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エピローグ

 カルミラを倒して三ヶ月が過ぎようとしていた。

 僕は三ヶ月の間すっと荒れた領地の回復のために寝る暇もないほどの忙しさだった。

 これもあの女カルミラが行ったことが原因だ。

 知識のないものがその場しのぎの対策を行ったため僕が見たときよりも更に悪化しているところもある。

 領地の回復はまだ始まったばかり、それも指をかけただけの段階である。部屋にいくつも高く積み上げられた対策書がそれを示していた。


「スティーブンこれでようやく半分を処理したのか?」


「そうですね。前は部屋に入り切らないほどの書類がありましたのでそのぐらいでしょうか?」


 スティーブンは狼獣人の姿ではなくオールバックで灰色の髪をした執事然とした姿になっている。これは变化の指輪の効果で姿を変えているだけなのだ。指輪を外せば狼獣人の姿に変わることが出来るのでとても便利だとスティーブンは言っていた。

 そのスティーブンは胸元のボケットから取り出した懐中時計に目をやった。


「アイザック様。そろそろお時間でございます。」


「ん?もうそんな時間か。では後はよろしく頼むよ。」


「かしこまりました。」


 うやうやしくお辞儀をするスティーブンを背に僕は急ぎ部屋を出ると別棟へ急ぐ。

 別棟へ続く廊下の窓からは騎士団の練兵場が見えルトルスが配下の騎士を鍛えている姿が見える。

 彼らはランゴルへ左遷されていたようなものであったが、カルミラが倒されたことで領都に戻ってきたのだ。


 僕は練兵場を横目に扉へと急ぐ。別棟の廊下をいつもの通りに歩くとその扉が見えてくる。

 扉の前にはメイド服を着た女性と執事服を着た男性が立ち僕に深々とお辞儀をした。


「「主殿、おかえりなさいませ。」」


 この二人はホムンクルスであり、この魔道士の館の使い魔なのだ。

 僕はこの館で保護しているアルマハ村の住人に魔法を教えている。

 獣化の呪いの影響を調べるため、保護した住民を精密検査したところ魔法の適正がある者が数人いたのだ。

 しかも魔術師ソーサラー魔道士ウィザードだけでなく付術士エンチャンター幻術士エレメンタラーなどの素養を持つものがいた。彼らの中には獣化の影響で更に魔法の適正が活性化した者もいる。

 精密検査の結果から僕は希望者を募り魔法を教えることにしたのだ。


「主殿、お急ぎください。リリアさまはもう授業を始められております。」


 耳をすませば扉の前でも子供が騒ぐ声が聞こえてくる。希望者の中には子供が多いためか魔法の授業のために集められると少し騒がしくなる。


「そうだな、声がここまで聞こえる。……一人であの人数は大変だろうし。」


 僕はそう言うと少し騒がしくなっている教室へ急いだ。


 ―――――――――――――――――――――


 ローブ姿の男が石壁を背に切りつけられた右腕を押さえ息も絶え絶えになっている。その男の前に青い全身鎧に身を包んだ者が立ち男に片手剣を突きつけていた。


「うぐぐぐぐ。情報部が何故こんなところに……。」


 男のうめき声をよそに、剣を突きつける青い鎧から女性のように思える声がした。


「……お前が攫った者の中に水色の目をしたイザークという少年がいたか?」


「イ、イザーク?水色の目?誰だ?そんな少年は知らない。それに俺はスラムから集めただけだ。問題ないだろう?!」


「……どうやらその様だな。今まで倒した中にもイザークはいなかった……。」


 青い女騎士の後ろには数多くの少年少女の躯がころがっている。そのどれもが歪な姿をしており何らかの実験の犠牲になっているとは明らかだった。


「そうだ!お前の探しているものがいないのなら何も問題はないだろう。俺もスラムの者を使って偉大な魔導の実験をしていたに過ぎない。これは新しい魔術の方法の実験なのだ!」


「そうか。ならお前に用はない。」


 女騎士がその場でくるりと振り向き突きつけていた剣を鞘に収めた。


「ふはははは。そうだ偉大な魔法使いと成る俺に何の問題はないのだ!フハハハ……ハ?」


 大声で笑う男の前に気が付くと首のない体が立っていた。


(……この体は?いつの間に?それに周りの……俺の目の高さが低い?……なんだか周りが暗くなってきたぞ?)


 しばらくすると地面に転がる男の首の目から光が消え暗くなった。

 その場から立ち去ろうとする女騎士の横にはいつの間にか華美なレースの付いた黒の上下に白い手袋をはめた男が立っていた。


「流石ですね。相手に切られたことを認識させないとは。ご苦労、後はゆっくりと休んでくれ。」


 女騎士は男に言われると屍が折り重なる部屋を出る。そして一息つくと被っていて兜を脱いだ。

 すると兜の下からは長い金髪の見目麗しい女性が現れた。


(イザークは一体どこへ?)


 女騎士は一人、水色の目で物思いに耽るのだった。

とりあえず、ここで一旦終わらせます。

続きは、機会があればまた。

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