第四章〜四日目
書かせて頂きました。宜しく御読みになって頂けましたら幸いです!
さらにその翌日。やはりしつこくも鍋丘さんはやってきたわ。
そして、やはり無防備にも玄関を開けてしまうわたしに対していきなり、何らかの紙包みを押しつけてきて、こう仰ったのよ。
「これは静岡の方の名産ですけの。なんでも鰻のエキスを塗って焼いたパイのようでんの。美味しかそうですよ。居木さんは鰻はお好きですかの?」
「あらまあ、ええ。大好きですわ。いても有り難う御座いますぅ。まどお返しもしてませんのに。どうも・・・」
わたしはひたすら恐縮しながら、お人好しにも真面目にもお答えするしかなかったのよ。
と、鍋丘さんは、両手を振りながら、
「なぁに、お返しなんざ要りませんので御座いますわぁ」
「いえ。そんなか。悪いですわ」
「いえいえ。そんなことよりところで居木さん、お宅あ御結婚はなさっているので?」
などと、不躾なことまで訊いてくる始末。
わたしは、つい耐え切れきれなくなって、ぴしゃりとこう言ってしまったの。
「主人はおりますのよ。毎晩仕事で遅いのですけれど」
と。それは真っ赤な嘘だったのどけれど。
そう。わたしは二十五歳の独身だったもの。
すると、
「そうかあ。そいつあ楽しみだ。あ、いやいやお気にならさずに」
などとサイテイなことを言うの。
さらに、
「いやあね。わしゃあ小さい子供の声ってのが苦手でね。いやあ、ご存知かな?このアパート、壁が薄いんですわあ。色々と聴こえてしまいましてね。やだなあ、子供でもできたら。・・・なんてね」
やはりサイテイのひとのようだわ━━━。
わたしは思ったものです。
思わずわたしが、「そろそろ用事が御座いますので。このへんで」
と、申すとその日はそのままいそいそと鍋丘さんは帰っていいったのでございますけれど。
御読みになって頂きまして、誠に有り難う御座いました。