59話 ホラーは全力拒否!
たどり着いた場所は真っ暗闇だった。
あ、違う。目が開いてないだけだ、これ。
それにしてもあの自称天使……また間違えるとか!大丈夫なの!?仕事ちゃんと出来てる!?
神様困らせたりしてない!?
まったく……間違いでもし地獄に落とされてたりしたら這い上がってでも抗議してやる!
そう意気込みながらゆっくり瞼を開ける。
視界に映ったのは白い天井と仕切るように設置されているカーテン。
うわぁ、病院みたい。
まさかホラーゲームの世界に落とされたとかじゃないよね!?
私、ホラーとか無理だから!!
視線を巡らせると腕が包帯でぐるぐる巻きにされていた。
どうやら骨折しているらしい、部屋は一人部屋なのか誰も居ない。時々ドアの前をパタパタと歩いていく音がする。耳を済ませて見ると、看護師さんらしい人達の話し声もする。
……ホラーじゃないよね?違うよね!?
時間をかけてゆっくり起き上がると壁伝いに立ち上がり窓を開けてみた。
カラリ、と音を立てて窓が開くとむわりとした熱風が入ってきたのですぐさま窓を閉めた。
一応窓は開くからホラーゲームによくある閉じ込められて出られないとかではなさそう!よかった!
もそもそと時間をかけてまたベッドの上にちょこんと座る。
ちょっと動いただけなのに凄く怠い。
ここがホラーゲームの世界で今ゾンビに襲われたら私は即死だろうなと考えて止めた。
変なフラグは立てない方がいい。
改めてベッドの周辺を観察すると花瓶には綺麗な花が飾ってあって、サイドボードには……こんもりともふもふな縫いぐるみ達が置かれていた。
抱き締めがいのありそうなサイズから、手のひらの乗るほどの小さなものまで。
誰だこれ用意したの……。
じーっと縫いぐるみを見詰めていると複数の足音が近付いてきてがらりと病室のドアが開いた。
入ってきた人物と目が合う。
……あっれれ~?おっかしいぞぉ?
私は天国……か分からないけど死後の世界に行ったはずなのに何でかな~?
何度目を瞬かせても目を擦っても目の前に居るのは私の家族。
御父様と御母様と目を真ん丸に見開いているソラたんではないか。
…………はっ!もしやこれは幻覚!?
「ハル!目が覚めたのね、痛いところは?気持ち悪いところはない?」
「命に別状がなくて良かった、と言いたいところだがこの怪我では暫く不便だろう。何かあったら直ぐに言うんだぞ?いいな?」
その言葉と共に両親からぎゅっと抱き締められる。
違う、幻覚じゃない。
抱き締められて響いたのか腕が地味に痛いし、この子離れできない感じは確かに私の両親だ。
「お、御父様……御母様……あまり強くされると痛いです」
そういうと2人は慌てて離れる。
「ごめんなさいね、つい」
「ハルの顔を見たら安心してしまって……加減できなかったんだ」
うん、事故にあった娘を心配してくれたのは痛い位に伝わったよ。
本当に痛かったよ。
「貴方、お医者様に具合を診てもらいましょう?今ので悪化していたら大変だもの」
「あぁそうだね。直ぐに呼んでこよう。ソラ、ハルの事を頼むよ?」
両親はそう言い残すとソラを置いて出ていってしまった。
「………その顔色見るに元気そうだな」
ソラもきっと心配してくれたんだろう、いつもと変わらないけれど声が少し柔らかい。
「心配かけてごめんなさい」
そう謝るとそっと頭を撫でられた。頭にも包帯が巻いてあるらしく包帯越しに優しく撫でられる。
「……吃驚した、急に虎太郎から連絡が来てハルが車にぶつかったって聞いて。心臓が止まるかと思った。…もう、嫌だ。大事な人を見送るのは……もう」
ソラが私の肩に額を乗せてそう呟く。泣きそうな声だった。
包帯が巻かれていない手を背中に回してぎゅっと抱き締める。
「うん、ごめん。ごめんなさい」
ソラの腕がそっと私を包み込む。
怪我に響かないように気を使ってくれてるのだろう。
私は、またソラに辛い思いをさせようとしていたのか。しかも記憶を消して死後の世界に逃げようとしていのだから、本当に悪い姉だと思う。
……あれ?私が生きてるってことは、アヤメさんは?
自称天使に私が願ったのはアヤメさんを救うことだった。
けれど実際に生き返ったのは私だ。
と言うことはアヤメさんは……。
「ねぇ……ソラ、私が事故に会ったとき…女の子がもう一人運ばれたと思うんだけど…その子がどうなったかわかる?」
「女の子……?あぁ、手術室に入っていった人か。あの人なら……」
恐る恐るソラに尋ねるとがらりと再びドアが開いて虎太郎くんがやって来た。
私の顔を見て安堵したように微笑むと私を抱き締めたままのソラをぺいっと引き剥がす。
「ソラ、そこ変わろうか」
そりゃもうにっこりとしたとても良い笑顔で。
ホラーが苦手な人に面白半分でホラードッキリ仕掛けたり無理やり動画見せたりするのはやめましょう。
あれ心臓痛くなるから。いやマジで(´・ω・`)




