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20.乾いた町

 バリアシオン子爵領にはたくさん雨を降らせないと……。決意を新たに、町の方に数人の騎士とフォーリアさんだけ伴ってお忍びで向かっていた。


 建物の影に隠れるように様子を窺う。

 そこには噂のホーリックス商会の姿があった。

「さあ!水はこちら!安心安全の飲み水はこちら!」

 ホーリックス商会の商人が水を売っている。

「高すぎやしないか」

「井戸の独占をやめやがれ!」

 それに対して集まった民衆は抗議の声を上げているようだった。

「井戸はこの前いくつか解放してやっただろうが!」

 商人は喧嘩腰で答える。

「枯れ井戸じゃねえか!舐めてんのかコラ!」

「阿漕な商売をやめやがれ!いまに雨の巫女様が来てくださるんだからな!」

 其れに対して民衆も喧嘩腰でいまにも暴動に発展しそうだった。

 私の名前も引き合いに出されている……。期待されてるんだ、頑張らなきゃ……!


 いつものように目を閉じて手を祈る形に組む。

 胸の高鳴りが必要だ……。思い出すのはフォーリアさんのこと。倒れた私を抱きかかえてくれた……私を思って寄せられた眉根、初めてフォーリアさんの顔に振れた。その手を握り返してくれた……。

 薄目を開けると今も横で私を心配そうな顔で見つめてくれている……。

 ドキドキ、胸が高鳴る。ドクドク、空へ水を組み上げて雲をつくる。ポタポタと雨が落ちてくる……。


「雨だ!巫女様が来てくださったんだ!!」

「ホーリックス商会ざまあみやがれ!これでお前らの商売上がったりだ!」

「……うぐぐ」

 民衆が喜びの声をあげるのとは逆に商人の男は歯噛みして雨を睨んでいた。


 ざあざあと降り続ける雨。私達はバリアシオン子爵邸へ戻った。

「巫女様ありがとうございます、すみません!これで我が領地も潤います……!」

 相変わらず子爵は気弱だった。

「これで悪徳商法も辞めてくれるといいんですが。ここにはしばらく滞在したいと思いますね。」

 枯れ井戸を潤すには水源の森や山を潤す必要があるとフォーリアさんが教えてくれた。子爵邸を拠点にして長期間雨を降らせなければならない。

「ええ、ええ、もちろんです巫女様!いつまでもいらしてください!すみません!」

「謝ることは無いですよ……あはは」


 それからも数日かけて、町や山、森へ出向いては雨を振らせ続けたが、女神様が現れることは無く少し安心した。

 雨を降らせるだけなら、まだ女神様と()()()()()()()()()

 雨を降らせる以上の力ってなんだろう……。魔法のようになんでも出来る力だろうか。例えば手から水が出せるとか?

「……えい!」

 枯れかけた花に手を向けて念じてみるけれど、何も起こらなかった。よかった、やっぱりまだ()()()じゃない。


 数日後、またお忍びで町へ出向いた。

 民衆は、枯れ井戸はどうなったか知りたかった。

 建物の影から様子を窺うと、またホーリックス商会の商人が水を売っていた。

「水ならホーリックス商会!安心安全の飲水だよ!!水はこちら!」

「もうお前らから買う必要は無いな!枯れ井戸が蘇ったんだ!!巫女様の奇跡だ!!」

「そうだそうだ!もう商売辞めちまえ!」

「なんだとお……!クソっ!」

 いよいよ商人は耐えかねて商店の中へと引っ込んで行った。

「巫女様ばんざーい!」

 なんて声も聞こえてくる。


建物の影で静かに喜びをフォーリアさんと分かち合う。

「フォーリアさん!やりました!井戸を蘇らせることが出来ました!」

「ええ!やりましたねアマネさん!やはり井戸は山や森が水源になっている……!」

 フォーリアさんは目を輝かせて言った。

「あれ?それは予想だったんですか?」

「はい、不確実なことを言ってしまいすみません。でもこれで実証されました。女神の力に頼らない為にも必要な知識です。アマネさんありがとうございます!」

 フォーリアさんは私の手をグッと両手で握り喜んでいた。私も嬉しくなって握り返した。


建物の影から出て、子爵邸へ向かいながらフォーリアさんが口を開く。

「これで子爵領は問題ないでしょう。あとはロベルト地方の最後、フェノーメノ辺境伯領へ向かうことになります」

「もう最後ですか。それでエピファネイア王国を全て巡ったことになるんですね……」

 長いような短いような旅の終わりを前にして、少し寂しさを覚えた。

「はい、それで巫女の使命も終わりと言えるでしょう。必ず、元の世界にお返しします。」

 元の世界に帰る。お母さんに会える。会いたい。けれど……。フォーリアさんを見つめる。この人とは離れ難いと思った。

「フォーリアさんは、この旅の終わりが寂しくないですか……?私は……寂しいです。フォーリアさんに会えなくなるのも、寂しいです」

 言ってしまった。どうしよう、フォーリアさんを困らせるだけなのに……。

「アマネさん……もちろん私も寂しいです……ですが、やはりご家族といるのがアマネさんの幸せなのではと……」

 また眉根を寄せている。私はフォーリアさんにこの顔をさせたくないのに。

「……そうですよね、私も帰ってお母さんに親孝行しないと……!」

 私は空元気を出して務めて明るく答えたのだった。

評価、感想、ブックマークありがとうございます!

誤字報告もありがとうございました!

明日も12時時頃投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 拝読しました! 雨を降らせられてよかった……でもそれと同時に「同じ」にまだなってなくてよかったとホッとします。 何事もなく終わって……よかったと思いつつも謎もあり、続きがとても気になりま…
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