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異世界転「生」できませんでした。-俺YOEEEけどたくましく生きて行きます。-  作者: 六六-B
旅人の辻編

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商都タラリア

再開したけどみんなまた読んでくれるかな…


執筆最後まで続けるモチベください


評価とかコメントとか待ってまーす


 タラリアの関所は、思ったより立派だった。

 石造りの門に、槍を持った守衛が二人。行き交う商人や旅人が列をなしている。活気のある声と、荷馬車の音と、どこかから漂ってくる食べ物の匂い。

 久しぶりに嗅ぐ、人間の街の匂いだった。

「……行けるか?」

 リーゼロッテが小声で言った。兜を被った白金の騎士が、列の端でぼそりと呟いている。

「行ける」

 トオルは《幽幻》を発動したまま、人型の姿で頷いた。

 白い布を体に巻いただけの、簡素な格好だった。それでも人間に見えるというだけで、これほど堂々と列に並べるとは思わなかった。

 列が進む。

 守衛の前に立つ。

「旅の者か。目的は?」

「商都見物です。連れと二人で」

 守衛はトオルとリーゼロッテを交互に見た。リーゼロッテの全身鎧に少し目を留めたが、特に何も言わなかった。

「通れ」

 それだけだった。

 門をくぐる。

 石畳が広がった。屋台が並んでいる。人々が行き交っている。どこもかしこも、生きた人間だらけだ。

「……通れた」

 トオルは思わず呟いた。

「通れたね」

 リーゼロッテも呟いた。

 二人して、しばらくその場に立ち尽くした。

「……普通に通れた」

「普通に通れた」

「すごくないか?」

「すごいね」

 じわじわとテンションが上がってくる。幽霊と首なし騎士が、普通に関所を通り抜けた。それだけのことなのに、なんだかとんでもないことを成し遂げた気分だった。

「なぁ、リズ──」

「おい、ちょっと待て」

 後ろから声がした。

 守衛の声だった。

 二人の体が、同時に固まった。

(やばい)

 トオルは素早く逃げ道を確認した。リーゼロッテも気配で察したのか、じりっと重心を移動させた。

 走るか。

 走るしかないか。

「お前、なんで裸足なんだ。怪我するぞ」

 ……。

 トオルは、ゆっくりと自分の足元を見た。

 うすら青い、裸足の足が、石畳の上にあった。

 リーゼロッテも見た。

 沈黙。

「…………あ」

「…………」

 足があることが新鮮すぎて、二人とも完全に失念していた。靴、というものの存在を、これっぽっちも考えていなかった。

「ちょっと待ってろ。関所に落とし物の靴があったから取ってきてやる」

 守衛はそう言って、踵を返した。

 その背中が見えなくなった瞬間。

「やばいやばいやばい!」

「落ち着いて」

「落ち着いてる場合か!靴履けないだろ俺!すり抜けるんだぞ!」

「わかってる、考える」

「考えてる時間ないって!もう取りに行ってるんだぞ!」

 トオルがワタワタと霊体の手を振り回す。リーゼロッテが腕を組んで唸る。

「……靴を履いた姿に変身すれば?」

 一瞬、静寂。

「そうだ!!」

 トオルは急いで《幽幻》に意識を集中した。足元に、靴。革靴。紐付きの、ちゃんとした靴。それを履いた自分の姿を思い浮かべる。

 霊体の足元が、ゆっくりと変化した。

「……できた」

「よかった」

「よかった、じゃないよ!心臓止まるかと思った!」

「止まっても問題ないでしょ、幽霊なんだから」

「そういう問題じゃない!」

 言い合っていると、守衛が戻ってきた。手に、古びた革靴を持っている。

「ほら、サイズが合うかわからんが──」

 守衛はトオルの足元を見て、目を細めた。

「……なんだ、靴持ってたのか」

「あ、はい。さっき履いてなかったのは、ちょっとその、脱いでたので」

「そうか」

 守衛は靴を抱えたまま、改めてトオルの全身をじろりと見た。

 白い布をワンピースのように巻いただけの格好。確かに、みすぼらしいと言えばみすぼらしい。

「あまり粗末な身なりをしていると、身寄りのない娘だと思われて人攫いに遭うかもしれん。気をつけなさい。騎士様と一緒とはいえ、この街にも物騒な輩はいる」

 真剣な顔で言った。悪い人ではなさそうだった。

「ありがと、気をつけるわ、看守さん♪」

 トオルは、にっこりと笑ってみせた。

 意識して、少し声のトーンを上げた。色仕掛けだ。使えるものは使う。

「う、うむ」

 守衛は、ぽっと頬を染めた。

(男って単純だな)

「困ったことがあればいつでも言いなさい。まあ、騎士様がいれば手を出す輩もそうはいないとは思うが」

「はーい♪」

 二人は並んで歩き出した。

 石畳を進み、屋台の並ぶ通りに入り、守衛の姿が完全に見えなくなったところで。

「ぶふぁっ」

 リーゼロッテが噴き出した。

「随分と男に媚びるのが上手なんだね」

「うるせえやい!」

 トオルは顔を赤くしながら言った。

「生きてた頃に培ったスキルか何か?」

「培ってない!あとそれ色々ツッコミどころあるから!」

「はいはい」

 リーゼロッテはまだ笑っていた。肩がガシャガシャと揺れている。

 トオルは頬を膨らませながら、石畳を踏んだ。

 幻影の靴の感触は、当然ながら何もなかった。

 でも、久しぶりの街の空気は、不思議と悪くなかった。


 ──つづく──

再開したけどみんなまた読んでくれるかな…


執筆最後まで続けるモチベください


評価とかコメントとか待ってまーす

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