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教室で待っていた直哉たちと合流し、花純は学園内にある食堂へと向かった。
混んではいたが、タイミングよく席が空きすんなり座れた。
「カスミ、遅かったね」
クリースが席に座るなり、そう声をかけてきた。
「うん、ごめんね。お手洗い混んでて・・・」
「そっか」
皆はそれ以上突っ込んでは聞かなかったけど、カイトだけは何か言いたそうな顔で花純を見ていた。
そんなカイトの様子は、男の子たちは長い付き合いなので気付いていた。
何かあった。そう確信していたが、花純が隠そうとしていることにも気付いていたので後で花純がいない場でカイトに問い質すことにした。
和やかに話しながらの食事が始まる頃、一人の男性が花純の目の前に立った。
「失礼。君がカスミ・ノノミヤで間違いはないか?」
花純は背の高い、もの凄く男前の男性を見上げた。
そして気付く。
(この人・・・・・・前に見かけたことがある)
確か同じ第三寮の生徒だ。確か騎士課だったはず。
「はい、そうです」
彼も食事の乗ったトレーを持っていた。
「一緒に食事をしても構わないか?」
花純は男の子たちの顔を見る。
「構わないですよ、ヴィート様。こちらにどうぞ」
ゴードンが自分の隣の席に誘う。
彼が徐に食事を始めたので、花純たちも一緒に食べた。
いつも彼と一緒にいる人たちは、何処に行ったのだろう? と花純が顔を巡らせると、一人の男性と目が合う。
花純の視線に気付いて彼は微笑みを浮かべ、手を振ってくれた。その彼の周りにいつものヴィートの連れがいるようだ。
「珍しいですね。ヴィート様」
直哉がヴィートを見ながら、警戒するような視線を向けた。
直哉がこんな顔をするのだから、目の前の男前はもしかして性格が悪いのか?
花純を名指しで近付く意味も解からない。
先程の女の子たちの虐めが蘇る。
別にあれくらいでは落ち込まないけど、気にはなる。
何度も同じことをされるとはっきり言ってうっとうしいし、対処するのも面倒くさい。
彼は自分より年上みたいだし、貴族でもあるし・・・。
そんな態度を取られると、どうすればいいのだろうか?
少しだけカイトの方を見たが、彼も直哉と同じようにヴィートに警戒心を抱いているようだった。
「カスミに何か用だったんですか?」
場の空気を読まないオレグが直球を投げた。
「カスミ、私はヴィート・ドゥヴィリエという。この国の騎士団長の息子だと言えば解かるか?」
騎士団長の息子? 先日会った騎士団長の息子さんか・・・と、花純は納得して首を縦に振った。
「はい。先日街でお会いしました」
ヴィートも頷いて、さらに言葉を重ねる。
「実は父から手紙が届いた。君が落ち人なので気を使ってあげろと・・・。父と何か話したのか?」
花純はどう話していいのか少しだけ躊躇った。
あの時はレウォンは冗談を言っただけのはず・・・。
「団長と副団長、それに明さんがいたんですよ。それで花純が騎士団で働くことが出来るようにしてもいいと言ってくれました」
「父が、そう言ったのか?」
「はい」
花純の代わりに、直哉が応えてくれる。
「だが君は高等課に通うのだろう?」
「はい。まだこの世界のことはあまり解からないので、もう少し慣れてから世間に出ようかと・・・」
花純が不安そうにそう告げると、彼はじっと見詰めてきた。
「確かに君はこの世界にきたばかりで、何も解からなく不安だろうな」
身寄りもなく、財産もない。そんな状態で外に出されては、たちまち路頭に迷ってしまうだろう。
「父が君を勧誘したということは何か裏があると考えていい」
実の息子が、そんなことを言ってしまっていいのか? と、花純は瞳を瞬かせた。
「あっ! そう言えばあの時、騎士団長花純に結婚の申し込みをしたよね?」
クリースの言葉に、ヴィートがカトラリーを落とす。もの凄く驚いた顔でクリースに視線を向け、そしてその後花純を見た。
「・・・・・・・・・本当か?」
「あ、あれは・・・・・・冗談で」
「いや、あれはマジだったよ・・・花純」
「・・・・・・・・・」
直哉の言葉に、花純もヴィートも声が詰まってしまった。
「そうそう、それで副団長が『貴方は一度結婚したのだから遠慮しろ』みたいなこと言ってたよな?」
オレグの言葉に、ヴィートは手をぎゅっと握り締める。
「騎士とお見合いをしろとも言った」
ぼそりとカイトが呟いて、ヴィートはもう堪らないという感じで花純に頭を下げた。
「我が父が・・・・・・申し訳ない」
「い、いいえ~。大丈夫ですから」
花純は焦って、両手を必死に振る。
「何か私に出来ることがあれば、何でも言ってくれ」
「・・・・・・本当に何とも思っていないので、大丈夫ですよ?」
花純の気遣う言葉に顔を上げたヴィートは笑みを浮かべた。
珍しいヴィートの笑みに、食堂にいた生徒たちの視線が集まる。
普段は堅い表情が通常のヴィートだ。彼の笑みなど見たこともない生徒は多い。
直哉とカイトはそれを見て、眉間に皺を寄せた。
「カスミ、高等課を卒業してもし不安なのなら、父を利用しろ」
「え・・・・・・?」
ヴィートの言葉の意図が解からなくて、花純は首をこてりと傾げた。
「父が騎士団に就職しろと勧めたということは、後ろ盾になる気でいるはずだ。一年ほど我慢して働き、金を貯めてから外に出ても遅くはない。恋人を騎士団で捜せと言われるだろうが、そんなことは無視していればいい。好みの男がいないとでも言えば、逃れられるだろう」
何だか悪知恵を吹き込まれている? もしかして・・・。
花純と一緒にいた男の子たちも、ヴィートの言葉に呆気に取られている様子だ。
「それよりも騎士団で働いたという実績の方が大事だ。外で働くにしても、家を借りるにしてもその実績があれば事は運びやすい」
驚愕している花純たちを置いてけぼりにして、ヴィートはさらに話を進めた。
「大いに父を利用しろ。カスミ」
「・・・・・・・・・」
何と返事をしていいのやら、花純は大いに迷った。




