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第二部 体育館裏①


文化祭2日目。


由佳は体育館裏にある段差に一人座っていた。ここは文化祭の展示物が何もないし、用のある人は誰もいないはずだ。今日は、一人になりたかった。


今日の朝は、これまでの中で一番遅く家を出たため遅刻ギリギリだった。

学校に行くのが憂鬱だった。昨日、あんなことが起こってしまうなんて。何もかも、予想していなかった。


「おーい泰…ってあれ?由佳ちゃん?」


声がした方を振り向くと、体育館の入り口へ続く角に同じクラスの戸田くんが立っていた。そう、夏のあの日、戸田君にばったり会った場所。


「い、いや、朝のHR終わってから泰樹すぐ消えちまったからどこ消えたんかなって思って…ここならいるんじゃないかな?なーんて思って…」


戸田君が珍しく慌てている。別に疑ってるわけじゃないしそもそも何も言ってないのに。由佳は思わずくすっと笑ってしまった。


「あー、笑うことないじゃん…」


「ごめんって、ごめん…ふふっ」


由佳は笑いをこらえきれず、普通に笑ってしまった。なんかよくわからないけど、少しだけ気持ちが楽になった。


「まあまあ、せっかく来たんだし隣座れば?」


由佳は右隣のコンクリートをパンパンと叩いた。とりあえず誰かに話したら、この気持ち、もっと楽になる気がする。

戸田は最初「これ行っていいのか…今までの行動と矛盾しないか…」などよく分からないことを頭を抱えながらぶつぶつ言っていたが、最終的には由佳の右隣に座った。


「で、なんで由佳ちゃんはここにいるの?」


「もう、『ちゃん』づけはよそよそしいからやめて。由佳って呼んで戸田君」


「じゃあその君付けもやめてくれ。言われ慣れてないからなんかムズムズする」


「おーけー」


由佳が右手でOKサインを作る。


「若干話逸らされた気がするんだが…」


「ははっ、あたりー」


由佳は戸田に笑顔を見せる。由佳は、久しぶりに作った満面の笑顔が変になっていないか少し心配だった。


「昨日さ、廊下で誰か追いかけてなかった?」


由佳の仮面が一瞬ではがされる。肩の力が抜け、張っていた気が緩む。はあ、やっぱり見られていたのか。

一方で戸田は、一瞬で笑顔が消えた由佳を見て戸惑っているようだった。


「見られてたんだね」


戸田は黙ったままこちらを見ている。その顔はとても困惑していた。


「全部話そうか、昨日のこと」


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なかなか追いつけない。

人混みのせいなのかもしれないが、先を走る早智子になかなか追いつけずにいた。人混みがなければすぐ追いつけるのに…。

人ごみをかき分けて走る中、由佳は今までの状況を頭の中で必死に整理していた。今までに分かっている断片的な情報は3つ。


・泰樹と早智子は知り合いだった

・早智子は元々この近辺に住んでいた

・泰樹と早智子は付き合っていた


まあ、とりあえず挙げてみたが、この3つをただ単につなぎ合わせるだけで簡単な結論には行き着く。ただ、分かった結論以外にもっと知りたいことはたくさんあった。


そんなこんな考えていると、疲れたのか校門直前で早智子が膝に手をついて止まった。やっと追いついた…。


「はぁ…早智子…どうしたの…」


息は整っていなかったが、とりあえず聞かなければまた逃げられると思い、由佳は無理やり言葉を紡ぎだした。


「…」


早智子は黙ったまま答えない。


「ねぇ、早智子!」


「…」


早智子は息を整えると、今度は下を向いたまま黙り込む。


「もしかして泰樹と…」


「私、泰樹のことが好きだった」


ずっと黙っていた早智子が急に話し始めた。しかも、「泰樹のことが好きだった」って…


「泰樹のこと、知ってるみたいだから全部話すね」


知りたくない。でも、心の底では知りたがっている自分がいた。


「私、中学の時、泰樹と付き合ってた」


…。


「いろいろあって別れちゃったけど、まだ、好きなんだよね。泰樹のこと」


…。


「それを伝えに今回は…」


「なんで」


由佳は話の途中で思わず口をはさんでしまった。聞きたいことはたくさんある。


「なんで、別れちゃったの」


早智子が顔を上げて由佳を見る。その顔は、どこか悲しい顔をしていた。


「いろいろだよ、いろいろ」


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