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45話 義兄弟(予定)の絆

ソラ視点になります

ハルの代役で女装で参加させられたパーティーを何とか乗り越え、自宅に帰ると父から書斎に呼ばれた。


伊集院家の父は大事な話があると書斎に呼び出す癖があるらしい。

行ってみるとハルの姿は無く俺だけだった。いつもはハルも一緒なのに、と思っていると父から衝撃的な話を聞かされた。



俺の実兄が生きていると。

しかも最近まで記憶を無くしていて、記憶が戻り俺と一緒に暮らすことを望んでいると。



嬉しいと思う反面、どうして今なんだと叫びだしたくなった。


兄と暮らすにしろこのまま伊集院家に残るにしろ俺はどちらかの『家族』を選ばなければいけない。それはつまりどちらか一方を捨てることになる。


伊集院家の両親は俺の意思を尊重してくれると言ってくれた。


そのまま少しふらつきながら自分の部屋に戻る。この事はハルにも話されるらしい。

俺は自分の部屋に入るなりベッドに身を投げ出した。



俺は、どうしたらいい?

どうすれば正解だ?

どうしたいと思ってる?



目の上に腕を押し当ててぐるぐると考える。

考えて、考えて頭が痛くなってきたころ不意に隣の部屋から話し声が聞こえていた。詳しく聞こうと壁に耳を当てると母とハルの声。

俺の事を話しているらしい。


ハルは……何て言う?

…俺がいなくなったら、悲しんでくれるのだろうか。


ふと、そんな意地の悪いことを考えてしまう。

暫くして話を終えたのか母が部屋を出ていく音がした。足音が遠ざかるのを確認してからそっと自室を出て、ハルの部屋の行くと少しだけドアが開いていた。そっと中を覗き見ると――ハルは床に座り込んで泣いていた。

声を出さないようにボロボロと。


胸を締め付けられるような感覚を受けて、無理矢理そこから目を反らし自分の部屋へと戻る。


………あんなに、泣く姿、始めてみた…

そうか、ハルは…泣いてくれるのか

寂しいと思ってくれるのか…。


心が少しだけ落ち着きを取り戻せた気がする。

大事な人が泣くのをみて落ち着くとか、趣味が悪いだろと自嘲するくらいには冷静になれたようだ。

心の中に籠っていた空気を吐き出すように深呼吸する。

スマホを取り出すと俺の『もう1人の兄』に連絡をいれる事にした。

着信音が鳴り、3コール程で相手は電話に出る。


『もしもし?どうした?』

心配そうな声が耳に届く。滅多に電話なんてしないから何かあったのかと思っているのだろう。間違ってない、何かあったから聞いてもらいたいんだ。



「あのさ…俺は虎太郎の事、兄みたいなもんだと思ってる」

『なんだ突然』


怪訝な顔をしているのが想像できる。

虎太郎に先程母から聞かされた話をすると、相槌をうちながら最後まで話を聞いてくれた。


『ソラは実兄と今の家族、どっちが大事だ?』

「どっちもに決まってるだろ」

『ならどっちも選べば良い』

「お前なぁ…どっちも選べたら苦労しねぇっつの」


この男は何を言ってるんだと眉間にシワが寄る。


『どっちも手にする為にソラはどんな苦労をしたんだ?』


「…………?」

『どっちも手にしたいと、思うんだろ?』

「そりゃ…まぁ」


実兄と今の家族、どちらとも一緒に過ごせるのならどんなにいいか。


『なら手にする為に苦労しろ』

「いやいやいやいや、虎太郎さん!?どういうことだ、分かりやすく言ってくれ!」

『受験勉強も同じだ。良い学校に入りたいからその為に苦労して勉強する』

「お前、受験勉強と一緒にすんなよ!」


思わず電話越しに声を荒げると、向こうからはくくっと笑う気配がした。


『怒る元気があるなら大丈夫だ』


どうやら励ましの意味もあったらしい…しかし、この男は時々凄く解りづらい……。


『けど、本気で両方手にしたいと思うなら苦労無しには無理だと思う。ソラにその苦労が出来るかが問題じゃないか?』

「……苦労が出来るか…か。もし俺がその為に苦労したとして上手く行くと思うか?」


励ましてほしかったのかもしれない、無意識にそんな言葉を呟いていた。


口に出してから自分の情けなさに呆れる、結局俺は誰かに背中を押してほしいだけなのだ。

そうすれば失敗した時に、相手のせいにできるから。

それを見透かしてか、虎太郎は電話越しに笑う。


『知るか、お前次第だ』


だよな!

そうくるって分かってたから!

甘えだってのも分かってるし別にちょっと残念だったりしないからな!


『だけど、もし、ソラがその為に頑張るっていうなら…ハルも私も全力で手を貸す』

その言葉にスマホを握る手に力がこもる。


『だから全力で頼ってこい、ソラ1人くらい余裕で支えられる』


その言葉に胸が熱くなる。


「……………わかった、さんきゅ」

『まずはその実兄に会ってソラの気持ちを伝えてみたらどうだ?』

「…そう、だな…そうしてみる。悪かったな、急に連絡して」

『気にするな、未来の義弟の為だ』

「ハイハイ。そりゃどーも」

『またなにかあったら電話してこい』

「あぁ、わかった…………あ、ありがとな」

照れ臭さを堪えてそう告げると虎太郎は嬉しそうにどういたしましてと答えて通話が切れた。



そのままスマホをベッドの上に放り投げて、息を吐き出す。

いつの間にか部屋の中は暗くなっていた。つい話し込んでしまったようだ。

夕食の時間もとっくに過ぎている。食べ損なってしまった…。



……まぁ、キッチンに行けば何かあるだろ。


そう思って体を起こすと俺はキッチンに向かった。



次回、とうとうツンデレ氏のデレがマックスになります。

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