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10話 吟味してこそ至高の1品に出会える

手に取ったゲームを1本ずつ吟味していく。

キャラ、イラスト、パッケージ裏のあらすじ1つ1つに目を通していく。

声優さん……は、この世界の声優は全く詳しくないので賭けになってしまう…しかし逆に好みの声優さんを見つけることもできるだろう。ある意味博打だ。


暫く吟味した後、何本かあった乙女ゲームの中から2本に絞った辺りでソラがとててと私の方に寄ってきた。

「ハル、まだ決まんないの?」

「もう少し………お父様達は?」

もうお父様の昔話から解放されたのだろうかと首を傾げるとソラは肩を竦めた。

「なんか、お母様と初めて見た映画のDVD見付けたとかでそれで2人で思出話始めたから逃げてきた」

「あちゃー……」


お父様の昔話も長いが、お母様とお父様の馴れ初めから結婚までの話しも長い。

うっかり「お父様とお母様って何処で出会ったの?」と聞いたばっかりに3時間も語り聞かされたりもした。もう2度と聞かない。

話を始めれば完全に2人の世界になるのだ、私がそっと居なくなっても分からないくらいに。

まったく、万年新婚夫婦め!私も少しだけ憧れたりするのは内緒です。



「ソラは決まったの?」

私がおねだりしたからというのもあるが、喧嘩しないように(するわけないけど)ソラにも同じ様にゲームを買ってくれる事になっていた。

「んー、俺は新しいボードゲームのセット買ってもらうことにした」

「ゲーム機じゃなくていいの?」

私が首を傾げるとソラはこくりと頷く。

「その方が、一緒に遊べるからな」


そうか!ソラはコタローくんと遊びたくて2人で遊べるものにしたんだ…!

ゲームだとゲーム機2つかコントローラー2つないと遊べないもんね…私みたいに自分のことだけじゃなくて、きちんとコタローくんの事も考えてるとか大人だなぁ…それに比べて私は精神年齢が大人でも、まだまだ子供だなぁ…申し訳ない


「そっかぁ…」

私はしょんぼりと肩を落とす。

「……ハルは、好きなの買って貰えばいいんじゃないか?」

「…え?」

「凄くやりたかったんだろ?俺もハルがどんなの好きなのか、知りたいし…」

「…ソラって、優しいのね」

「別に」

私に気を使って好きなものを選ぶように言ってきたソラに率直な感想を伝えると、頬を赤らめてそっぽを向いてしまった。


本当に可愛いんだからもう!!可愛すぎるから今すぐその猫耳をもふってやろうか!……おっといけない、そろそろ決めないと。


ソラが待っていてくれる横で、再びゲームのパッケージに視線を落とす。

私が手に持っている乙女ゲーム。そのうちの1つは異世界召喚ものだ。ざっくり説明すればヒロインが特殊能力のある人達に召喚され国を救う物語。攻略キャラクターは13人……多くね?こんなもん?ちなみに友情エンドを期待できそうなサポートの女の子キャラが出てくるようです。イラスト可愛い。

もう一方は、普通の学園青春乙女ゲーム。おっとこっちは攻略キャラクター10人か……。

は?人外キャラがいるの?普通の学園物に人外…猫犬耳ついてる時点で既にお前ら人外だろうよ。

くっ……ストーリー的には学園ものやりたい。だってこの世界も学園もの乙女ゲームだし!何かの参考になるかもしれないし!

でも攻略キャラクターの多さとか、サポートキャラの女の子とか…キャラ的に引かれるのは異世界召喚の方なんだよねぇ……つか本当に多いな13人て。10人も多いけどな!


…………ぐぬぬぅ………………よし!決めた、ここは13人もキャラがいる異世界召喚ものにしよう!攻略キャラクターが多い=長く楽しめると思うから!


「ようやく決まった?」

私が葛藤しているのをじっと眺めていたソラは呆れたように首を傾げる。

「えぇ、これにするわ!」

私が両手で掲げたゲームをみて、ソラが一瞬固まる。

「なんで、これ、男がいっぱい居るの?」

「あら、乙女ゲームだからよ」

「乙女ゲーム…?」

「ゲームの中でキャラクターと擬似恋愛…えーっと、恋愛ごっこをするゲームなの」

「はぁ!?ハルはこんなのが好みなの!?」

私が乙女ゲームについてざっくり説明すると、ソラはぎょっと目を見開きパッケージを眺める。こんなのっていうな、このキャラクター1人1人が美術品なんだぞ、乙女ゲーマーにとっての!

「恋愛ごっこよ、あくまでもゲーム。楽しむ為のものなの。いつか男の人とお付き合いする時がきた時の為の勉強道具にもなるんだから!」

私が実際に今世で異性と付き合うかは別だけどな!

「お付き合い……ハルが?……知らない男と…」

私が胸をはって説明すればソラは少しうつむいてなにやらぶつぶつと呟いた後、ふと顔をあげるとにっこりと微笑んだ。

「俺も気になるなぁ、そのゲーム。ハルが終わった後で良いから貸してくれない?」


おぉっふ!?こんなに満面な笑顔初めてじゃない!?やだ本当に可愛いわぁ…あれかな、お姉ちゃんのやってるものに興味がある年頃なのかな?それが乙女ゲームってのがちょっとあれだけど。男の子が乙女ゲームやるのに偏見なんか無いよ、私は!寧ろ同じゲームについて語りたいからウェルカムだぜい!


「もちろん、良いわよ!」

にっこりと微笑み返すとソラは珍しくご機嫌マックスな時にしか見せないような、天使の笑みを見せた。本当に可愛い。うちの子、天使。あの自称天使よりよっぽど天使だわ。


それから私達はそれぞれの欲しいものを持って、両親のところへ戻る。両親たちの語らいは結婚式前夜まで進んでいたが何回目だよと思い、途中でぶったぎる。それでも機嫌を悪くしない辺り、本当にうちの両親は子供に甘い。

お会計を済ませたゲーム機を店員さんから受け取りぎゅっと胸に抱く。ソラも同じようにしてボードゲームセットを抱えていた。そんなに虎太郎くんと遊びたかったのか。愛いやつめ。………コタローくんとだけじゃなく、たまには私とも遊んで欲しい気もするけれど。


後でコタローくんに、どれだけソラがコタローくんと遊びたがっていたか教えてあげよう!きっと喜ぶ、はず!


そう思いながら片手はゲームの入った袋を持ち、もう片方の手はソラと繋ぐ。これは迷子になった日以来、二人で外に出た時は繋ぐようにしてついた癖みたいなものだ。またソラに居なくなられたりしたら困るからね。両親はそれを微笑ましく見てくるので、きっと仲のいい姉弟だと思っているのだろう。

というか単純に私達が手を繋げばお父様はお母様と手を繋げるので、機嫌が良くなる。本当に仲よしすぎるくらい相思相愛の夫婦だ。


何はともあれ、私は無事に乙女ゲームを買ってもらうことができた。このお金を稼いでくれたお父様と、お父様を説得してくれたお母様に感謝だ。いつか絶対親孝行することを誓います。


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