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恋人捜しは騎士団で  作者: 如月美樹
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 週に一度の学園のお休みの日。花純は直哉に連れられて、街に出ることになった。

 普段着などあまり持っていない花純は、お洒落なども出来るはずもなく・・・。泣く泣くその内の一枚を身に纏った。

 自分が貰ったお金で服を買うことは出来るだろうか? でもまずは化粧品だ。学園に居る間は制服もあるし、そう困りはしない。でも基礎化粧品だけは別だ。

 まだ女の友達もいないし、そういったところを聞ける相手もいない。ちょっと不安な花純だった。

 こればかりは直哉でも返答に困るだろう。

「花純さん」

 自室の扉が叩かれる。直哉のお出迎えだ。

 もう一度鏡で確認してから、財布代わりの巾着袋を持って外へと出た。

 てっきり直哉だけと思っていたのだけど、他の友人四人も一緒でちょっと驚いてしまった。

「あ、皆も行くの?」

 直哉の友人たちは気さくな性格で、花純はすぐに打ち解けることが出来た。この中では直哉が一番優等生タイプだ。

 直哉と行動を共にすることが一番多いのがカイトだ。カイトは必要時以外滅多に言葉を発しない寡黙な男の子らしい。でも花純には何故か言葉をかけることが多いし、何かと気にかけてくれる優しい男の子だ。十六歳で、花純より二つ年下。

 この仲のいい男の子たちの中で一番年上なのがゴードン。自分が一番年上だって自覚しているからか、ちょっと仕切り屋さんだ。長男だって言ってたから、この性格はそこから来ているのかもしれない。歳は十八歳。花純と同級だろう。

 オレグはやんちゃって言葉が一番似合うタイプ。一番落ち着きがない。でもそれが彼らしいとも言える。十五歳に落ち着きを求めるのもどうかと思うけど、この中では一番子供っぽい。この世界の人たちの成長は早いから、こういう子を見ると花純は反対に安心する。

 最後にクリース。この子も子供っぽいけど、落ち着きはオレグよりある。下に妹がいるって言ってたらか、お兄ちゃん風だ。でも拗ねると口を尖らせるところが可愛らしい。本人はそれに気付いてはいない様子だけど。オレグと同じ歳で十五歳だ。

 そう考えれば十三歳の直哉はかなり大人に見える。背も高いし。両親とも背が高いって言っていたので、まだ背は伸びるよと嬉しそうに話していた。

「せっかくカスミさんとお出かけ出来る機会があるのに、行かない手はないだろう」

 ゴードンがはにかみながらそう言う。

「カスミさん、逸れたら駄目だから手を繋ごう」

 何処までも過保護なカイトに手を差し出される。

 微妙な顔で花純はカイトを見上げた。

 カイトは本気で花純が迷子になると思っているらしい。

「カイト、まだ寮内なんだから手を繋ぐのは早いよ」

「カスミさんは、まだ自分の部屋から一歩も出ていないしね」

 そう言えば扉を挟んで話しているから、自分は一歩も出ていないことになる。

「しかしカイトがこんなことになるなんて・・・めちゃ意外に思うよ」

 直哉は結構日本人のお父さんの影響があるのか、現代日本にも通じる言葉を普通に話す。仲のいい彼ら四人は、こんな直哉は普通なのか突っ込みも入れてないけど・・・。何となく意味は解かっているのかな?

「でも寮内でも安心出来ない。ベイツみたいなのがいるし・・・」

 一歩自室から出た花純の手を、カイトは握ってきた。

 身体が大きいし、兄がいる花純だからこんな感じのスキンシップには慣れているので何の違和感もなく受け入れてしまう。

「巾着袋持ってなかったら、反対の手に俺も繋がりたいよ・・・」

「繋ぐとしたら直哉が先だろうけどな」

 オレグの言葉を、ゴードンが一刀両断にした。

「・・・・・・それは言わないでよ」

「交代で繋げばいいじゃん」

「・・・・・・馬鹿か、俺がそれを許すか」

 カイトの凄みのある声に、三人は仰け反る。

「しかしこんなカイトがいたなんて、俺・・・知らなかったよ」

「もう何年も付き合った仲だけど、初めて見るよね」

 そうなんだ。花純にとってはこれが普通のカイトの姿なので、皆が言う彼の方が変に感じる。

「いつまでもうだうだ話してんなよっ! もう行くぞ」

 直哉の号令で皆と一緒に街へと繰り出した。


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