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門番に外出許可証を見せると、すんなり外へと出られた。
「門限までには帰って下さいね」
そう告げられて、にこやかに手を振られた。
花純の手は相変わらずカイトに拘束されたままだ。
「花純さんは初めての外出だし、城までにしようか」
直哉がそう提案すると、皆が了承したように頷く。
城は目の前に迫るように見えるけど、結構遠いのだろうと思う。
「城までなら乗合馬車に乗るまでもないな」
「一日あるし、休みながらゆっくり歩こうか」
「カスミさん、見たい店があれば俺の手を引いてくれ」
カイトが繋いでいる手を花純の目の高さまで上げて、そう言ってくれた。
「うん」
「じゃあ、行こう」
直接お金の入った巾着袋を持っていた花純だったが、そんなことをしていたらスリに奪い取られてしまうと皆が言うので、直哉の鞄に入れて貰うことにした。
花純はお出かけ用の鞄は持っていない。手元にあるのは学校指定の鞄と、役所で貰った支給品のトランクだけだ。
やっぱり女の子らしい小さな鞄も欲しい。でもそんなに自分のものを貰ったお金で買うのは気が引けるので、大事に使おうと心に決めた。
鞄はまた今度だ。化粧品も服も今回は諦める。男のたちばかりの中で、女の子用品を買う訳にはいかない。一人で外出するようになってから買おうと思った。
それまで、花純のお肌が痛まないことを祈ろうと思う。
だから今日は純粋に街をお散歩するだけのつもりだ。
今日はお昼も外で食べようと皆が誘ってくれたので、それもちょっと楽しみだ。
街の中心街に入ると、人が溢れるほど犇めきあっていた。確かにこれでは花純が迷子になると思うのも頷ける。
花純は思わずカイトの手をぎゅっと握り直した。
するとカイトが花純に視線を向ける。
花純が引き攣った愛想笑いを浮かべると、カイトは花が綻ぶような満面の笑顔を返してくれた。
(うわ・・・・・・、恰好いい)
爽やかイケメン風だ。体格もいいし、背も高いし、それにとても優しいし。
年下だけど、お兄ちゃんって呼びたくなる。
「不安か? 俺の手を離さなければ、ちゃんと守るから」
「・・・うん」
やっぱりお兄ちゃんだ。
「カイトが変だ・・・」
「過保護過ぎる・・・」
「カスミさんは年上なんだぞ。守るって・・・」
皆が呆れた声を出すが、カイトは気にしていない様子だ。
「皆は普段、何処に行くの?」
花純の質問に、何故か皆が黙り込む。もしかして女の子には、打ち明けにくい場所だろうか?
お姉さんに聞かせてご覧? って言いたくなる。このくらいの歳の男の子って何に興味があるのか知りたくなる。
「日本語とダコタ語の比較した表があるでしょう。だからそれを読む為に、子供用の絵本なんかどうかな?」
直哉の話を逸らそうとする心が解かり、一瞬皆がまた黙り込む。
「ダコタ語ね。私の世界で言うローマ語って言うものと同じ原理なんだよね。文字は暗記するだけだから覚えるのは早いと思うよ」
実は自室ですでに半分覚えたところだ。もう半分も頑張って暗記するつもり。だけど、文字を実際書くとなるとまた別だ。読むのは比較的簡単に出来ると思う。
花純が目の前のお店の看板を指差して発音すると、皆が驚いたような顔になる。
「うわ・・・、カスミさんって頭がいいんだね」
「落ち人は教養があるって言う噂は、本当だったんだな・・・」
感心されて少し恥ずかしくなった。覚えたての文字を子供が披露して、褒められた感じに似ている。
「凄いね、カスミさん。文字を覚えた記念に何か買ってあげよう」
カイトはすでにお兄さんというより、これでは親戚のおじさんだ。それか可愛い孫に物を与えたがる、おじいちゃんである。
「い、いいよ別に・・・。い、いらない」
何だかあんまり猫可愛がりされると、気恥かしいから止めて欲しい。
「花純さん、物はないよりあった方がいいよ。僕も何かプレゼントしようか・・・」
「そうだな。ダコタ王国へきてくれて、ありがとうってことで」
「受け取ってよ、俺たちの気持ちを」
皆からそう言われて、断り辛くなってしまった。
「・・・・・・あんまり高いものは、やめてね?」
「解かってるよ」
皆の気持ちは嬉しいし、それにあまり物を持っていない花純には有り難い申し出なのは確かなので、受け取ることにした。
「・・・ありがとう」
はにかんだように花純が笑うと、皆も笑顔を返してくれた。




