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異世界転「生」できませんでした。-俺YOEEEけどたくましく生きて行きます。-  作者: 六六-B
狂乱の酒宴編

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ザカリアス

いつも読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク・応援・感想、全部作者の栄養になっています。よろしければぽちっとしていただけると泣いて喜びます。それではお楽しみください!


「聖騎士団長……」

俺は頭がふわふわしたまま、ザカリアスを見上げた。

普段のぎしぎしとした動きが嘘のように、目の前の男は背筋を伸ばして立っている。

「そうだ。正確には、王国直属第一聖騎士団、団長職を拝命していた者だ。名の通り、インノケンティウス家は代々聖属性の使い手を輩出してきた由緒ある家系で——」

(長い)

「——して、私がズースという男を知ったのは、今から百二十年ほど前のことになる。当時、彼は勇者パーティーの一員として——」

(長い長い)

「——マモリという勇者がいた。あの者は、稀代の英雄だった。その力もさることながら、人としての器が——」

俺の頭の中で、何かが引っかかった。

(マモリ?)

どこかで聞いた名前な気がした。でも頭がふわふわしていて、うまく考えられない。

「——ズースがマモリを暗殺したのは、勇者パーティーが魔王を討った直後のことだ。協調路線に失望した彼は、永遠の命を求めて——」

「ちょっと待て」

俺は片手を上げた。

「魔王って……今も、いるのか?」

ザカリアスが、当然だというように頷いた。

「デスロード・ズース。アンデッドとして百年以上存在し、魔族を配下に置く現魔王だ。封印されていた魔王の力を吸収し、不死の存在となった。私がゾンビとして蘇ったのも、あの男を止めなければならないという使命感からだ。民を守るという——」

「……話が、長い」

ザカリアスが、眉をひそめた。

「これでも要点だけを絞って話しているつもりだが」

「絞れてない」

「絞っている。本来であれば王国の歴史的背景から説明する必要があるのだが、それは省いている。インノケンティウス家の家系図についても今回は割愛した。聖騎士団の組織構造についても——」

「もっと短くしてくれ」

「……努力はする」

全然する気がなさそうだった。

───────────────────

「——つまり、現在の魔王デスロード・ズースとは、かつての勇者パーティーメンバーであり、マモリを暗殺した張本人であり、封印されていた魔王の力を吸収してアンデッド化した存在だ。私がゾンビとして蘇ったのも、ズースへの怨念——いや、正確には怨念というより使命感と言うべきか。民を守るという——」

「分かった分かった」

俺は頭を押さえた。

ふわふわする。でも、今も魔王がいるという事実だけは、かろうじて頭に刺さっていた。

「——そして」

ザカリアスが、胸に手を当てた。

「貴女たちは、その魔王ズースを討つために旅をしている。そうだね?」

俺は瞬いた。

(……え?)

「いや、俺たちは霊廟を——」

「その献身、その覚悟——素晴らしい。私もその旅に力を貸したい。いや、むしろ貸さねばならない。ズースを止められなかった者として、せめて——」

「待て待て待て」

「——共に戦う義務があると感じている。インノケンティウスの名にかけて、この命——いや、既に死んでいるので命という表現は適切ではないが、この存在をかけて——」

「聞いてるか俺の話を!!」

───────────────────

その時。

群衆の波が、ざぶんと割れた。

鎧が、人混みの中から現れた。

リーゼロッテだった。

なんとなく乱れた雰囲気で、鎧をゆらゆらと揺らしながら歩いてくる。

「トオルぅ〜……どこ行ったかと思ったぁ……」

「リズ!! 大丈夫か!!」

「大丈夫大丈夫〜……あれ」

リーゼロッテが、ザカリアスを見た。

「ニッグ……なんか、しゃんとしてる……」

「ザカリアスだ」

「ザカ……りあす……ふぅん……」

リーゼロッテがゆらゆらと揺れた。そのまま、何かを思い出したように、ぴたりと止まった。

「……ズース?」

「……今、その話をしていた」

ザカリアスが静かに答えた。

次の瞬間、リーゼロッテの鎧が、がたんと揺れた。

「ズーース!?」

声が、でかかった。周りの群衆が一瞬だけ振り返るくらいに。

「あのクソやろー!! マモリを裏切りやがって!!」

「リズ!?」

「今すぐぶっ飛ばしに行くか!? ああん!? どこにいんだあいつ!!」

鎧の拳が、空を殴った。

「リーゼロッテ落ち着け!!」

「落ち着いてるし!! ただちょっと……ちょっとだけ……」

リーゼロッテがゆらゆらと揺れた。

「……いや、でも……トオルは……巻き込んじゃ……ダメだ……だ……」

鎧が、傾いた。

「むぇ……」

どさり。

地面に、崩れ落ちた。

「リズ!?」

「……すぴー……」

寝てた。

完全に寝てた。

俺は固まった。

(マモリ……また、その名前)

頭がふわふわしていて、うまく考えられない。でも、何かが引っかかる。

(トオルは巻き込んじゃダメ……?)

「——感動した」

ザカリアスの声が、静かに割り込んだ。

振り返ると、ザカリアスが胸に手を当てて、微動だにせずに立っていた。

「蘇りこそしたものの、次第に朽ちていく我が脳漿……」

目が、潤んでいる気がした。ゾンビなのに。

「最後の最後で、正しい判断をしてくれたか……!」

「違う、あいつは酔っ払ってるだけだ」

「……素晴らしい」

「聞けよ」

ザカリアスは聞いていなかった。

地面で寝ているリーゼロッテを見下ろしながら、静かに目を閉じていた。

俺は頭を掻いた。

(……何だ? なんかすごい大事なことを山ほど言われた気がする)

魔王が今も生きている。その名はズース。マモリを暗殺した男。リズはそいつを知っていた。マモリという名前を、また聞いた。

(なのに全然頭に入ってこない……頭が回らなくて処理が追いつかない……っていうより)

「情報量が多い!!」

思わず叫んだ。

ザカリアスがこちらを見た。

「お前だよ、お前!!」

俺はザカリアスを指差した。

「喋れたのかニッグ!! 今更だけど!! 今更すぎるけど!!!」

ザカリアスが、ゆっくりと口を開いた。

「……ザカリアスだ」

「どっちでもいい!!」

ズン、ズン、ズン。

切り株のステージから、音が響いている。

宴は、まだまだ続いていた。


──つづく──

最後まで読んでいただきありがとうございました。

感想やコメントをいただけると、続きを書く力になります。ブックマーク・応援もとても励みになっていますので、よろしければぜひ。また次回お会いしましょう!

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