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真白と魅墨

 魅墨から聞いてしまった魅墨パパとの面談のせいで、午前中は全く何も身が入らず上の空のまま終わっていった。


 不安を抱えたままだと午後からも身が入らないと判断した俺は、真白をお昼に誘い情報収集に徹する事にした。


 隣同士なので机をくっつけ、向かいあいながらお弁当を開く。


 最近毎日のように入っている好物の卵焼きに少しだけテンションを上げたが、今は食べるのをグッと堪えて真白に質問をした。


「なあ、真白。魅墨の親父の事ってなにか知ってる?」


「なんですか、急に。まあ、知ってますよ。うーん、その、個性的なお父様でしたよ」


 俺の質問に対して、真白は考え込むように回答をする。


 その回答内容がなかなかに不安を掻き立てるもので、個性的という表現をポジティブに捉えていいものかわからない。


「その、どう個性的だったんだ?」


「え? そうですね。ザ・娘命パパさんと言いますか……。印象に残ってるのは、休日にたまたま魅墨とお父様にお会いして挨拶した時の事なんですけどね」


「うんうん、何かあったのか?」


「『娘と仲良くしてくれてありがとう。これからも良くしてやってほしい』と言われました」


「ん? それだけだと普通じゃないか?」


 思ったよりも普通すぎる魅墨の親父さんのエピソードに拍子抜けしてしまう。


 真白の言い方だと、なんかもっとはちゃめちゃなイメージがあったんだが。


 だがしかし、真白は待ったをかけるように俺の目の前に手をかざした。


「まだ続きがあります。私はもちろんですと答えると、満足そうに頷かれて。ニコニコ頷いていたと思ったら突然怖い顔になって『もし娘に近付く悪い虫が現れたらおじさんに教えてくれるかな? 会いたいからね』と言われました。あんな人殺ししそうな……、言い過ぎました。凶悪犯のような顔を見た事ありませんでしたよ」


 魅墨のお父さんの印象を、訂正してもまだ失礼な印象を抱いている真白。


 訂正するってことはできるだけオブラートに包んだ表現なんだろう。オブラートに包んで凶悪犯顔って相当魅墨の親父さんは恐ろしい顔で真白にお願いしたのだろう。


 魅墨に近付く悪い(おとこ)が現れたら会う(殺す)為に。


 思わず身震いをしてしまう。


 ……俺、間違いなく魅墨の親父さんに悪い虫認定されてないか?


「確か、空手の道場をしているみたいですね。だからあの眼光なのかと思ったら、凶悪犯と思ってしまったのは失礼かなと少し反省したものです」


 oh……。


 真白の補足情報に、心の中の俺がアメリカンなリアクションを取った。


 魅墨のとこは空手の道場を経営してるのか。ということは魅墨の親父さんが師範なのだろう。


 待って、俺、今日殺されない? 大丈夫?


 身の危険を感じて背筋が凍る。


 まだ見た事のない魅墨の親父さんが、範馬の親父さんをイメージしてしまうんですけど。


「そ、そうか。情報ありがとうな」


 魅墨の親父さんの情報を教えてもらえた事に対して、俺は真白に礼を述べる。


 知りたい情報だったし、知れて良かった。……でも、知りたくなかった。


 午後以降も、どうしようと悩むのが確定してしまった。


 魅墨の言い方が悪かったので、俺達はただの親友です。って言えばいいんだろうけど、聞く耳を持ってくれるのだろうか。


「はあ、お役に立てたのなら良かったのですけれども。しかし、どうして急に?」


「ん? ああ、魅墨が俺を親友だと親父さんに紹介したら是非会いたいと言われたみたいでな」


「成る程。まあ、魅墨の事が大変好きなだけで、蒼司さんが悪い虫じゃなければ大丈夫だと思いますよ」


 その悪い虫と思われてる可能性があるんですよね。


 真白が俺を哀れむような目でちょっぴりフォローを入れてくれたが、良くない印象は抱かれてしまってるだろう。


「……でも、蒼司さんはいいですね。親友って紹介してもらえて」


 不意に真白が羨ましげに呟いた。


 その表情は少しだけ憂いを帯びているようだ。


「どうした、急に」


「……私も、魅墨を友達と思ってたんですよ。なんなら付き合いの長さだけなら蒼司さんよりも長い。なのに、蒼司さんはあっという間に私を超えて」


「ああ、成る程な」


 真白はぽっと出の俺が魅墨と仲良くなってしまった事に嫉妬してしまってるのだろう。


 まあ、真白の方が付き合いが長いし。


 だが、魅墨からすれば真白は生徒会の仲間だ。本人にも真白の事を聞いた時友人ではなく生徒会の仲間と言ってたからな。


 なんだよ。魅墨、お前友達いないって言ってたのに仲の良さを嫉妬するような奴がいるじゃん。


 俺は悲しそうな表情をしている真白を見つめて、にやけてしまった。


 俺がにやけてしまっているのに気付いた真白が、少し不機嫌そうに頬を膨らませる。


「蒼司さん、何を笑ってるのですか? そんなに仲の良さで私に勝てたのが嬉しいんですか? いいですね、親友の人は」


「いや、お前らがすれ違ってるのがおかしくてな。魅墨に言ってみろ。私達も親友ですよね。ってさ」


「え? どういう事ですか?」


「そのまんまの意味だ」


 最初は魅墨の親父さんの事で恐怖していたが、真白の嫉妬が可愛らしくて思わず和んでしまった。


 ほんの少しだけ、まだ怖いと思ってるけど、少なくとも午後の授業を引っ張る事はないかもしれないな。


 真白は怪訝そうな顔で俺を見ていたが、俺はそれ以上は何も言わずに弁当の卵焼きを口に運んだ。



面白ければ

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よろしくお願いします


評価は下のスクロールしたところにありますので、面白ければぜひお願いします。


また、元作品になります。

よかったら読んでみてください

妹が兄を好きになってもいいと掲示板に書いてから、妹の様子がちょっとおかしいんだが

https://ncode.syosetu.com/n4803fl/

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