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恋人捜しは騎士団で  作者: 如月美樹
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 きっぱりと言い切ったカイトを誰も止めることも出来ず、そのまま花純たちは食堂を後にした。

 その以後は難なく過ごし、寮へと帰った。

 皆それぞれ将来の夢に向かって、懸命に突き進んでいるようだ。

 そういうのを目の当たりにすると、花純は焦ってしまう。そして何の目標もないのに、学園に通っている事実に罪悪感が芽生える。

 普通の一般家庭の子供たちは、初等課に通うだけで学園は卒業するらしい。それでも親が学園を卒業している家庭は節約の為に、自分の子供たちに自ら読み書きとお金の計算を教えるだけで済ませるところもあるらしい。

 そう思うと、自分がただ単にこの世界に慣れるだけの為に学園に通うのはどうかと思い悩んでしまう。

 確かに生活していくだけ上で、必要な教養は限られている。特殊な教養など、余程専門の職ではない限り必要はないだろう。

 この世界は専門のお店も多い。スーパーマーケットのような総合的に何でも置いているお店は少ないのだ。

 だから学園へ通うより、親が将来自分の家の商売を継げるだけの教育を自らが行う。

 学園に長く通うのは、家にお金の余裕がある者が多いのだ。

 高等課になればさらにだ。初等課で教育の場を終える者がほとんどだ。その初等課でも、読み書きや足し算引き算などを終えれば卒業していく者も多いらしい。

 日本の教育の概念が、覆されるような話だ。

 人間にとって何が必要であるのか、何が必要でないのか。この世界にきて、考えさせられることが多い。

 ヴィートが言うように、お言葉に甘えて騎士団で働く方が賢明かと花純も思い始めていた。

 頼りにしているカイトも騎士団課に入るというし、花純が入団すれば将来は同じ職場で働ける。

 でももう少し・・・。もう少しでいいから、ようやく慣れたこの寮にいたい。

 花純は寝台の隅に腰をかけながら、そう思った。




 カイトの部屋の扉を叩く音が聞こえた。

「はい」

 声を発しながら扉を開けると、いつもの顔ぶれが勢ぞろいしていた。

「・・・・・・どうした?」

「お前に話があってきたんだよ」

 最初に口を開いたのはゴードンだった。

「中に入ってもいい?」

「・・・・・・ああ」

 クリースの窺う声に返事をすると、皆が遠慮もなくズカズカと入ってくる。

「昼間変だったから、理由を聞きにきたんだ」

 クリースが本当に心配そうに声をかけてきたので、カイトも諦めたように息を吐き出した。

「気になるところが多過ぎる。全部話せ」

 強引なゴードンの言葉に、カイトは寝台に腰かけながら重い口を開いた。

「俺はカスミに忠誠の誓いを立てただろ? だからカスミを手助け出来る立場にいる為に、騎士になることを選んだ」

 皆それぞれ何処かに腰かけ、カイトの話を聞いていた。

「すべてカスミの為か?」

「そうとも言い切れない。実は騎士団には入ろうかと、カスミに会う前から考えてはいた。俺は次男だし、兄は頭のいい人だから領地のことも任せられる。もし城に出仕することになっても、器用な人だから両方とも上手くこなすことが出来るだろうと思う」

 だから家では自分は必要ないのだと、暗に彼らに示した。

「前からアキラさんに声を掛けられていたものね。それで考えていたんだ?」

「・・・・・・ああ」

 ゴードンは、はぁ~と盛大なため息を吐き出す。

「家にはその話はしたのか?」

 カイトはその問いに、否定するように首を横に振った。

「家族は喜びはしても反対はしないと思う。文官で活躍する兄、そして違う方面で軍部に係わる俺。双方から攻めていけば、家にも有利になる」

「確かにな~」

 だが先の戦の犠牲者の数を考えれば、心配はするだろう。

「俺はカイトなら、そう言うと思ってた。カスミが騎士団長に勧誘されていたから、もうこれは決定だな~って」

 オレグの言葉に、皆が苦笑する。

「まあ、その話はもういいや。あともう一つ聞かせてくれ。カスミが便所に行った時・・・・・・何かあったか?」

 そのゴードンの言葉に何かを思い出したのか、カイトの眉が不快そうに歪められた。

「カスミが因縁をつけられていた」

「「「「・・・・・・・・・っ!」」」」

 皆がカイトの言葉に息を呑む。

「誰がっ? 誰がそんなことをっ」

 急に大声を発した直哉に、皆が怪訝な表情をする。

 その後、直哉は花純の後援者であることを思い出し皆が納得した。直哉は責任感が強い性格だ。花純がもし虐めに遭おうものなら、容赦なくその人間を叱責するだろう。

「カルディナール家の令嬢だ」

「ああ~・・・、あの我儘令嬢か」

 ゴードンの声に皆が頷く。

 その道で有名なご令嬢だった。

「伯爵家が相手だと・・・・・・ちょっと厄介だね」

「あの子、カイトのことが好きだからな。カスミのことをやっかんだんだろう」

 今初めて聞かされたアルジネット・カルディナール伯爵令嬢の想いに、カイトの方が驚愕する。

「お前が何も考えずに、カスミと手を繋いで歩いた結果だな。まあ・・・自業自得だ」

 ゴードンの言葉に、カイトは苦虫を噛み潰したような顔になる。

「まあ、それは皆で気をつけていれば回避出来るだろう。でもカスミも女友達が欲しいところだな。さすがに便所までは、俺たちも入れないしな」

「でも今日のお昼にヴィート様に声を掛けられていたから、皆気を遣うようになるんじゃないかな?」

 クリースはヴィートの姿を思い出し、そう口にした。

「確かにこの国の重鎮ドゥヴィリエ公爵家に逆らう者はいないだろうが・・・」

「少し様子を見ることにする。一応令嬢には俺が睨みを利かせて忠告はしたから」

「はあっ? お前・・・本当にそんなことしたのか? さぞかしアルジネット嬢も驚愕しただろうな。好きな相手に睨まれるなんて・・・俺なら立ち直れない」

「ドュヴィリエ公爵家、それに加えてヴェルビエ伯爵家を敵に回したら、この国ではやっていけないよ」

 クリースは可笑しそうに、くすくす笑いながらそう話す。

「そう言えばナオヤも昼の時、変だったよな?」

 順を追って訳を聞こうと気を使っていたのにこれでは台無しだと、ゴードンとクリースはお間抜けなオレグの声にガクッとなった。

 確かにそのことも聞こうとはしていた。だけど実直なカイトと違い、直哉は結構繊細な心の持ち主なのだ。やんわりと聞こうと思っていたのに・・・。

「ナオヤ、済まないな。でも気になるから、聞くぞ? ・・・何かあったか?」

「・・・・・・・・・」

 直哉は皆の顔を見て、そして最後にカイトに視線を合わせた。

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