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源平活況物語  作者: 賀田 希道
大海の覇者
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はぁい♪ 人外代表ちゃんだよ!?

 空虚と表現するのが最も適している空間に影が一つ落ちていた。影は時折、ふわふわとゆらぎ、カタカタと笑い声をこぼした。その声は乾いており、心の底からのものでないことは素人耳にもすぐわかる。典型的な嘘つきの笑いだ。

 楽しいから笑うのではなく、ただそうした方がなんか超越者っぽいという下らない理由から笑うのだ、この某宇宙戦争映画に出てくる阿修羅将軍に似た仮面が半分崩れたような見た目の超越者は。


 「うん、うん。展開としては順調かな」

 軽快な物言い。この小世界の支配者である『悠久の人外代表』ナカ・トガは本来なら似合わない支配者の風格を必死で漂わせ、複数のディズプレイへと視線を向けていた。

 彼の見つめるディズプレイには数多の世界の時間軸で必死になる『人類』あるいは『人外』の姿が写っている。本来なら進むはずの時間を捻じ曲げる、という業を犯す彼らを見るのは一時の優越に……浸れるわけなどない。ありふれた下らない光景だ。


 「まったく……いくら投下しても運命の因果律に干渉し得る存在が生まれるのはごくわずか、か。随分前にあの『人間』二人をあの星に送ってからというもの歴史が変わることはない。あの二人のおかげで星の技術は改変された。

 ま、一方は星の極東を支配するにとどまったに過ぎないがね」


 『悠久の人外代表』であるナカ・トガは単純明快、時間そのものを支配する能力を持っている。だが、彼は時間をとめたり、加速させたり、退行させたりといったことはできない。彼が支配しているのは時間軸の現象そのものであり、例えば本来なら五年後に起こる地震を今起こしたり、あるいは起こり得ない現象をカットインのように挟み込むことができる。


 だが、そのためにも手順が必要となる。わかりやすく言えば、時間の基準点を予め用意する必要があるのだ。その時だけ、ナカ・トガ自身がその時間軸に降り立つ必要がある。彼はこの基準点から未来及び過去の事象を操作できる。

 そのため、彼は時間を止める必要も、加速する必要も、後退する必要もない。彼にとって未来も過去もない。すべて今なのだ。


 「うーん、夕霧君はちょいちょい頑張っているね。彼には茜ちゃんを就けているけど、果たしてあの世界でどれくらい長持ちするかな。最低でも『事象の早送り』くらいは起こしてもらわないとねぇ」


 「不可能である」

 突然、彼しかいない世界に慇懃無礼な声が響いた。凍りつくような下卑た声だ。例え神であっても肌の汗が氷に変わることは間違いない。だが、ナカ・トガは違う。彼は嘆息し、ディスプレイから視線を反らして声の主を睨んだ。


 それを表現するならば、氷像であろう。

 青白い氷で形作られた氷の女神像。彼女、と形容すればいいのだろうか、肌も髪の色もすべてが同色の彼女はニッコリと可愛らしい笑みを浮かべてコツンコツンと静謐な音を立てながら、ナカ・トガに近づいていった。


 しかし、彼女の歩みはわずか一歩で止まった。なぜなら、彼女の体が氷塵となったからだ。一瞬にして幾千のシュレッダーにかけられたかのように。

 「吾輩の用意した駒は強いのであるぞ?知略、精神力、野望。この三要素において貴君の用意した脆弱な駒よりも上を行っている。なぜならちゃーんと厳選しているのであるからな!」

 自慢げに彼女は胸を張る。ナカ・トガはその彼女の様子にこの疫病神め、と悪態づいた。


 「なんのようだ氷性器?この空間に入る許可を誰が与えた」

 「失礼である!これはパワハラである!吾輩がどこにいようと吾輩の自由、すなわちフリーダム!誰も吾輩をの自由奔放さを害すはできぬので、あー……」


 グシャリと彼女の頭上に自由の女神が降ってきた。

 「自由?自由ではなく、ただの勝手でしょ?挿入凍死女め」

 「であるからして!貴君を害すもまた吾輩の自由。貴君のげぇむで吾輩が勝利する!これすなわち、この我輩、『縦横無尽の人外代表』であるネイズラハットちゃんの……」


 突如、マグマによって完全に彼女の体は溶かされた。

・ブラックホールに飲み込まれた。 ・無限の怪物の地獄に落とされ、叩き壊された。 大悪魔の軍勢が体を小分けにした。 超新星爆発同士のぶつかり合いに巻き込まれた。 ・世界の最果て一歩手前に飛ばされ、存在性がすり潰された。 霊格をズタズタに引き裂かれた。 ・犯された。 ・超重力の星に叩きつけられ、体が耐えきれずに自壊した。 ・首から上が別の人間のものに代わって、頭部はなくなった。


 それから無限の無限の無限の破壊を味わった。


 「さて、貴君とこうして話し合えること嬉しく思うのである。世界の美少女、ネイズラハットちゃんはちょー満足しているのであるぞ?」

 「ゲロ袋。どうあってもジャマをするわけか?言っておくがこちらの手駒も負けてはいないのだよ。夕霧君も茜ちゃんも、負けちゃぁいない。ふふふ。ひょっとしたら悔しがるのは変態性器、君かもしれないよ?」

 「ようやくまともに話し始めたであるな。吾輩は嬉しい。なぜなら、ようやく貴君が吾輩を認めてくれたのであるからな」


 死ね、とナカ・トガは心の底でうめいた。

 彼女は絶対に死なない。いや、正確には死んでもまたその場に残るのだ。すべての存在性の支配者、それが彼が大嫌いな人外代表、『縦横無尽の人外代表』ことネイズラハットという少女である。



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