海賊の王 世界の王
荒れ狂う海を見て、このオレの小ささを感じずにはいられん。まさしく、大海原とはこの世界の真の支配者である。この広大さ、無情さ、底の見えなさ、器の大きさ、天上天下唯我独尊と語らんばかりに天と拮抗する強大さを前にすれば平安の京の貴族共の野心、野望、腹の中の虫のなんと小さいことよ!
惰弱極まりない!
その小さな野望、なんと矮小か!
オレは唐土へと行った。高麗へ行った。そして名も定かではない南蛮の国々へ行った。多様な国の言の葉、肌の色、珍品の数々はまさしく世界の広さそのものを示していた。果てなどなく、無限をオレに教えてくれた。
海は可能性を広げる。海は繋いでくれるのだ。オレと、異国を!
オレは自由だ。何ものにもオレを縛ることはできん。オレを縛らんとするものがあらば、それはこの海の覇者。京の天子様なんぞではない。
「いいか、お前ら!オレはこの海の海賊王にとどまるつもりはねぇ!そんなちっちぇーもんにとらわれるなぁ、海賊らしくねぇ、そうだろぉ!」
「ぉおぉぉおおおおお!!!首領!てぇことはいよいよ目指すんすかぁ?」
「ついにオレら海賊王の大旗揚げだぜぇ!」
居並ぶオレの子分どもは歓声をあげる。このオレの自慢の子分どもだ。屈強、そして最強だ!
「おうともよぉ!聞いた話じゃぁ都からオレらをぶっ潰そうと武士なんてのが来るらしいが、平らげちてしまえ!そんでもってオレらは都を取んぞぉ!」
「まじかぁ!さすがだぜ、首領!ついに都のクソどもにオレらの怖さってなぁ、教えられるってもんだ!」
「おうともさ、九州海賊の恐ろしさ思い知らせてやんぜ!」
血気盛んだな。だが、それくらいでちょうどいい。なんせ今回相手すんのは太宰府の奴らのもやし共じゃぁねぇ。あの平忠盛だ!
オレの……いや、そんなのはかんけーない。命知らず、世間知らずを叩き潰してやるぜ!
「だがぁ!その武士共は強ぇぇらしい。そこでだ。ちょっとオレに考えがある!」
「考えぇ?首領そりゃなんです!」
「へっ。敵の腹に一発強いのを見舞ってるだけのことよ。オレらがいつもやってるなぁ!」
それを聞き、子分どもの顔色が一気に残忍なそれへと変わった。獲物をみつけた凶暴な狩人のそれだ。オレの言いたいことを理解したっぽい。
「つぅわけだ!いくぞ、てめぇら!船出だぇ!
海賊の殺し方ってのを教えてやんのよ。海賊刈りの名手、平忠盛さんよぉ!
*




