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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第4章 結界探索と謎の地図

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05.おそらく1000年前


本日2話目です。

 

 アリスが声を潜めた。



「実は、ちょっと見てもらいたいものがあって」

「見てもらいたいもの?」

「地図です」



 リットが目を軽く見開いた。



「……なんの地図ですか?」

「それが、よく分からなくて。一度見て欲しいんですけど、来てもらえませんか」

「ええ、もちろんです」



 リットは興味深そうにうなずく。



 *



 その後、アリスとテオドールは、リットを連れて部屋に戻った。

 テオドールがランプに火を点けると、テーブルの上に置いた。



「リットさん、どうぞ座ってください」

「ありがとうございます」



 リットが緊張したように座ると、周囲を見回した。



「お2人はここで一緒に住んでいるんですか?」

「はい」



 テオドールがうなずくと、リットが申し訳なさそうな顔をした。



「すみません、愛の巣にお邪魔してしまって」

「……っ」



 テオドールが喉を詰まらせたようにゲホゲホと咳込んだ。

「だ、大丈夫ですか!?」とリットが慌てたように立ち上がる。


 その間に、アリスはクローゼットの奥をゴソゴソと探した。

 地図を取り出して広げると、まじまじと見る。



(うーん、やっぱり分からん……)



 記号のようなものがビッシリ書き込まれており、辛うじて地図だと推測できるレベルだ。



(リットさん、分かるかな?)



 アリスは地図を、リットの目の前にあるテーブルの上に前に広げた。



「これです」

「……っ!」



 リットが、大きく目を見開いて固まった。

 瞬きを忘れたかのように地図を凝視する。


 そして、信じられないといった表情で、アリスを見た。



「これ、古代地図じゃないですか!」

「古代地図……?」



 リットによると、この地図はガイゼン王国の建国よりも前――1000年ほど前に作られたものらしい。



「紙質とか雰囲気が同じなので間違いありません。もしかすると、もっと古いかもしれません」



 アリスは思わず目をテオドールと顔を見合わせた。

 古そうだとは思っていたが、まさかそんなに前のものとは思わなかった。


 テオドールがリットに、「これが分かるんですか?」と尋ねると、

 リットが残念そうに首を横に振った。



「いえ……残念ながら」



 リットによると、王都にある建国前に作られたという地図には、諸説ある状態らしい。



「何かを示す地図だと言う人もいれば、芸術品だという人もいるんです。今は博物館に美術品として飾ってある感じですね」



 なるほど、とアリスは腕を組んだ。

 どうやら地図に見える芸術品の可能性もあるらしい。



(1000年前か……)



 そして、彼女はふと思い出した。

 そういえば、広範囲結界魔法を開発する時に調べた魔法書の1冊が、1000年くらい前のものだったな、と。

 謎の記号だらけで読めない箇所があり、解析魔法を使ってようやく読めた記憶がある。



(……あの魔法、使ってみたらどうだろう)



 アリスは、2人の顔を見た。



「ちょっと試してみたいことがあるんだけど、いいかな」

「ええ、いいですよ」

「もちろんです」



 アリスは魔法紙と魔法インクを持ってくると、魔法陣を描き始めた。

 魔法陣を地図の上に置くと、魔力を流し始めた。



起動(カンターレ)解析:魔法陣(スクルティニウム)



 魔法陣が光を帯びた。

 その下にある地図がぼんやりと光り始める。


 魔法陣を介して地図に魔力を流して、アリスは首をかしげた。



(なんかこの地図、魔力の通りが悪いかも)



 魔力の強弱を調整しながら、少しづつ魔力の通りが悪い所を調整していく。


 集中して光る魔法陣に向かうアリスを、テオドールとリットが固唾を飲んで見守る。

 そして、次の瞬間――



 ぐにゃり



 地図がゆっくりと変化をし始めた。

 描かれている記号が歪み、新しい形に変化していく。



「……っ!!!!」



 リットが声にならない声を上げた。

 テオドールも呆気にとられたように変化していく地図を見つめる。


 アリスは集中して魔力の通りを調整した。

 全て修復し終わり、最後に1回魔力を流して終了する。


 そして、光が消え。

 アリスが地図を取り上げた。



(うん、分かりやすくなった気がする!)



 リットが信じられないといった目でアリスを見た。



「……何したんですか?」

「古代魔法書の中に、稀にこういう風にしないと読めないのがあるんです」



 やったね! と思いながら、アリスがややドヤ顔で地図を渡した。


 リットが「そんなシレっと……」とつぶやきながら、地図を受け取る。

 そして、地図を机の上に置くと、持っていたノートを高速でめくりながら見比べ始めた。


 パラパラとページをめくる音が部屋に響く。


 しばらくして、彼女は興奮したように顔を上げた。



「これは間違いなくこの周辺の地図です。これがこの古城で、こっちが教会跡、そしてこっちが今日見た湖です」



 アリスはリットの指の先を見つめた。

 小さな四角い箱と、湖らしき図形がある。

 どうやら、この街は相当大きかったらしい。



 リットが腕を組んで考え込んだ。



「この街って、もしかしたら、ガイゼン王国の王都の手本だったかもしれません」



 街並みなどが、王都とよく似ているらしい。



「となると、たぶんこれが王宮ですね」



 リットが指さしたのは、地図中央にある大きな四角だった。

 大きな湖の畔にある。


 テオドールが口を開いた。



「これって、今日見た白い遺跡ですよね?」

「はい、かなりの大きさでしたし、たぶん王宮で間違いないかと」



 この会話を聞きながら、アリスの脳裏に地下の壁画が浮かんだ。

 湖を望む大きな建物が描かれていたことを思い出す。

 彼女は思わず胸を押さえた。

 懐かしいような、切ないような、不思議な気持ちが湧いてくる。



(もしかして、あの壁画、この王宮だったのかもしれない)



 そんなことを考えているアリスの横で、リットが首をかしげた。



「これ、何でしょうね」



 リットが指を差したのは、王宮と思しき場所に記載されている、黒い星印だった。

 全体を見ると、これだけがやけに目立つように大きく太く描かれており、

 横にはすでに消えて読めない走り書きのようなものもある。


 アリスが首をかしげた。



「なんだろう、何かあるのかな?」

「ガイゼン王国の王城の場合、ここにあるのは塔ですね」

「もしかすると、大きな塔があったという可能性もありますね」



 あれこれ言い合って見るものの結局分からず、とりあえず今は置いておくことにする。



 その後、3人は話し合いをした。

 リットが、

「この地図があれば、今後の地図作りがぐっと楽になります!」

 と主張したことから、地図を公開することが決まる。


 そして、その翌日から、

 アリスたちが持ち帰った古代地図をベースに、地図作りがスタート。

 開拓が大きく前進することになった。






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