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恋人捜しは騎士団で  作者: 如月美樹
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 翌朝、ゴードンはカイトを白い目で見ていた。

「昨日あれほど言ったのに・・・・・・そうな訳ね」

 花純に繋がれた手を凝視している。

 オレグもクリースも、それには苦笑していた。

 ゴードンの視線に気付いて花純は恥ずかしそうに手を離そうとするが、グッとカイトに逆に握り締められてそれも出来なかった。

「反対の方は僕ね」

 何故か左手も直哉に繋がれる。

 それを見て、ゴードンは大仰なため息を吐き出した。

「はあぁ~・・・、別にいいけどな」

 花純の鞄は部屋を一歩出たところで、カイトに奪い取られていた。

 だから手には何も持っていなかったのだが、果てしなく両手が重く感じる。

 そのまま学園へと向かい教室に着くと、アルジネット率いる女生徒が待ち構えていた。

 目の前に立ちはだかる女生徒達に、カイトは花純を守るように一歩前へ出た。

 威嚇するようなカイトの眼光に、さすがに勝気のアルジネットでも些か怯む。

 それでも腰に手を当て、胸を張った。

「カスミ・ノノミヤッ! 私、貴女のお友達なってあげてもよくってよっ」

 一瞬、教室内がしんと静まった。

 アルジネットの背後に控えているご令嬢たちも聞かされていなかったのか、驚愕している様子だ。

 言われた本人、花純は状況がよく把握出来ていない。

(友達? 今のもしかして、お友達申請しているの?)

「勘違いしてもらっては困る。君にカスミは相応しくない」

「・・・・・・っ」

 カイトの容赦ない言葉に、アルジネットはぐうっと喉を鳴らした。

「そ・・・それを決めるのは、貴方様じゃありませんわ・・・・・・」

 もの凄く音量が減った気弱な声で、何とかカイトの威嚇に応戦する。

 何だかその行為で、アルジネットが可愛く見えてしまった。小さな子犬がキャンキャン吠えているように、見えてしまったのだ。

「カイト君。まあまあ」

 一歩前に出ることによって手を離したカイトの背中を、花純はぽんぽんと叩いた。

「え~と、・・・・・・お名前なんでしたっけ?」

 何か言おうとしたけど、名前を聞いてなかったことを思い出した。向こうはこちらの名前を知っているようなので、何だか不公平のように感じる。

「カスミ。彼女はアルジネット・アルディナール伯爵令嬢だよ」

 クリースの言葉に、やはり貴族のご令嬢かと納得し頷いた。髪飾りも豪華だし、何より取り巻きの女生徒がいる時点で、高位の貴族だとは思っていた。

「あ~と、アルジネット・・・様? お友達申請していただけるのはとても嬉しいのだけど、その言い方はおかしいよ? ここは『お友達になって下さい』もしくは『お友達になりましょう?』でしょう?」

 命令形で言われては、対等なお友達にはなれない。

「そういう関係のお友達は・・・・・・足りていると思うけど?」

 花純はアルジネットの背後に立つ女生徒達をちらりと見た。

 彼女たちは花純のことを、もの凄い目で睨みつけていた。

 多分花純が、アルジネットの気を引いていることが面白くないのだろう。

 庶民が何を生意気なと、蔑むような瞳で花純を見ている者もいる。

「・・・お、友達に・・・なりましょう」

 少し屈辱を感じたのか、アルジネットはとても言い難そうだ。

「ええ、いいわ。よろしくね、アルちゃん」

「ア、アルちゃん・・・?」

 花純にとってはアルジネットという名はとても長く呼びにくいので、勝手に省略させていただいた。

「ま、いいわ・・・。次のお休みの日に、私と街へ出かけましょう。もちろん、カスミ、貴女と二人でよ」

「うん、いいよ」

 何とも気軽に花純が応えると、その場にいる皆が瞳を瞬かせる。

「お、お二人でですか? 私たちは・・・」

「貴女たちは今回は遠慮してちょうだい」

 アルジネットのあっけらかんとした言葉に、取り巻きの彼女たちも何も言えないようだ。

「じゃあ、また」

 アルジネットは取り巻きの女生徒を引き連れて、花純たちの前から去って行った。

「何だか凄いことになったね」

 彼女たちが離れた席に座るのを見ながら、クリースが口を開く。

 その声にかぶさるように、何も物事を深く考えないオレグが言葉を重ねる。

「友達が出来てよかったじゃないか」

「カスミ、でも・・・一人で行って大丈夫か?」

 ゴードンの心配も解かるけど、多分年下だろう女の子のことを恐れるのもどうかと思う。

「大丈夫だよ、多分」

「その『多分』が怖いな・・・」

 直哉も心配そうな声を出した。

 カイトは無言だ。ちょっと恐ろしいことを考えてそうで怖い。

 直哉は花純を心配しながらも、次の休みに暇が出来たことを少し喜んだ。

(家に戻って話す機会が出来たな・・・)

 花純に用事が出来たのなら、自分が側にいなくてもいいことになる。

 そんな機会そう多くはないだろうし、今がその時だと考えた。

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