領主との対決
領主さんは、この国の王家に復讐するのが目的だと言っていた……
それが、この力なのだろうか? 一個人が持つには過剰な程の力。
国を、全てを相手にしてでも打ち負かせられる程のパワー。
確かにこれなら、一国の王家に対してでもブッ壊しに行けるだけの戦闘力になるだろう。
でも……
「ねぇ、領主さん…… 人間を止めてまでも、この国に復讐がしたかったの……?」
領主の姿は、既に異形の様相をしていた。
ドラゴンのような翼を生やし、ミノタウロスのような身体をし、他のあらゆる箇所もモンスターのような見た目になっていた。
領地内の全てのエネルギーが、そのただ一つの身体に集束されていく……
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「うぐっ! 身体の力が、抜けてゆくっ……!?」
「ちくしょう、領主の野郎っ! 生命力が、吸われていってやがる……!!」
「町民たちは無事なのか? 体力の無い女子供たちだっているんだぞっ!?」
町の人々が膝を突き、奪われてゆく脱力感に耐えている。
エリア全体に敷かれた強制的なエネルギードレイン……
兵士や冒険者たちならともかく、非戦闘員である人々には耐え兼ねない程に危険なモノ。
このままでは、体力の無い者から順番に倒れていってしまう。
そして最後には──全員、領主のエネルギーの一部にされてしまうっ!!
「みなさん、この術式の中に避難してください! 庇護の結界を張りますからっ!!」
その場に現れたのはメアのお母さん、アンジェリカ王妃の呼び声だった。
足元に描かれた魔方陣を中心に、生命力奪取からの“壁”を作っていく。
守るための術式、邪悪なモノから防ぐための結界……
「あ、あんたは……」
「メアの母親です。この領地は、私が守りますっ!!」
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領主は異形の様相をしながら、攻撃を仕掛けてきた。
ドラゴンのように翔び舞い、ミノタウロスのように力強く。
軽く振られる1擊1擊のその全てが、途轍もなく重たい。
やがて領主は、その両手を前に構えてドラゴンブレスのような1擊を私に放ってきた。
吹き飛ばされ、服が破れ、あちこちに傷を負って血が流れてしまう。
だけど回復魔法のパーフェクト・ヒールを使って崩れた体勢を咄嗟に立て直す。
「形勢逆転だな…… どうだ、そろそろ降参じゃないのかね?」
「ははっ、言われ返されちゃったね…… ねぇ、領主さん。町の人々を、みんな犠牲にするつもりなの?」
「お前が居なければ、ここまで強引に物事を進めたりするつもりはなかったんだがな…… ひとまずは王妃の捕獲で王家を牽制し、時間を掛けて領地内のエネルギー量を生産して増やし……」
領主は、異形と化した自分の身体を見下ろす。
「……そして、この吸引の術式も。もう少しは改良することが出来たのだがな……」
そう言って、自嘲気味に笑っていた。
「──領主さん、もう止めにしない? あなたの寿命は、このままだと……」
「持って、七日といった所か。この意識が保てるのは、あと三日ぐらいといった所か。フンッ、お前を倒し、王家を滅ぼしに行くには充分な時間だな?」
領主には迷いがまるで無く。もはや、ここで命を使い尽くすつもりのようだ。
彼には全てを犠牲してでも成し遂げたい目的があるのだ。
ならば、もう……
「そっか、わかった…… だったら、貴方には私の力。魔法少女としての姿を見せてあげるよッ!!」
私はステッキを掲げて、変身を開始した。
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きっと、私個人の力だと限界があっただろう。
私一人が倒せる限界なんて、精々が大型のドラゴン1匹くらい。
領主さんはそのドラゴンも、他のモンスターも、町中の人々からも、全てからエネルギーを掻き集めている。
だけど……
──(メアちゃん、頑張って……!)
──(頼むっ、領主の野郎をブッ飛ばしてくれ!!)
──(幼女様っ、信じてますぜっ!)
私に応援を送ってくれる人々が増える度に、私は加算的に際限無く強くなっていく。
人の夢や希望が、どこまでも私のエネルギーになってゆく。
私は魔法少女メア──人の夢を喰らい続ける者。
「領主さん、確かに貴方の言う通り、一個人が持てる力には限界があると思う」
領主はどこまでも効率的だった。
洗脳で統治を行い、エネルギードレインでエリア中の全ての力を自身一人の下に集結させて。
個人が一人で鍛練して辿り着ける極致なんてたかが知れている、だからきっとその方法は限りなく正解に近いのだろう。
光のエフェクトが溢れ出し、変身が成されてゆく……
黒のゴシックドレスをベースにして、赤のフリルをふんだんに散らばめたダーク系の戦闘服。
翼は白く、それが黒の衣装が纏う退廃的な雰囲気と相まっててその存在感をより強調させる。
掲げるステッキは淡い光を輝かせ、その姿は世界の終始の告知者にも映るだろう。
「お前は、一体…… その力は、何なんだ?!」
「領主さん、あなたと同じだよ」
みんなの願いをパワーに変える──それが私の持つ、私の力。
そして人々の夢や希望を背負って戦う時に、魔法少女は絶対に負けないっ!
「最後の決着を付けましょう、領主さん!」
私は、領主に向き合った。




