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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第6章 村人輸送と転移陣のその先

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04.限界走行

 

 そして、いよいよ野菜箱・改の番になった。

 スタートラインに機体を置き、前方にアリス、中央にフィンロイ、後方にテオドールが乗り込む。


 アリスがリットを見た、



「とりあえず、何周かしてみるんで、1周ごとにタイム測ってもらっていいですか」

「はい、分かりました!」



 アリスが真剣な顔で魔力を込めた。

 ふわりと機体を浮く。


 騎士たちが囁き合った。

「どのくらいなんだろうな」

「フレッドと同じくらい出たらすごいな」

 といった声が聞こえてくる。


 リットが時計を見ながら言った。



「では、よーい、スタート!」



【起動・そよ風:魔法陣】!



 合図と同時に、アリスが風魔法を発動した。

 後ろからヒュウと風が吹き、野菜箱が滑るように走り始める。


 前方からの風に目を細めながら、アリスが振り返った。



「2人とも、どうですか?」

「大丈夫です。まだ余裕があります」

「そうだね、まだそれほど速くは感じないね」



 テオドールとフィンロイが答える。


 そのままの速度を維持して進むと、リットたちが見えてきた。

 リットが手を振りながら何か叫んでいる横を通過する。


 フィンロイが時計を見た。



「だいたい2分だね。フレッド君より少し遅いくらいか」



 なるほど、とアリスは思った。

 このスピードでは「打倒フレッド」が達成できないらしい。



「もう少しスピード上げてもいいですか?」

「そうだね、そうしよう」



 フィンロイが賛成し、テオドールも「大丈夫です」とうなずく。

 アリスは別の魔法陣を取り出すと、魔力を込めた。



【起動・風:魔法陣】!



 ぐん、と速度が上がり、野菜箱・改はぐっと速度を上げた。

 景色の流れる速度が一気に上がり、フィンロイが「これはなかなか……」とつぶやく。


 その後、野菜箱はリットたちの横を通過した。

 フィンロイが再び時計を見る。



「1分半。これでフレッド君と同じだ」



 アリスは考え込んだ。

 まだ余裕がある、まだいける。


 彼女は振り向いた。



「もうちょっとだけスピード出してもいい?」

「もちろんです!」

「……そうだね、性能テストだしやってみよう」



 即答するテオドールの後に、やや間を置いてフィンロイが同意する。



(よし、行くか)



 アリスは念のため持ってきていたゴーグルをかけた。

 別の魔法陣を取り出すと、魔力を込めた。



【起動・突風:魔法陣】!



 ぶわっと風が吹いた。

 ぐんっと野菜箱・改が一気に速度を上げた。

 横を流れる景色が線のようになる。



「……っ!」



 フィンロイが声にならない叫びをあげた。

 テオドールがぐっと踏ん張る力を込めて制御を強める。


 アリスは目を細めて前方を凝視した。

 リットが見えたと思ったら、シュンッ、とあっという間に遠ざかる。



(これ、結構スピード出てるっぽい!)



 その後、アリスたちはコースを周回し始めた。



 シュンッ! シュンッ! 



 リットたちの前を目にもとまらぬ速さで通過する。



 やがてテオドールが声を上げた。



「そろそろ止めましょう!」

「わかった!」



 アリスは魔法陣を制御してゆっくりと逆噴射を始めた。

 速度がじりじりと落ちていく。


 そして、ある程度まで速度が落ちると、

 テオドールが地面に飛び降りた。

 ぐっと踏ん張って野菜箱を止める。


 アリスはゴーグルを外すと、ふう、と息を吐いた。



(楽しかった!)



 スピードが出すと何だかとてもスッキリする。



(でも、もっと行けそうな気もする)



 アリスが一息ついていると、リットたちが駆け寄ってきた。

 驚愕の表情で叫ぶ。



「アリスさん! 1分を切りましたよ! 時速70km以上です!」

「オオカミより早い?」

「余裕です!」



 アリスはにんまり笑った。

 これで安全性はばっちりだ。


 彼女は満面の笑みを浮かべて振り返った。



「やりましたね! フィンロイさん!」



 そしてフィンロイを見て、大きく目を見開いた。



「フィンロイさん!」



 そこには白目をむいて気絶したフィンロイが座っていた。

 完全に意識が飛んでいる。



「おい、しっかりしろ」



 ガンツが大声を上げて揺さぶり、その場は大騒ぎとなった。

 実験はここまでということになり、急いでフィンロイを古城まで運ぶ。



 *



 その後、幸いなことにフィンロイはすぐに気が付いた。



「いやあ、楽しすぎてつい気絶してしまいました!」



 とよく分からないことを言っていたものの、

 実験は成功ということで、本番機の製作が行われることとなった。


 運転席と後部座席を除き、座席を4つ設けた6人乗りで、

 フィンロイの強い主張により、風よけが取り付けられた。


 出来上がった本番機を見て、リットとテオドール、騎士たちが、ホッとした顔をした。



「サイズが大きくなったお陰で、棺桶(アレ)には見えなくなりましたね」

「ああ、本当に良かったな!」



 などと囁き合う。


 その後、本番機はテストを兼ねて騎士4人を乗せて旧街道を走った。

 見通しが悪い場所や通れない場所の木や枝を切ったりしながら、森の出口までの整備を進める。


 野菜箱に乗りながら、エマが感心したように言った。



「この乗り物のお陰で、森が一気に小さくなったように感じるわ」



 その言葉を聞いてアリスは感心した。

 確かにその通りだ。



 *



 そして、開発を始めて約1か月後。

 アリスたちはカスレ村に向かい、ロッテが村人たちを説得。


 翌週から、移住希望者18人が、順番に古城に移住してくることになった。






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