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昨日投稿出来なかったので今日は2話です
「じゃあ弟子だと思っていた若い男が刀鍛冶ナジブだったの?」
粗末な小屋の脇にテントを張りながら今夜の野営の準備をしていました。ネーポムクが土魔法でかまどを作りそこでパウラが鍋をかき混ぜながら驚いています。
「あぁ、途中で変だなって思ったんだ。オッサンより若い男の方が何となく威圧感というか、雰囲気が強かったから」
「そうなの?私は全然気が付かなかった。ロータルは気づいてた?」
「もっ、もちろんさ、なぁ、ネーポムク」
「うっ、うむ。当り前だな。どうやらナジブという名は代々受け継がれる刀鍛冶の名のようだ」
ちょっと焦った様子を上手く隠して私とネーポムクは話を合わせました。パウラが怪しんでいますがこのまま押し切りましょう。
「それはいいとして、良かったの?あんな態度とって」
エアハルトの強気な発言がパウラには気になるようでした。
「何言ってるんだよ。剣士と鍛冶師は対等だぞ。どれほどいい剣を作り上げても使う者がいなきゃ意味ないからな」
「言うじゃないか、だが剣士だって剣が無ければ戦えないぞ」
突然さっきの弟子、ではなく、鍛冶師ナジブが偉そうに近づいていきました。
「そうだな。だから対等だって言ったろ」
エアハルトが折りたたみテーブルを広げながらナジブをジロリと見ています。
私は出来上がったスープをそれぞれのカップに注いだものをパウラから受け取りテーブル並べています。
今夜はスープと昨日狩った野ウサギの肉です。肉はタレに漬け込み串に挿して焼いているのをネーポムクが見張っています。
ジュワジュワと肉が焼ける音がし、煙と共にいい匂いが立ち込めてきました。
「そろそろ良さそうだぞ」
ネーポムクは相変わらず何もせず、出来上がりをエアハルトに告げると自分の席につき用意されるのを待っています。
私もスープを運び終えると席につきました。
「みんな行き渡った?」
パウラとエアハルトがテーブルに座る私達を見てちょっと嫌な顔をしました。
「なんで貴方が座ってるのよ?」
四人がけのこじんまりしたテーブルに何故か自分の椅子を持って来て座っているナジブがいます。
「気にするな、一人増えただけだ」
「お前が言うな!っていうか、あのオッサンはいいのかよ」
エアハルトがさっきの偽巨匠風のオッサンを気にするとどこからともなくオッサンまでも椅子を持参でやって来てちょこんと座りました。
「大丈夫だ、こいつは少食だから」
理由の分からないことをナジブが言います。オッサンも頷いているので少食は間違いないようです。
「信じられない厚かましさね」
ナジブとオッサンがパウラの言葉に悪びれもせずどこからか自分のカップを差し出しスープを入れるように催促しています。
「そっちだっていきなりやって来て剣を作れだなんて厚かましいだろ?」
「いや俺はまだ頼んでない」
「いずれ頼む気だろ」
「まだ決めてない」
二人の言い合いは続きますが食事は始まりました。
「大体いい剣を作るにはそれなりの材料が必要なんだぞ」
「俺の皿から肉を取るな!材料ってなんだよ?」
わいわいと賑やかな中、ナジブがエアハルトにいかに剣を作るのが大変かを話し始めました。そこから剣の材料の話を始め、貴重な魔石が無ければ作れないと言い出しました。
「貴重な魔石って?」
パウラがナジブのカップにおかわりのスープを注ぎます。
「出来るだけ大きな魔石かもしくは大量の魔石。そしてそこへ注ぐ強力で大量の魔力が必要だ。美味いなこのスープ!」
ナジブに剣を作ってもらうには自分で強力な魔力が入った魔石を集める所から始めないといけないそうです。
「あのグリーベアの魔石じゃ駄目なのか?」
私が思い出して話すとエアハルトはその存在を忘れていたのか一瞬考え、ハッとしました。
「そういえばあったな」
魔石は全ての魔物から取れる可能性がある物ですが、必ず取れる物ではなく個体差が激しい。大物だからといって大きな魔石が取れるわけではありません。そういう理由で大きな魔石というのは凄く貴重な物なのです。
食事が終わり後片付けをし、早速ナジブにグリーベアの魔石を見せました。
「随分大きな魔石だな。魔力はほぼ空っぽだが」
「仕方無いだろ。殺して手に入れる物なんだから」
エアハルトが不満そうに口を尖らせます。
魔石は魔物が生きていれば魔力が入っていますが、死んでしまうとすぐに殆ど魔力が流れ出てしまいます。その後で魔法師が魔力を注ぐ事ができますが、当然大きさによって入る魔力量が違います。そしてその魔法師の持つ力によって魔力の濃度が違うので魔石の持つ力も変わってきます。
「せっかくこれだけの魔石を持っていても腕の良い魔法師がいなければ宝の持ち腐れだぞ」
魔石を手に取りナジブがそれを竈門の炎に照らして質を確かめています。
「どんな魔力が必要なんだ?」
注ぐ魔力によって魔石は性質を変えます。元の魔物と同じ性質の魔力であれば抵抗無く無駄なく上手く注げるのですが、別物ならより強力な魔力が必要です。それに剣を作る材料としても必要な性質があるようです。
「剣はそもそも戦いのための物だ。
だから一つ目は攻撃的な性質の火。
それから二つ目は優秀な剣に仕上げる為には冷静さを持つ氷。
最後に三つ目はそれらを底上げできる補助。
この三種があれば完璧な剣を作る基本が出来る。だがそれぞれ優秀でないと完成度は変わる。魔石に魔法師、まぁ、お前達に揃えるのは無理だろう」
ナジブの話にエアハルトが私達の顔を一人ずつ確認しました。
「火魔法のネーポムク、氷魔法のパウラ、補助魔法のロータル……あれ?完璧じゃないか?」
「え?!」
エアハルトがそう言うとナジブが手にした魔石をうっかり落としそうになりました。
「ふんっ、貸してみろ。グリーベアは火の性質だったであろ」
ナジブから魔石を奪い取るとネーポムクがそこへ一気に魔力を注ぎ込みました。ギュンと眩い光を放つ魔石をナジブが瞬きみせずに見つめています。目が潰れますよ。
「これでどうだ。不足はあるまい」
ネーポムクの魔力が満タンに詰まった赤くで透き通った透明感のある魔石をナジブに投げ渡しました。
「あ……あぁ、完璧だ」
動揺しながらも魔石を確認したナジブが頷きました。
「ありがとうネーポムク!後は氷と補助用のだな」
エアハルトが嬉しそうに笑顔を見せました。
ナジブのところに来てから二ヶ月が経ちました。その間色々とありましたが今ではナジブの小屋の隣に私達用の小屋が建てられすっかり馴染んでいます。ちなみに小屋はオッサンが建てました。彼は口数がかなり少ないですがよく仕えるいい奴です。ただ食事を作るのはヘタなので私とパウラが皆の食事係です。
パウラは食事を作る以外は毎日訓練に明け暮れ今ではかなりの遣い手になりつつあります。きっとA級といっても遜色無いでしょう。
エアハルトも毎日の鍛錬をかかさず、毎日私と一緒に狩りに出て魔物を探しています。それは肉の為でもあり剣の材料集めの為でもあります。
氷の性質を持つ魔物はこの辺りには生息しておらず、最近では水の性質の魔物を探して狩っていますが良い魔石はなかなか出ません。小さ目から中位の魔石がかなり溜まってきましたから最悪はそれを使うことになりそうです。
ある日、数人の男達がナジブの小屋にやって来ました。
男達は前にもここへ来たことがあるらしく、ナジブを見てすぐに魔石を差し出しました。
「火の魔石と氷の魔石を持ってきた。これで剣を作ってくれ」
彼等は貴族らしくナジブは仕方無く面倒くさそうに魔石を確認しました。
「補助は無いのですか?」
「それは魔石の大きさから言えばかなり上等なものだから、補助などいらん。だいたい戦いにおいて補助はただの補助。戦いの主体は剣士で次が魔法師だ」
馬鹿の話はこれ以上聞く価値は無いと思いエアハルトと一緒に狩りへ向かいました。ナジブだってあんな奴の剣なんて作ったりしないでしょう。




