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そう話していると、奥の扉から慌てた様子の侍従が飛び出してきた。会場を見回し、こちらの方へもの凄い勢いで駆けてくる。
「で、殿下っ! 急ぎお戻り下さいっ」
「ああ、もうばれてしまったのか・・・」
セブランは、さも嫌そうに顔を歪める。
「殿下、お願いですから・・・」
すでに泣きそうな侍従は必死だ。
「解かったよ、はあ~・・・」
どうやら侍従に無断で控室を出ていたらしい。
「陛下もお怒りですよ。急いで下さいっ!」
「はいはい」
背を押すように、奥の扉へと導く。
会場の一番奥には数段高い壇上があった。その場所に王族が座る椅子がいくつか置かれている。
どうやら先程セブランが出て行った扉から王族様方が登場し、あの場に座るのだろうと思われる。
「王子様って、意外と気さくなんだね」
花純の呑気な言葉に、皆が呆れた顔になる。
それに会場にいる招待客も花純に興味を惹かれたのか、こちらを窺い見る者が多くなった。
あんなに派手にセブランに構われたので、特別な人間だと思われてしまったようだ。
「・・・・・・カスミ、国王様の挨拶が終わればすぐに帰ろう」
カイトの言葉に、アルジネットが反抗するように目くじらを立てる。
「駄目よっ! カスミは今夜、我が家に泊まるのですから」
バチバチと、カイトとアルジネットの間に火花が飛び散る。
その時、ファンファーレのような音が鳴り響く。先程の侍従が奥に立ち、声を張り上げた。
「国王様御一行、ご登場にございます」
にこやかな壮年の男性が、女性の手を取り登場する。女性は王妃様だろうと思われる。
とても美しい人で花純は胸を高鳴らせた。
国王様たちを、招待客は拍手出迎える。
その後に、王子様方や王女様方も会場内へと入ってきた。
国が手を上げると、拍手が鳴り止んだ。
「我が主催の舞踏会に参加してくれて、とても嬉しく思う。今宵は存分に楽しんでくれ」
「「「「「恐悦至極にございます」」」」」
皆が国王の言葉に礼を取り、挨拶をした。
そして緩やかな音楽が流れて、王子様たちが会場へと降りてきた。
それぞれパートナーの手を取り、ダンスを踊るようだ。
一気に舞踏会らしくなって、花純は心が高揚してきた。
こんな体験、庶民の花純には二度とないだろうし、目に焼き付けておこうと思った。
煌びやかに着飾った淑女たち。男性の衣装もまた見応えがある。
花純は瞳を煌めかせながら、周りをきょろきょろと見回していた。
「カスミ嬢、私と踊って下さい」
花純が驚いたような表情で後ろを振り返ると、満面の笑顔で手を出すセブランが立っていた。
「え・・・・・・・・・?」
花純の周りの人間も、驚愕して声をかけることも出来ない。
王子自らダンスに誘うなんて、前代未聞だ。
普通は予め決められた相手と踊るのが、常識なのだから。
多分今夜のダンスの相手だろうご令嬢が、セブランの背後で身をわなわなと震わせている。
そんな貴族の常識も知らない花純は、おどおどとしながらもセブランに応える。
「で、殿下・・・・・・。その、私・・・ダンスは踊れません」
断る花純に、招待客たちが騒ぎ始める。
王子の誘いを断るなんてと、非難のこもった目を向ける者もいる。
「踊りたくない・・・じゃなくて、踊れないの?」
「・・・・・・・・・は、い」
その間も音楽は流れ続けているが、この場だけ無音のように感じるほど静かだ。
セブランは顎に指をおき、何かを考えている様子にも見える。
皆が固唾を飲んで、そんなセブランを見守っていた。王子の言葉を聞き逃さないように、聞き耳を立てる。
「踊りたくないのであれば、どうか踊って欲しい。僕が教えるから」
「え・・・、でも」
セブランは言い淀む花純の手を取り、中央へと導く。
「大丈夫だよ。君を馬鹿にする人間は、僕が排除するから」
どうやって排除するのか、ちょっと怖くて聞けない花純だった。
彼はそれが出来る立場だからだ。
確かにこの場では、花純を馬鹿にする者などいないだろう。でも後になって絶対何か言われる。セブランの耳が届かないところで・・・。
「落ち着いて、大丈夫だから。僕の呼吸に合わせて」
手の位置を教えてもらい、花純は泣きそうになりながらも一歩を踏み出した。




