表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆序章公開!☆【BL】くしゃみ1.5部〜イケメンの故郷凱旋ハネムーン編  作者: 城山リツ
ミチルの章 新しいオレの存在証明

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/6

ミチルがムズムズ転移できちゃった話 後編

 初夏の爽やかな風が吹く。

 カエルラ=プルーマって季節あるかな、とかそんなのは適当に考えよう。

 中庭の木陰でまったり休憩中。ミチルのいつものダラダラプレイスだ。今日はルークも一緒である。


「へっ、へっぷし」


 風を感じ過ぎた。今日はちょっと強い。ミチルはあまり可愛くないくしゃみを連発している。


「ミチル! だいじょぶ? 転移しちゃうっ!?」


 傍らで、そのルークがおろおろ慌てていた。ミチルのくしゃみ→ランダム転移、という思考があるためだ。


「んーん、大丈夫だよ、ルーくん」


 だが、ミチルは知っている。

 ()()くしゃみが「転移する」ヤツなのか。そうでないのかを。

 ミチルにしかわからない直感なので、イケメン達はミチルがくしゃみをするたびに大慌てである。


 だからミチルは()()()()()くしゃみを我慢するようになった。

 逆を言えば、我慢できるくしゃみは転移とは関係ない。最近その事に気づいたミチルは、自分のくしゃみ転移体質を少し理解できた気になっている。


「ほんと? ミチル、どこにも行かない?」


 心配でしょんぼりワンコなカレピが尊すぎる。

 ミチルはルークの頭をよしよし撫でながら微笑んだ。


「行かないよお。ルーくんとずーっと一緒だよ♡」


「ああ……ミチル」


 ドキッ。ルークの美麗な顔が近づいて、ミチルの胸は高鳴った。

 コレはアレですね。木陰でラブラブむっちゅっちゅの気配です。

 他のイケメン達、すまない。今は抜け駆けを許してくれい!


「ルゥ……くぅん♡」


 ミチルが目を閉じ、むちゅちゅを待っていると、またしても強めの風が吹いた。


「へっ、へあ、いっきし!」


 はい、ムードがぶっ壊れです。往年のコメディおじさんのソレが出てしまいました。


「……ふふ」


 ルークは驚きで一瞬目を丸くした後、ミチルの唇を人差し指でふにっと触って笑った。


 おのれえええ!

 にっくき強風めえええ!

 オレになんの恨みがあるんだ、黙ってチューさせろおおお!


 ……と、怒り狂いたい衝動を抑えてミチルも愛想笑いで誤魔化した。

 惜しい。惜しすぎる。ゆえに悲しい。


「そうか、今、アルテミプリンの花粉、飛ぶ頃ね」


「へっ、ナニプリンだって!?」


 ミチルはあの黄色いぷるぷるデザートを思い浮かべて、急に声を弾ませる。

 こんなんだから「セイソンなのに意地汚い」とエーデルワイスに怒られるのだ。


「ううん、ミチルの好きなプリン、違う。カエルラ=プルーマ、ハーブたくさん生えてる。その花粉、魔力持ってる。今頃の風に乗って、繁殖するよ」


「ほえー、そうなんだなあ」


 では、最近の「我慢できるくしゃみが我慢出来ない」原因はその魔法花粉だ。

 地球で言えばスギとかヒノキ花粉だろうか。おのれ、異世界に来てまでもオレは花粉症なのか。

 ミチルはまだ見ぬなんとかプリンが憎くなった。




「おおーい、ミチルー! このやろー!」


「あ。エリオットだ」


 中庭を歩いてくるおかっぱイケメン。遠目からでもわかる美貌を携えて、ミチルのカレピがもう一人やって来た。


「探したぞ、オメー」


 エリオットは少し肩で息を吐いて、芝生に座るミチルとルークを見下ろした。


「エリオットさん、どうしたの、です?」


「どうしたの、じゃねえよ! ルークは目を離すといっつもミチルにベッタリしやがって」


「うへへ。ぼく、ワンコ枠ね。ワンコはマスターのそば、いつもいる、です」


 ルークの強力な優位性は同い年(タメ)という点にある。エリオットは()()年上だが、別側面で考えたら「弟枠」だ。何かにつけてコドモ扱いされる事、しばしば。

 王子様なら絶対しない舌打ちをしてから、エリオットは本題に入った。


「チッ、まあいい。ミチルよぉ、オメーのおはなあむあむ転移だけどよ」


「ちょっと! えっちな名前つけないでよ!」


 ミチルは急に恥ずかしくなってしまった。イケメンにお鼻をあむあむされると、()()()()っぽいくしゃみが出そうになるのだ。


「じゃあ、お♡♡ムズムズ転移だけどさ」


「おおい、伏せ字に悪意があるぞ! おはなムズムズ転移ってちゃんと言え!」


 ミチルは更に真っ赤になった。そこを隠すと違うトコを妄想しちゃうでしょ!


「あーもー、どっちでもいいよ。例のムズムズ転移をさ、今、クソチビ法皇に聞いてるトコ」


「えっ、そうなの?」


 そんな重要な事を曽祖父に聞いているだなんて。ミチルは驚いて立ち上がる。


「今頃は、他のヤツらも集まってるだろうよ。てか、お前がいねえと始まんねえだろ」


「そ、そだね、わかった。行こ、ルーク!」


 ミチルは慌ててルークを振り返る。するとルークはすでに立っていて、「わん♡」と返事してからミチルの手を握った。


「だーかーらー! ルーク、オメー、マジ油断ならねえなあ!」


 エリオットはルークの自然なエスコートに嫉妬しつつ、ミチルのもう片方の手を握る。


「やだあ♡ たまんねえかよぉ♡」


 ミチルはルークとエリオットに挟まれて、悦に入ったまま法皇の執務室に向かった。




「来たか」


 おてて繋いでランララーン、の気分も帳消しになるほどの冷淡さがミチルを迎えた。

 法皇エーデルワイスはミチルの厳しい曽祖父でもある。ミチルがルークとエリオットに甘えながらルンルンしているのを、視線だけで諌めていた。


「……うっす」


 肉親に叱られれば、さすがのミチルもしおらしくなる。イケメン二人の手を離して、後ろ手を組み、左足をやや前に。体育で習った休めの姿勢である。つまり、今のミチルは厳しい体育の先生を前にした気持ちであった。

 そうして落ち着いて周りを見れば、ミチルのカレピ達が勢揃い。ミチルに向けて優しい笑顔をくれるので、口元が緩んでしまう。


「にへへえ♡」


「……では話の続きを。ミチルはオナハヲアムアムサレルトテンイデキチャウ、と言ったか?」


 エーデルワイスが一部棒読みなのは、溺愛マゴと激憎ムコのラブラブ行為を形容したくないからである。

 だが、それを突っ込んでいても話題が進まないので、ムズムズ転移の提唱者であるエリオットがハキハキと答えた。


「おうよ! これはおれの勘だけどさ、例えばおれがミチルのお♡♡をあむあむすると、アルブスに転移出来るんじゃねえかな?」


 だからちゃんと「お鼻」って言って欲しい。変な妄想しちゃう。

 ていうか、コイツらはどうしてそんなに伏せ字が巧みなんだ。


 ミチルがあらぬ興奮を覚えていると、エーデルワイスはさらに眉をひそめて唸った。


「ううむ、本当にそのような転移方法が……? カリシムスの直感だから無下にも出来んが」


 ミチルとイケメン達は世界を救ったプルケリマとカリシムス。

 カエルラ=プルーマにおいて、これ以上の聖人はいない。カリシムスことイケメン達は、あらゆる点において人類の頂点だ。

 その意見を否定する権利は、法皇にもない。世界の真理に近い言葉なのである。




「ええー、ちょっと、いいんですかあ?」

「儂がお鼻あむあむだけで終われると思うか」

「むむ……我々がミチルのくしゃみを誘発するなど、危険なのでは?」

「まあ、やってみない事には何とも言えぬ」




 急遽集められた、アニーもジンもジェイもチルクサンダーも、少し懐疑的ではあるが「ミチルのお♡♡をあむあむ」する事はやぶさかではない。アニーとジンはわかりやすくニヤけているし、ジェイとチルクサンダーは冷静に見えるが鼻が膨らんでいる。


「エリオットさん、そう考える根拠、なに?」


 唯一慎重さを見せたのはルーク。だが、エリオットはあっけらかんとしていた。


「根拠ぉ? そんなもんはねえ。おれの天才魔法使いとしての勘だ!」


「ほんとかなあ……」


 偉そうにふんぞり返るエリオットに、ミチルも不安を隠せなかった。

 だいたいいつも調子に乗って、とんでもない事になるのだから。


 期待と不安が入り混じる空気を、エーデルワイスの杖がカツンと床を突いて中和させる。

 それから、法皇による最終決定がなされた。


「わかった。ではアルブス目指して転移を試みる。あそこにはペルスピコーズへのポータルがあるから、ワタシもついていけば危険はあるまい」


「ええー! そんなん出来るかな?」


 ミチルの不安はますます膨らんでいった。


「むっふう! やろうやろう!」


 ご指名されたエリオットの鼻もますます膨らんでいった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ