70話 不安と安堵
後半虎太郎とハルがいちゃいちゃしてます。
虎太郎くんはハルちゃん大好きです。
その後、やって来たクロくんや、ソラ、ミケくんが調査してくれて血のように赤黒い液体は血糊だということが分かった。
血糊だと分かっても、恐怖心を拭う事ができず指先の震えが止まらなかった。
「一刻の猶予もないな、いくらなんでもこれはやりすぎだ。盗撮から同一犯と予測できる、写真の裏にひまわりのイラストもプリントされていたからほぼ確実だろう」
クロくんが忌々しいと言うように写真を睨み付ける。
「とにかくハルは先に帰れ。虎太郎、ハルを家まで送ってくれ」
ソラが私を気遣い、そう言ってくれた為私は申し訳なく思いながらも一足早く帰宅することになった。
迎えの車に虎太郎くんと乗り込み、帰宅する。
自宅についてからも虎太郎くんはわざわざ私の部屋の前までついてきてくれた。
まだ両親は帰ってきてない。けれど家で働く使用人さんがいる、ここは安全だと思いながらも私は虎太郎くんから離れることが出来なかった。
誰かがすぐ傍に居てくれないと怖くして仕方ない。
もし、1人になった瞬間…危害を加えようとする人があられたら?
乗り込んできたら?
あの写真みたいに…危害を加えられるかもしれない…最悪、殺される…?
最悪な展開が頭を過り、血の気が引くのを感じる。
「ハル」
ふと体が温かいもので包まれて我に返る。名前を呼ばれて顔をあげると私はいつの間に自分の部屋でソファーに座り横に座った虎太郎くんから抱き締められていた。すがるように腕を回して抱き締め返せば、虎太郎くんの背中が温かくて私の手を温めてくれる。
「ハルの事は絶対に私が守る。誰かに傷付けさせたりしない、ずっと傍にいるから」
囁かれる言葉が私を恐怖から掬い上げようとしてくれている。
「…ハル、私と初めてあった時のこと覚えている?」
少しだけ体を離して頷くと優しく微笑む虎太郎くんの顔がすぐ近くにあった。
虎太郎くんはこつん、と額を合わせると私の頬に片手で触れ見詰めてくる。
ドキドキと胸が高鳴って緊張するのにそれが心地好いと感じてしまう。
「覚えてる、よ…ハンカチ。くれたでしょう?」
そう言うとくすりと笑う気配がした。
「その前にハルは迷子の私を助けてくれた、今度は私がハルを助ける」
だから信じて欲しい、と囁かれ躊躇うことなく私は頷く。
疑ったことなんて1度も無いよ。
そう言おうとしたけれど柔らかいものに唇を塞がれて言葉にすることは出来ない。
キスされたんだと気が付いたのは唇が離れた時。
羞恥心に顔を背けようとすれば今度は頬にキスされてぎゅっと抱き締められる。
「あ、あのっ…コタローくん…こういう状況でキスっていうのは…」
動揺してそう呟けば虎太郎くんはにっこりと悪戯をする少年の様に笑った。
「何か問題が?」
「いいえ…ありません」
何故か良い笑顔でにっこりと笑う虎太郎くんに反論してはいけない気がして、そう言うと抱き締められたまま頭の上の猫耳にそっとキスされた。
「っ……!」
直接耳に響く吐息と唇の感触に頬に熱が集まる。
羞恥心に身動きが取れずにいれば「今日はここまでにしておこう」と意味深な言葉を囁かれた。
虎太郎くんの色気のようなものにあてられて私の心臓はバクバクと五月蝿いし、これ以上されたら死ぬのではと思うくらいに頭が沸騰しそうだ。
「可愛い…」
「もう勘弁してください!」
真っ赤になっているであろう顔を両手で覆い隠せばくすくすと楽しげに笑われた。
うぅっ……これは確信犯だ!
昔は紳士ワンコだったのにいつの間に私の純情をもて遊ぶいじめっ子になったんだこの子は!




