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異世界転「生」できませんでした。-俺YOEEEけどたくましく生きて行きます。-  作者: 六六-B
狂乱の酒宴編

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113/113

乱痴気

今回は長めなので

今日の更新は1話だけ!!笑


人波の中を、三人で進んでいた。

いや、正確には二人と一体だ。リーゼロッテは地面で寝ている。

「リズを引きずりながら進むのか……」

「私が運ぼう」

ザカリアスがリーゼロッテを肩に担いだ。

「……頼む」

俺はふわふわしながら、切り株のステージを目指した。

人波をかき分ける。踊り狂う者たちがぶつかってくる。屋台の煙が漂う。甘い匂いが、また鼻をくすぐる。

(……まずい、また来た)

頭が、もわっとする。足元がふわふわする。なんか、まあ、いいか——

(よくない)

「しっかりしろ、トオル嬢。目的を見失うな」

ザカリアスが隣で言った。リーゼロッテを肩に担いだまま、背筋がしゃんと伸びている。

「……お前、なんで平気なんだ」

「私はゾンビだ。内臓が機能していない。酒が回りようがない」

「……ずるい」

「ずるくはない。構造の問題だ」

───────────────────

切り株のステージが、だいぶ近づいてきた頃だった。

人波の中から、空気が変わった。

甘い匂いに混じって、瘴気の気配がする。

(……これは)

俺は《鑑定》を走らせた。

───────────────────

【魔族:グラード】

Lv:28

HP:???

MP:???

───────────────────

───────────────────

【魔族:ヴァルク】

Lv:27

HP:???

MP:???

───────────────────

───────────────────

【魔族:シェイド】

Lv:26

HP:???

MP:???

───────────────────

───────────────────

【魔族:ネロ】

Lv:25

HP:???

MP:???

───────────────────

四体。人混みの中に溶け込みながら、じわじわとこちらに近づいてくる。

「ザカリアス、来るぞ」

「見えている」

ザカリアスがリーゼロッテを地面にそっと下ろした。剣を抜く。ぎしぎしとした動きが消えて、生前の剣士の気配が滲み出てくる。

四体が、人波を割って姿を現した。黒いローブを纏い、それぞれが剣と杖を手にしている。

「霊廟巡りの幽霊……ここで始末する」

「やってみろ」

俺はふわふわしながら答えた。

我ながら呑気だった。

先手を取った。

───────────────────

【スキル発動:《ダークボール(Lv7)》】

【MP:115 → 112】

───────────────────

グラードに向けて放つ。

——当たらなかった。

グラードが横に跳んで、弾をかわした。

(……速い)

「トオル嬢、右!」

ヴァルクが横から斬りかかってくる。

《霊体化》。

刃が、俺をすり抜けた。

(よし——《実体化》、《ダークボール》!)

───────────────────

【スキル発動:《ダークボール(Lv7)》】

【MP:112 → 109】

───────────────────

ヴァルクの背中に直撃する——と思った瞬間、ヴァルクが振り返りざまに剣で弾いた。

「……っ」

(弾かれた!?)

「動きが読まれている! パターンを変えろ!」

ザカリアスが叫びながら、グラードの剣を受け流す。流れるような一閃が、グラードの肩を薙いだ。

「ぐっ……!」

グラードがよろめく。

「——セイントスラッシュ……!!」

白い光が走った。グラードが吹き飛ぶ。

ぽーん。

ザカリアスの右腕が飛んだ。

「……またか」

「また!?」

「慣れている」

「慣れていい話じゃない!!」

ザカリアスが左手で戦いながら、右腕が落ちた場所を横目で確認している。全然動じていない。

残り三体。

シェイドが杖を構えた。詠唱が始まる。

(魔法が来る——!)

《影移動》。

───────────────────

【スキル発動:《影移動》】

【MP:109 → 99】

───────────────────

シェイドの背後に出た。

(《祟り》!)

───────────────────

【スキル発動:《祟り》】

【MP:99 → 94】

───────────────────

黒い霧がシェイドにまとわりつく。詠唱が、乱れた。

「ぐ……なんだ、これ……」

(効いてる!)

しかしその隙に、ネロが俺の死角から突っ込んできた。

杖の先が、青白く光っている。魔法属性の攻撃だ。

(まずい——!)

ぐわん、と衝撃が走った。

───────────────────

【HP:60 → 44】

───────────────────

(食らった……!)

実体のまま、魔法をもろに受けた。

(……やばい、と思ったけど)

思ったより、軽い。

霊体の時に魔法を食らった感覚と、明らかに違う。

(……実体だと、魔法ダメージが和らぐのか)

新しい発見をしている場合じゃなかった。

「トオル嬢!!」

「大丈夫——!」

大丈夫じゃなかった。HPが一気に削れた。

(落ち着け……落ち着けって)

ふわふわした頭に、喝を入れる。

ヴァルクが再び斬りかかってくる。今度は《霊体化》で回避。すり抜けて背後を取る。

───────────────────

【スキル発動:《マジックアロー》】

【MP:94 → 88】

───────────────────

首筋に向けて放った。青白い矢が、吸い込まれるように急所を貫く。

ヴァルクが崩れ落ちた。

残り二体。

シェイドの詠唱が、また始まっていた。

(また魔法が来る——)

(今度は霊体で受けるか、実体で和らげるか——)

一瞬の判断。

(実体だ!)

シェイドの魔法が飛んできた。実体のまま、正面から受ける。

───────────────────

【HP:44 → 35】

───────────────────

(……やっぱり、実体の方が軽い)

「私が止める!」

ザカリアスが左腕一本でシェイドに突っ込んでいく。

「——セイント、スラッシュ……!!」

左腕から、白い光が走った。

シェイドが吹き飛ぶ。

しかし——

ぽーん。

今度は左腕が飛んだ。

「…………」

「…………」

両腕がない。

ザカリアスが、胴体だけで静かに立っている。

「……これは困った」

「困ったじゃないんだよ!!」

そこに。

「ワァーーーー!!!」

地面から鎧が飛び起きた。

リーゼロッテだった。

ゆらゆらしながら、目が覚めたらしい。

「ズースーーー!! どこだーーー!!」

「リズ!! ここにはいない!! でも目の前に魔族がいる!!」

「どこだ!!」

「目の前!!」

リーゼロッテが、ゆらゆらしながらネロを見た。

「……あ、ほんとだ」

鎧の拳が、ネロの顔面に炸裂した。

───────────────────

【スキル発動:《スタンインパクト》】

【リーゼロッテ:MP10消費】

───────────────────

衝撃波が広がる。ネロが吹き飛ぶ。

どさり。

沈黙。

俺は息を吐いた。

───────────────────

【執念深きトオル】

Lv:20

HP:35/60

MP:88/120

───────────────────

「……なんとかなったな」

「なんとか、ね」

リーゼロッテがゆらゆらと揺れた。

「……なんか、戦ってた気がする」

「戦ってた」

「ふぅん……」

またゆらゆらしている。

俺はザカリアスを見た。

両腕がない胴体が、静かに立っている。

「……腕」

「ああ」

「どこ行った」

「右はそこ。左はあそこ」

ザカリアスが顎で示した。俺は両腕を拾って、肩口に押し当てた。ぐちゅ、ぐちゅ、と音がして、くっつく。

ザカリアスがぱたぱたと両腕を動かして確認した。

「助かった」

「……これ、毎回なのか」

「全力で戦えばそうなる」

「もう少し加減してくれ」

「善処する」

全然する気がなさそうだった。

リーゼロッテがまたゆらゆらと揺れた。

「……あ、また眠い……」

「寝るな!! まだ着いてないぞ!!」

「……ふぁ……」

「リズ!!」

ズン、ズン、ズン。

宴は、まだまだ続いていた。


──つづく──

最後まで読んでいただきありがとうございました。

感想やコメントをいただけると、続きを書く力になります。ブックマーク・応援もとても励みになっていますので、よろしければぜひ。また次回お会いしましょう!

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