012
サンティア国の王宮は大陸北部の山岳地帯から南下した丘陵地に位置し、北側は切り立った山々に囲まれ、険しい地形が侵入者からの攻撃を難しくし、王宮を頑強に守る役割を果たしている。
王都は王宮南側に広がっており、山岳地帯と平野部を結ぶ重要な経路が通り、商業や文化の交流が盛んに行われている。王都一体を囲む城壁の外側にまで広がる丘陵地の肥沃な土壌と温暖な気候は農業に適しており、豊かな農産物が収穫されているようだ。
王都に到着した一行は冒険者組合長に連れられ国王の招聘に応じるべく謁見の間にいた。
国王が玉座につくと一行を代表してエリックが報告を行った。
「ふむ。封印指定も致し方なしか。しかし監視は必要であろうな。」
サンティア国王は一人の男を呼び寄せるといくつかの指示を出して下がらせた。
「さて、もう少し詳しく話を聞きたいのでな。エリック、ガレット、アヴァは庭園にて待っておれ。他の者はゆるりと過ごされよ。今夜は王宮に泊まると良い。」
謁見は終わりエリックたちは侍従に促されるまま庭園へと移動した。
サンティア国王は程なくして装飾や外套を外した身軽な姿で現れた。
「さあここでは人の目はない。エリック、ガレットよ。楽にしてくれ。まずはパーティーの長であるそなたらには親として礼を述べる。我が愚息のこと感謝する。」
サンティア国王は腰を折って頭を下げた。
王は佇まいを正すとアヴァンスに厳しい視線を向けた。そして大きく踏み込み強烈な一撃を叩き込んだ。
体をくの字に曲げて苦しむアヴァンスの頭を鷲掴みにして無理矢理上体を起こさせる。
「お前の身勝手がどれだけ国政に影響を及ぼすか考えたことがあるか?政とは問題が起きないのが当たり前。それを維持する者たちには相応の苦労があるのだ。そこにお前が突如姿を消した。何人の者が心労に喘いだことか。突拍子もない行動を取る前にそこに思い至らないことこそがつけ上がりぞ。図に乗るなよ小僧!貴様はまだ何者でもないのだ!支える者のない神輿などゴミだ。勘違いするでないわ!」
アヴァンスは恥入り平身低頭するほかなかった。
「さて、説教はここまでだ。お主たちの今後の動きを聞いておきたい。まずはカーム旅団は引退するとのことだが、解散するのか?」
王は普段の口調でよいぞ。と前置きしてからガレットに発言を促した。
「オレたちは行商をしつつドラグモール国との国境に近い開拓村が格上げするってんで移住者として定住する話を冒険者組合からもらっています。ただ今回のこともあるのでできる範囲でこいつらに協力はしていくつもりだ。です。」
「そうか。エリックたちはいかがする。」
「はい。アヴァやリリアンの仮説が正しいとしても最終目標が見えないので、しばらくは黒騎士の動向をできる限り探るつもりです。」
「分かった。黒騎士の件については国としても捨ておけん部分はある。アヴァンスよ。この件はお前に預ける。必要なものがあれば申せ。」
「ありがとうございます。それでは私とリリアンに禁書の閲覧許可を頂きたく。そして例の剣の保管と性質調査をお願いします。」
アヴァンスの願いは調査結果は関係者以外に口外しないことと調査の過程で得られた情報を共有すること、国王の判断で隣国にも共有されることを条件に聞き届けられた。
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作者のやる気が漲ります!