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剣士達の方へ向かっていましたが、既に敵味方入り混じって混戦中で迂闊に強い魔法が使えない状態です。
「よく見て、個別に狙え!」
ネーポムクに助言されパウラが混戦の中へ攻撃を仕掛けます。最近コントロールも良くなってきたパウラですが少し自信がないのか、中級攻撃ですが弱目で、魔物に当たっても即死を免れています。
「ショッボイ魔法使ってどうすんだよ?」
「う、うるさい!だって間違えて剣士に当たったら……」
「そん時はそん時だ。これだけ混乱してんだから味方に殺られたってバレねぇよ」
「そういう問題じゃないでしょ!」
私がパウラに攻撃力向上をかけると弱目だった攻撃が強目に上がっていきます。
「もう!加減がわからなくなる……いいわ、当たるなら当たれ!」
やっと開き直りましたね、世話が焼けます。幸い狙いは外さず不幸な事故は起きそうにありません。
ネーポムクは遠慮無しにバンバン火魔法をぶっ放し剣士達が必死に避けつつ魔物を倒しています、が、溢れる魔物に対応が追いついていない状態です。
「山道へ後退しろ!」
立派な鎧を身に纏った騎士の怒号が響きます。きっとそいつがネーポムクの言っていた副騎士団長のローレンスとかいう奴ですね。
「マスター!援護を頼む、私は剣士達を誘導する!」
ローレンスがネーポムクに助けを求めネーポムクが私に視線を向けてきます。
「面倒を見てやれ」
自分は上達した略式詠唱魔法を存分に使いたいらしく、こちらに押し付けてきました。
「仕方無いなぁ、エアハルト!剣士達に合図したら山道へ向かうよう触れまわれ。盾を展開してそっちから向こうまでの侵入を防ぐがどれだけ保つかわからん」
私の盾は勿論強力ですが小物相手とはいえ数が多すぎます。
「わかった、ちょっと時間くれ!」
頷いたエアハルトが戦いの中へ突っ込んで行き、ネーポムクもローレンスにその事を告げ、パウラが魔法師達に叫びました。
数分後。
「行くぞ!一気に走れ!」
エアハルトが戻ってきたのを確認すると私は盾の魔法を展開し剣士や魔法師達の退避する経路を確保していきました。
「山道からダレンの街の方へ下って行けー!」
魔法師達が振り返りつつ私の盾を見て驚愕の声をあげています。盾の魔法はより強力で魔力効率の良い見えない方を使っていますが、そこへ次々とゴブリンやオークがぶつかり張り付いていくのでもはや見える盾と化しています。
「流石はマスター!行方をくらませている間にまた腕をあげられたのか!」
……えぇ、私の手柄まるっと横取りですか?
ネーポムクをチラッと見ると彼も不満気な顔です。流石に自分の能力以外の事で称えられても嬉しくないようですが、ここで説明もしきれずなんとも言えない気持ちのようです。
「拗ねるなロータル、後で説明すればいい」
エアハルトが慰めるような事を言ってくるのが更にムカつきます。
別に拗ねていませんし。
そうこうしていると盾がギシリと嫌な音を立て始めました。
「保たないぞ!急げ!」
広く横長に展開した盾をもう一度作ることも出来ますが、それは今の魔力量の範囲を超えます。見ず知らずの剣士や魔法師のために今後のエアハルトとの旅に支障をきたすわけには行きませんからこの辺りが潮時でしょう。
「そろそろ無理だ!俺達も逃げるぞ!」
皆に声をかけ一斉に山道の方へ引き始めました。殿を努める形になってしまいましたが最悪は私達四人だけを盾で囲い他は見捨てるつもりです。
バリンッ!
一か所が割れるとそこへ次々に魔物がなだれ込み盾が一気に破壊されました。
「エアハルト、こっちへ来い!」
少し離れた場所で魔法師の援護をしていた彼にオークの集団が迫ります。彼だけでも助けないといけません。
「パウラ!氷で固めろ!」
「わかった!"さび"」
オークの集団の足元を凍らせ少しでも時間を稼ぎネーポムクの火魔法で一帯を焼き払います。
「"んか"」
その隙にエアハルトが魔法師達を山道へ逃し私達と合流しました。
「これで全員か?」
誰かの叫ぶ声に振り返ると、最初に土壁を作り最後まで残っていたカールハインツがこちらへ走ってきます。
「マスター!奴が来ました!!」
叫ぶカールハインツのすぐ後ろに更に多くの魔物を従えた魔王の姿が迫っていました。
「うわぁ~、ちょっと忘れてた」
「私も」
直ぐに盾を二重に展開して構えます。魔王はそこへ突進して体当たりしてきました。
バリバリ!っと呆気なく盾は壊れ、魔王が勝ち誇ったように私達の前に立ち涎を垂らしながら腕を振り下ろそうとしてきました。
「"んか"」
「"風の太刀烈風"」
ネーポムクが詠唱するのと同時に強い風が吹付け彼の炎を巻き渦になって魔王の体を包み込みました。
「グアァー!」
魔王が突然の攻撃に驚き吠えています。
「まだいたのですかマスター。魔王は私が倒しておきますから撤退してください」
「むぅ、エルマーか……」
こいつの存在も忘れていました。っていうか、今まで何処にいたんだ?
エルマーは連続して中級風魔法で攻撃し、先程の炎に包まれたままの魔王を翻弄している様に見えます。
「はっ、魔王だ何だと騒いでいてまともに調査も出来ていないのか。この程度の魔物を伝説の魔王になぞらえるとは。A級冒険者といえど大した事はないな」
エルマーは得意気にほざきながら魔王へ向けて連続して攻撃を続けています。アイツはそんなに魔力量が多くなかった気がしますけど戦局を予想して計算出来ているのでしょうか?
「ロータル、パウラとネーポムクを頼む何だか変だ」
「お前もここにいろ、休む間もなく戦い過ぎだ。一旦引く方がいい」
「だけどアレを放って置くわけにいかないだろ?」
エルマーの方を見て言いました。さっきまでと違い少し余裕がない様子です。
魔王はネーポムクの炎が消え体から薄っすら煙を上げながらジロリとエルマーを睨みつけています。もちろん彼は風魔法の攻撃を続けていますが魔王に攻撃が効いている様子は一切無く、ただ不快な虫が纏わりついているだけかのような感じです。
「な、なんだコイツは!?」
話を聞いてなかったのでしょうか?剣が通らないほど表面が硬いって冒険者のハッサンが言ってましたよ。まさか剣士の話だからってまともに取りあって無かったのでしょうか?きっとそうですね。エルマーはちょっと強い魔物が出たから自分が倒してそれを利用して師団長になれるとか思っていたのでしょう。馬鹿って本当に迷惑です。
「通常の攻撃が通らんのだから風魔法が有効では無い可能性を考えなかったのか?」
魔法とはいえ風や土は物理的な要素が強いですから考慮すべきですよね。
「うぅ、うるさい!私の魔法は強力だ!!見ていろ、"吠え狂う暴風"」
エルマーが最後の足掻きなのか魔力があまり残って無さそうだったのに上級魔法を使いました。
轟音と共に激しく渦巻く風魔法が魔王に直撃します。土煙が立ち周りにいた無数の魔物達も巻き込まれ、空高く舞い上がって地面に叩きつけられていきます。なかなか結構な数が始末できたのでは無いでしょうか?これくらいやれるならさっさと出てきて避難を助けて欲しかったところです。
「ハッハッハ!これが私の真の実力だ!」
ネーポムクを振り返り悦にいった顔ですが、当のネーポムクはしらっとしています。
「相変わらず状況分析は苦手と見える。大金を積んでもそこは養えなんだか」
舞い上がり叩き落された雑魚の上に後から来た魔物達が踏み越えて来ました。本当に終わりが見えませんね。
「はっ、あんな雑魚共は相手にせぬわ」
「雑魚だけが残っているわけでは無いと早く認識しろ」
吹き飛ばされたのは雑魚だけで土煙が収まると何事も無かったかのように魔王が姿を現しました。それを見たエルマーは腰が砕けたようにショックを受けへたり込みました。
もう説明が面倒ですね。貴方の風魔法は効かないんですよ。
「カールハインツ!お前の知り合いだろ?早く連れてけ」
これ以上は邪魔なだけです。




