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72話 賄賂なしの友情

御母様とモカちゃんとの買い物を終え、私たちは喫茶店に来ていた。

以前、ソラの御兄さんであるアオさんと初対面した時に使った喫茶店だ。



私とモカちゃんと向き合う形で御母様が座り、お薦めだというミルクレープと紅茶をそれぞれ3人分注文すると御母様が口を開いた。

「モカちゃん、学校でのハルちゃんはどうかしら?ちゃんとお友達できた?」


「御母様、それは私に聞く事なんじゃ…」


「あら、ハルちゃんと主観とモカちゃんの客観ではまた違ってくるでしょう?ハルちゃんが大丈夫だと思っていても大丈夫じゃないかもしれないもの」


それは確かにそうかもしれない…。

ちらりとモカちゃんを見れば暫く考えたあと「そうですね……」と回答を口にする。


「ハルは生徒会の仕事も早いですし、(ファンクラブの)人にも好かれています。私にとっても大事な(オタク仲間という意味でも)友達ですから心配なさるような事は無いと思いますよ」


「そうなのね、よかったわ。今回みたいなことがあったから少し心配だったけど……モカちゃんみたいなお友達がいてくれるなら安心ね」

そう言って微笑む御母様に私は「そうなの…ははは」と少しだけ乾いた返事をする。

モカちゃんに視線を向ければ良い笑顔だったので、御母様に説明した言葉は色々含みがあるのは間違いない


そんなことを思いながら店員さんの持ってきてくれたミルクレープを口に運ぶ。

クリームが甘すぎず、さっぱりしていてとても美味しい。


「あら、美味しいわね…このミルクレープ。テイクアウトでお土産にしようかしら」

一口食べて御母様も顔を綻ばせる。もって帰ればきっと御父様もソラも喜ぶだろう。


「あ、ほんとだ…凄く美味しい…」

モカちゃんも目を瞬かせている。


「よかったらモカちゃんの御家族の分も用意させるわ。何人かしら?」

御母様がそう言うとモカちゃんは慌てて首を横に降る。

「いいえ、そんな悪いです!ただでさえ今日は親子水入らずにお邪魔させてもらってるのに!」


「気にしないで。これは賄賂だもの」

モカちゃんの言葉に御母様はくすりと笑う。


「賄賂…ですか?」


「そう。これからもハルちゃんとソラくんと仲良くしてねの賄賂」


「賄賂なんて無くても私はハルとずっと友達でいるつもりです、ハルのこと大事ですから」


モカちゃんの思いがけない言葉に私は胸が熱くなるのを感じて思わずモカちゃんに抱きついた。

「ずっとずっと仲良くしてね!モカちゃん大好き!」


「わっ…こらハル!紅茶溢れるから!」


モカちゃんはそう言いながらも紅茶のカップを置いて微笑んでくれる。


その後御母様が「これからもハルちゃんをよろしくね」と問答無用でモカちゃんにお土産を手渡していて、モカちゃんは少し戸惑いながらも受け取ってくれた。




喫茶店での楽しい時間はいい気分転換になった。美味しいものも食べられて気分も上向きだ。


自宅に戻って「犯人見つかった、てへっ」というおふざけ感まんさいの御父様の言葉を聞くまでは。


いい歳したダンディーな父から「てへっ」なんて聞きたくなかった私だが御母様が「可愛い!」とか喜んでいた……御母様の感性が謎過ぎる。

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