デュラハン
再開したけどみんなまた読んでくれるかな…
執筆最後まで続けるモチベください
評価とかコメントとか待ってまーす
「なぁ、なぁおいリズ!」
返事がない。
隣を歩くリーゼロッテは、前を向いたまま黙っている。いや、正確には黙っているというより、どこか遠くを見ているような、そういう気配だった。鎧の足音だけが、砂利道にカシャカシャと響いている。
「おーい」
もう一度呼んでみる。
やっぱり返事がない。
「……リズ」
三度目でようやく、リーゼロッテの肩がぴくりと動いた。
「……ん? あ、ごめんごめん。ちょっとぼーっとしてた」
「ぼーっとしてた、じゃないだろ。何か考え事か?」
トオルは少し速足になって、リーゼロッテの前に回り込んだ。
「俺が人型に変身できるようになってから、ずっと上の空だぜ?」
リーゼロッテの歩みが、わずかに止まった。
首のない鎧が、トオルを見下ろす。見下ろす、といっても顔がないのだが、なぜかいつもそういう気配が伝わってくる。
「……そう? そんなに上の空だった?」
「そんなにも何も、さっき三回呼んだぞ」
「……三回」
「三回」
少しの間があった。
「それは……悪かったね」
リーゼロッテは素直に言って、また歩き出した。
謝るだけで、理由は言わなかった。
トオルは隣に並びながら、少し考えて、口を開いた。
「……もしかして、俺だけ人型になれるようになったのが、嫌だったか?」
リーゼロッテの足が、ぴたりと止まった。
今度こそ、完全に止まった。
「……はあ?」
「いや、リズはその、首がないだろ。俺だけ急に人間みたいな見た目になれて、なんか……気まずいというか、悪いなって思ってて」
言葉にしてみると、我ながら間抜けな心配な気がしてきた。しかしもう言ってしまった。
しばらく沈黙があった。
それから。
「……ふ」
リーゼロッテが、笑った。
くっ、と堪えるような笑い声が、鎧の隙間から漏れた。堪えきれなくなって、肩が揺れた。ガシャガシャと鎧が鳴った。
「ふははっ……なんだそれ」
「笑うなよ」
「だって……アンタ、そんなこと気にしてたの?」
「気にするだろ、普通」
「普通じゃないよ!」
リーゼロッテは笑いながら、トオルの頭をぽんと叩いた。手がすり抜けたが、気にした様子はなかった。
「私が気にするとでも思ったの? アンタが人型になれたのは、アンタが頑張ったからでしょ。それの何が嫌なのさ」
「でも……」
「でも、じゃない」
笑い声が収まって、リーゼロッテの声が少し落ち着いた。
「これが今の私の姿だ。アンタに気を遣われる筋合いはないよ」
あっさりと、しかしはっきりと言った。
「……そっか」
「そっかじゃない。まったく、変なところで気が回るんだから」
呆れたような声だったが、怒っている様子はなかった。
「それにね」
リーゼロッテは歩きながら、続けた。
「私は別に、自分の頭を取り戻したいと思ったことはないよ。私はデュラハン、そういうもんだよ」
「そういうもんか……」
「そういうもん」
あっさりと言い切った。迷いも、未練も、一切ない声だった。
それからリーゼロッテは少しだけ歩調を緩めて、ぼそりと呟いた。
「……それに、合わせる顔もないしね」
「え? なんか言った?」
「なんでもない」
リーゼロッテはそのまま歩き続けた。
トオルは首を傾けたが、それ以上は追わなかった。
「じゃあ、何を考えてたんだよ。上の空になるくらい」
問うと、リーゼロッテは少し間を置いた。
「……なんでもない。ちょっとした、昔のことだよ」
それだけだった。
それ以上は言わなかった。
トオルも、それ以上は聞かなかった。
二人はしばらく黙って歩いた。砂利道が続いている。空は高く、雲が少ない。
「……次、旅人の辻だったな」
先に口を開いたのはトオルだった。
「そう。エルメシアの霊廟だね」
「どんな英雄だったんだ?」
「うーん……」
リーゼロッテは少し考えるように首を傾けた、ような気配がした。
「一言で言うと、つかみどころのない人だったね。どこにでも現れて、どこかへ消えていく。善良なのか、悪い人なのかもよくわからない。でも──」
「でも?」
「誰よりも、道に迷った人を放っておけない人だった。旅人の辻っていう名前も、そういうところから来てるんだと思うよ」
トオルは少しそのイメージを頭の中で転がした。
「……なんか、厄介そうだな」
「厄介だよ」
リーゼロッテはあっさりと言った。
「でも、嫌いじゃなかった」
その言葉は、どこか懐かしむような響きがあった。
トオルは横目でリーゼロッテを見た。
鎧の横顔は、変わらず前を向いていた。
「……行くか」
「ああ」
足音が、また砂利道に重なっていく。
──つづく──
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