?」
(ヘルグ! 笑ってないで助けろ!)
「ティト、それよりも、新学期の魔術学科のことだけど……」
(アズールバカだなぁ。隠したって、どうせ、ティトにはバレるのに)
ヘルグ兄様……
「犯人は、ヘルグ兄様でしたか……そうでしたか……ふふ、ふふふ」
ディアに、ヘルグ兄様の恥ずかしい話、バラしてやる!
——シャルに言いつけてもいいかも。
私が心に決めて笑っていたら、ヘルグ兄様が顔色を変えた。
「ティト、まて、やめろ!」
(ティト、ディアに絶対余計なこと話すな!)
ヘルグ兄様が慌てているのが楽しいので、
「あら? なんのことですか?」
私は、やられたままでは嫌だったから、あえて知らん顔をした。
(ティト、能力使ってるよね?)
アズ兄様が、念話を投げて来たので、アズ兄様と念話を繋いだ。
(あ、やっぱり、ばれちゃいましたか?)
(ごめん、ティトのこと、なんでも知りたくて聞いたんだ。ヘルグは悪くないよ)
(怒ってないですよ。ただ、ヘルグ兄様に意地悪しただけです)
(なら、いいけど……)
2人だけで念話をしていたら……
(絶対、念話で話してるだろ?)
ヘルグ兄様も、念話で話し始めたので、3人で念話をすることにしたけど……
(アズール、そもそも、ティトに隠し事なんか出来ないんだから、今更何してんだよ)
(分かってるよ。でも、つい好きな子の前ではカッコつけたくなるだろう?)
(それは……そうか。ただ、相手はティトだぞ? 無理があるって)
二人は私が聞いているのに、顔が火照るくらい恥ずかしい話をしている。
「ちょっと! 本人に全部丸聞こえだわ! 聞いてて恥ずかしいから!」
——その話は、本人がいない所でやって!
私は恥ずかしさに居た堪れなくなって、念話も能力も慌てて閉じた。
読みに来ていただきありがとうございました。
成長した3人のこれからを見守ってくださいね。
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