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自分の父親を利用しろと言うヴィートを、花純は戸惑いながら見詰めた。
男の子たちも皆、驚いたような顔をしている。
「父は騎士団で働く君に様々な提案をすると思うが、すべて無視していい。来年くらには私も騎士団へ入団するから、それに合わせて君も入れば私が庇うことも可能だ」
何だかとんでもない話になってきた。
「父が直接勧誘してきたのだから、君の騎士団入団はほぼ決まりと言ってもいいだろう。少しだけ構ってやれば、父も納得するだろうし・・・。その後、騎士団を止めて世間へ出ればいい」
その話を聞いたカイトは、やはり自分は騎士団に入る運命なのだと感じた。次の試験で合格点を取れば、高等課は卒業し騎士課へ移った方がいいだろう。その為には友人たちが花純を守ってもらわなければならないが、その点は心配ないだろう。
ヴィートを見詰めながら、直哉もまた考えていた。
花純のことが好きだと自覚した今、自分も騎士団に入団したいという気持ちが湧き上がってくる。
同じように花純のことが好きなカイトは、すでに心を決めているだろう。
だが自分には、父の後を継ぐという使命感もある。あの店をどれほど父が愛しているか知っているから、なおさら見捨てることは出来ない。だけど・・・・・・。
「寮で毎日一度は顔を合わせるだろうから、その時に何か困ったことはないか質問しよう」
何だか堅い人だなと感じた。
でも父を利用しろという悪どい面もあって、結構面白そうな人だ。
味方にしたら頼もしいタイプのようだ。
「解かりました。ありがとうございます」
いつの間にか、ヴィートのトレーの中はすべて空だった。あんなに話していたのに、いつの間に食べてしまったのかもの凄く不思議だ。
ヴィートはトレーを持ち席を立った。
「では、また」
花純は笑顔で頭を下げて、彼を見送った。彼が向かった先は、いつのも友人たちのところ。
先程の男性が花純の視線に気付き、また笑顔で手を振ってくれた。
その様子を男の子たちは見ていて、ヴィートの姿が食堂から見えなくなってからようやく話し始めた。
「なんか凄いことになってきたね」
「カスミの騎士団入りは確実だな」
ゴートンの言葉に、花純は苦笑する。
「カスミは何か夢とかないのか?」
無邪気に問うオレグを見て、花純は首を捻る。
「一応大学には通っていたけど、とりあえずっていう感が強かったかな? 徐々に決めようとは思っていたけど・・・」
この世界でそれをすれば、顰蹙を買いそうだ。
この世界の人は成人する年齢が低い為か、それともそういった意識が高い為か。割と早い段階で将来を決めるようだ。その夢に向かって努力し、学園へと通う。
夢か・・・。
元の世界へ帰ることが出来ないのであれば、自分も何をするか何を出来るか真剣に考えないと。
国が面倒を見てくれる時間は限られているのだ。
「そう言えば皆は何か夢があるの?」
花純の言葉に、オレグが一番初めに口を開く。
「俺の家は建築関係。材木や資材の卸、あと家を建てることもある。総合的なことをしているかな? 俺は長男だから、家を継ぐことになると思う」
何と先程の令嬢たちが言ったように、オレグの家は豪商のようだ。
だったらクリースもなのか?
花純がクリースに視線を移すと、にこりと笑み口を開く。
「俺も一応長男だから、家を継ぐと思う。俺の家は宝石を扱う店を各地に開いている。宝石を捜す作業から加工。流行に合わなくなったものの形を変えるといったこともしているよ」
宝石商。しかも全国に店舗を持つほどの。
「ゴードンのところは?」
「俺も一応長男。伯爵家を継ぐと思う」
それは領地での仕事だったり、もしくは家臣として城で政務をするということか。
「直哉君も家を継ぐの?」
返事が返ってこない直哉を不審に思い花純が見ると、直哉は何か考え込んでいるようだった。
「・・・・・・直哉君?」
「あ? あ・・・何だっけ?」
「お前も家の後を継ぐのかって話してたんだよ」
ゴードンの言葉に直哉はしばし時が止まったように、虚ろな瞳で空を見詰めた。
皆が直哉の異変に気付いた。
「どうした? 何かあったか?」
普段こんなことはない彼に、皆が心配するような顔を向ける。
「ん・・・、何でもない」
はっきり言って、とても何でもないようには見えなかった。でも直哉本人が何でもないと言い張るのだから、それ以上の追及はしなかった。
「カイトは?」
クリースの質問に、カイトは花純を見る。
この男の子たちの中では、カイトが一番身軽かもしれない。伯爵家の出身とはいえ次男だし、比較的自由に過ごしてきた。古くから続く家系だし、学園を卒業すればそうは言ってられない立場だろうが。
だが今の自分の夢を家族に話しても、さほど反対はされないだろう。
「俺は騎士団に入団する」
きっぱりと言い切ったカイトに、直哉以外の皆が驚愕した。




