商都タラリア
再開したけどみんなまた読んでくれるかな…
執筆最後まで続けるモチベください
評価とかコメントとか待ってまーす
タラリアの関所は、思ったより立派だった。
石造りの門に、槍を持った守衛が二人。行き交う商人や旅人が列をなしている。活気のある声と、荷馬車の音と、どこかから漂ってくる食べ物の匂い。
久しぶりに嗅ぐ、人間の街の匂いだった。
「……行けるか?」
リーゼロッテが小声で言った。兜を被った白金の騎士が、列の端でぼそりと呟いている。
「行ける」
トオルは《幽幻》を発動したまま、人型の姿で頷いた。
白い布を体に巻いただけの、簡素な格好だった。それでも人間に見えるというだけで、これほど堂々と列に並べるとは思わなかった。
列が進む。
守衛の前に立つ。
「旅の者か。目的は?」
「商都見物です。連れと二人で」
守衛はトオルとリーゼロッテを交互に見た。リーゼロッテの全身鎧に少し目を留めたが、特に何も言わなかった。
「通れ」
それだけだった。
門をくぐる。
石畳が広がった。屋台が並んでいる。人々が行き交っている。どこもかしこも、生きた人間だらけだ。
「……通れた」
トオルは思わず呟いた。
「通れたね」
リーゼロッテも呟いた。
二人して、しばらくその場に立ち尽くした。
「……普通に通れた」
「普通に通れた」
「すごくないか?」
「すごいね」
じわじわとテンションが上がってくる。幽霊と首なし騎士が、普通に関所を通り抜けた。それだけのことなのに、なんだかとんでもないことを成し遂げた気分だった。
「なぁ、リズ──」
「おい、ちょっと待て」
後ろから声がした。
守衛の声だった。
二人の体が、同時に固まった。
(やばい)
トオルは素早く逃げ道を確認した。リーゼロッテも気配で察したのか、じりっと重心を移動させた。
走るか。
走るしかないか。
「お前、なんで裸足なんだ。怪我するぞ」
……。
トオルは、ゆっくりと自分の足元を見た。
うすら青い、裸足の足が、石畳の上にあった。
リーゼロッテも見た。
沈黙。
「…………あ」
「…………」
足があることが新鮮すぎて、二人とも完全に失念していた。靴、というものの存在を、これっぽっちも考えていなかった。
「ちょっと待ってろ。関所に落とし物の靴があったから取ってきてやる」
守衛はそう言って、踵を返した。
その背中が見えなくなった瞬間。
「やばいやばいやばい!」
「落ち着いて」
「落ち着いてる場合か!靴履けないだろ俺!すり抜けるんだぞ!」
「わかってる、考える」
「考えてる時間ないって!もう取りに行ってるんだぞ!」
トオルがワタワタと霊体の手を振り回す。リーゼロッテが腕を組んで唸る。
「……靴を履いた姿に変身すれば?」
一瞬、静寂。
「そうだ!!」
トオルは急いで《幽幻》に意識を集中した。足元に、靴。革靴。紐付きの、ちゃんとした靴。それを履いた自分の姿を思い浮かべる。
霊体の足元が、ゆっくりと変化した。
「……できた」
「よかった」
「よかった、じゃないよ!心臓止まるかと思った!」
「止まっても問題ないでしょ、幽霊なんだから」
「そういう問題じゃない!」
言い合っていると、守衛が戻ってきた。手に、古びた革靴を持っている。
「ほら、サイズが合うかわからんが──」
守衛はトオルの足元を見て、目を細めた。
「……なんだ、靴持ってたのか」
「あ、はい。さっき履いてなかったのは、ちょっとその、脱いでたので」
「そうか」
守衛は靴を抱えたまま、改めてトオルの全身をじろりと見た。
白い布をワンピースのように巻いただけの格好。確かに、みすぼらしいと言えばみすぼらしい。
「あまり粗末な身なりをしていると、身寄りのない娘だと思われて人攫いに遭うかもしれん。気をつけなさい。騎士様と一緒とはいえ、この街にも物騒な輩はいる」
真剣な顔で言った。悪い人ではなさそうだった。
「ありがと、気をつけるわ、看守さん♪」
トオルは、にっこりと笑ってみせた。
意識して、少し声のトーンを上げた。色仕掛けだ。使えるものは使う。
「う、うむ」
守衛は、ぽっと頬を染めた。
(男って単純だな)
「困ったことがあればいつでも言いなさい。まあ、騎士様がいれば手を出す輩もそうはいないとは思うが」
「はーい♪」
二人は並んで歩き出した。
石畳を進み、屋台の並ぶ通りに入り、守衛の姿が完全に見えなくなったところで。
「ぶふぁっ」
リーゼロッテが噴き出した。
「随分と男に媚びるのが上手なんだね」
「うるせえやい!」
トオルは顔を赤くしながら言った。
「生きてた頃に培ったスキルか何か?」
「培ってない!あとそれ色々ツッコミどころあるから!」
「はいはい」
リーゼロッテはまだ笑っていた。肩がガシャガシャと揺れている。
トオルは頬を膨らませながら、石畳を踏んだ。
幻影の靴の感触は、当然ながら何もなかった。
でも、久しぶりの街の空気は、不思議と悪くなかった。
──つづく──
再開したけどみんなまた読んでくれるかな…
執筆最後まで続けるモチベください
評価とかコメントとか待ってまーす




