71話 伊集院家の力
あれから落ち着きを取り戻した私は自室にいた。
虎太郎くんは御父様と話をするため別室にいて、今は帰って来た御母様がついててくれる。
久し振りの母娘水入らずの時間だ、怖い思いもしたけれどこうして御母様とのんびり話すことが出来るのは嬉しい。
「大変だったわね…」
私から今日の出来事を聞いた御母様は優しく頭を撫でてくれる。
虎太郎くんとは違う安心感に気が緩む。
御母様は絶対に癒しオーラ的なものが出てると思う、つい甘えたくなっちゃうもの
「明日は学校も御休みだからゆっくりすると良いわ。そうだ、一緒にお買い物にいきましょう?お友達のモカちゃんも誘って。帰りに美味しいものでも食べれば気分も晴れるわ」
そう言って微笑む御母様につられて私も顔が綻ぶ。
私の事を心配してくれる人たちの為にも、私が気持ちで負けてちゃダメだよね…
盗撮の犯人がどんな人かわからないけど、負けないんだから!
気合いをいれると部屋のドアがノックされて、御父様と虎太郎くんが顔を覗かせた。
「ハル、虎太郎くんから話は聞いた。伊集院家の力を総動員して犯人を突き止めるから安心しなさい」
そう告げる御父様はにっこりと笑顔を浮かべているが目は笑ってない。
コタローくん、一体どんな風に御父様に伝えたんだろう?
「ふふっ…おいたをした子にはお仕置きが必要だものね」
御母様も御父様の言葉ににっこりと微笑んだ。
その笑顔が御父様と凄く似ている。
さすが夫婦、長年連れ添うと似るものなのだろうか。
「伊集院家の力を見せつける時だ」
「そうね、伊集院家を敵に回したこと後悔してもらいましょう」
うふふ、あははと笑うように怒る両親に私は先程違う意味で恐怖を感じた。
盗撮犯はもしかしたらとんでもない人達を敵に回してしまったのかもしれない。
△△
翌日、御母様が提案したように私はモカちゃんを誘い3人で買い物に行くことになった。急な誘いにも関わらずモカちゃんは来てくれた、本当に感謝だ。
御父様に見送られて家を出ようとすればなにやら作業服に身を包んだ人達がやって来た。
最初は何処か工事するための業者なのかなと思っていたが、よく見ると『鑑識』という腕章をつけている。
「鑑識って…あの鑑識?警察の?」
伊集院家の車に乗り込むとモカちゃんがポツリと呟いた。よかった、私にだけ見える幻覚ではなかったようだ。
「証拠になる写真から指紋とか出ないか調べるんですって。出たら狙いを絞ってハルちゃんたちの学校のロッカーから指紋をとって照合するっていってたわ」
モカちゃんの言葉に御母様はうふふと笑いながら説明してくれる。
どこの刑事ドラマだ!!ここまで大事になるの!?
「あ…あの鑑識の人達って本物なの?」
恐る恐る尋ねてみる。
もしかしたら専門知識があるだけの一般の人かもしれない。
「勿論本物よ。御父様の知り合いに警察の偉い人がいたみたいでお願いしたんですって、ちなみに学校の方にも既に許可は得ているわ。御父様、仕事が早くて素敵よね」
然り気無くのろけてくる御母様に顔がひきつるのを感じた。
モカちゃんも唖然としている。
お父様の人脈どうなってるの…!?警察まででてくるなんて…予想外すぎる!
私は心の中で犯人に合掌した。




