俺の方が強い件について
俺は父さんに連れられて、剣を持って家の外に出た。まぁ、剣といっても木で出来ている、いわゆる木刀に近いものだ。
「それじゃ、始めるぞ。」
父さんは、木刀を構えながら、こう言った。俺も、準備は出来ている。
早く体を動かしたい。というか、剣を振り回したい。
「では、まず剣の振り方だが、まずは〜」
はい、出ました〜。こういう基礎から教えるのは、確かに大事やけども。でもな、俺、剣術スキルはレベル10なんですよ。振り方くらいわかるんですよ。
まぁ、そこはしょうがないか。ここまでくるとどうして稽古を受けようと、思ったか謎だわ。
マジで。
「こういう感じで振るんだ。分かったか?」
「はい、分かりました。」
父さんの話しを完全に聞いていなかった俺は、自分聞いてますよアピールをして、返事をした。
多分、父さんが今から話していく事を、俺は全部知ってしまっている。退屈な時間になりそうだ。
しかし、この後、俺の予想に反して楽しい時間がおとずれることを俺は、まだ知らない。
「それでは、今言った事を意識しながら剣を振ってみろ。」
はい?あれー?すんません私の聞き間違いですかね?ワンモアプリーズ。
「どうした?速くしないと日が暮れるぞ。」
日が暮れるどころか、なんも聞いてないから、10年経っても終わらんぞ。俺は、話しを聞いていなかった事を後悔した。
(しゃーない。こうなったらやけくそだ!)
俺は、木刀を構えて、一、二の、と自然に木刀を振り上げた。そして、ありったけの力を加えて、三、で振り下ろした。木刀を振り下ろしたと同時に、剣から白い何かが、スッと出てきた。
その何かは、俺の身長を遥かに超えていて、今も前進を続けている。俺はその白いものが何かわからなかったが、おそらく、俺の木刀から出てきたものだろうと考えていた。
その白い何かは、そのまま進み続けて、ついに家の塀にぶつかった。そして、次の瞬間には、塀は綺麗に切れていて、白い何かは跡形もなく消えていた。おお、なんかすげー。
「な、今のは剣術LV4の技、飛翔斬撃だと…。」
後ろを見ると、信じられない物でも見たように父さんが、目と口を大きく開いて、驚いていた。めちゃくちゃ面白いかおやった。今、剣術LV4の技って言ったのか。へー、コレが剣術LV4の飛翔斬撃か。
この技あれだな。アニメや、漫画の世界でよくある、飛ぶ斬撃だな。いつか、使ってみたいと思っていたが、まさか、こんなに速く使えるとわ思っていなかったわ。
「おい、クロト。お前、剣術スキル持ってるのか?それもLV4の。」
「はい、剣術スキルはもう、持っています。」
「ちなみにLVは?」
「10です。」
「うん?俺の聞き間違いか。今確かに10って聞こえたんだが…。」
「父さん、聞き間違いではありません。俺の剣術スキルはLV10です。」
父さんは、一瞬また信じられない物でも見たかのように、あのめちゃくちゃ面白い顔を俺に見せながら、次にこう聞いてきた。
「なあ、ステータスバー見せてくれないか?」
「はい、いいですよ。」
父さんは、どうやら、俺が剣術スキルを持っているとは思っているのだろうが、LV10というところでは、まだ疑っているのだろう。だから、俺のステータスバーを確認したいんだな。
父さんは、おれのステータスバーを確認し始めると、すぐに嗚咽を漏らしながら驚いていた。この顔を今日は3回も見た。3歳児が、剣術、体術などの戦闘用スキルを覚えてる時点で、まぁヤバイ奴である。しかも、俺の場合は全スキルLV10のおまけ付き。コレを見て驚かない奴はおそらくいないだろう。現に父さんは、未だに目と口がしまっていない。
しかし、ここで終わらない。父さんは、スキルだけではなく、俺のステータスまで確認し始めた。そして、例のあの顔をまたした。この驚きようは、ステータス値3桁の3歳児は、少なくとも、見たことないな。
「母さん、見てくれ!クロトはやっぱり天才だぞ!」
父さんの声が、響きわたった。しばらくすると、母さんがいそいそと出てきながら、笑顔で父さんにこう聞いた。
「お父さん、急にどうしたの?クロトちゃんは、確かに物覚えも早くて、すごい子だとは思うけど。」
「コレを見てくれ。」
「まぁ、すごい。クロトちゃんは、もしかしたら、魔王になっちゃったりしてね。」
「俺の息子だから当たり前だ。」
「お父さんは、魔王城の警備員止まりの人。そんな人からこんな天才が生まれるなんて…。」
「おい、!それは俺に対しての嫌味か!」
母さんから、まんざら冗談じゃ無いような言葉が聞こえてきたが、気のせいだろう。今日も我が家はいつも通り平和です。はい。
この日は、剣の稽古をしたというより、父さんの変顔が目に焼き付いた日であった。
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