天宮
複数の知性体が現われるのは完全に想定外だ。
動きから判断すると1体が囮、もう1体が尾行で最後が狩人というところだろうか?
リンク16走査がデコイ、リンク161βがチェイサーとなると、動いてないのがハンターなんだろうか?攻撃方法が読めないが、まさかDDOS攻撃ということもないだろう。
何らかのリモートコントール武器の存在を疑った方がいい。
それにしても綺麗な連携だ。
おそらくこの3体は同型機なんだろう。
いったいどこの国がこの3体を作り教育したのか?
もし量産されたらと思うとなんとしても手掛かりを掴む必要がある。
「リンク161β変調コードマニュアルに変更、最初はエリーゼのために」
マニュアル操作では曲を指定して音符で時間を音階で使用暗号化プロテクトを変更する。曲名を次々に言っていけば変調コードを次々に変えてくれる。
「英雄……くるみ割り人形……歓喜」
適当に時間をおきながら曲を変えていく。
「美しきドナウ……剣の舞」
そこでチックから連絡が入ってきた。
「高橋、変です。リンク161βを解析していたUIが……なんというか分裂しているような挙動を示しています。」
「分裂? もう一体出てきたのか?」
「そうではないのです。新たに出てきたというわけでなく、音階用と持続時間用にそれぞれ触手を分けてきたような感じでしょうか? 大本は一つでそれぞれ自立するハードがいて独自で判断しているという感じです。」
「それってAIの統合操作ということか? どこかもう完成していたのか?」
AIの統合はチックとアリスで目指している新技術である。それが完成していたとすれば大きな問題である。
「……いいえ、AIの統合操作ではないようです? なんといえばいいのかよくわからないのですが、あくまで一つのハードで、人間でいうなら右脳と左脳が別々に物事を考えているような感じで作動しているようです」
「並列処理ならプログラムだろう? 別におかしくはないが」
「それにしてはハードの処理能力が落ちてないんです。今も平気でついてきてます。」
「フィガロの結婚に変えて……ということは最初はフルスペックで分析してなかったのかな?」
「それにしてはリンク16は現在も反応速度が変わりありません。余剰ソースを持たせる設計というのは考えにくいのですが?」
「まあ、ハードの無駄だよな」
それにそれだと最初に3つに分かれたいる意味が分からない。
「まさかプログラムでCPUにスレッド作ったのか?」
集積回路のCPUならそれも考えられるが、現代の思考ユニットのCPUだと使用するオンボードコンピュータの総数を分けるようなもので処理が遅れるはず……それも当てはまらないか?
「一つだけ現状ではっきりしているのは、敵UIは超高空に存在しているだろうことですね」
チックが処理の合間を縫って報告してくる。
「プリマヴェーラに変更 超高空?」
「今もですがVHFの切り替えにタイムラグなしで反応してますので、VHFが受信できるところに本体があると思われます。」
「まて、エイ型飛行母艦のレーダーに反応はないぞ。」
飛行母艦は高度20000mからルックダウンレーダーで常時広範囲を照射している。
「ええ、ですのでエイ型飛行母艦より高高度と思われます。」
「……それって」
「人工衛星かと」
高性能人工知能を複数詰めそうな出力と大きさの人工衛星、それって宇宙ステーションクラスじゃないだろうか?
「もしかして……」
「該当しそうな人工衛星は中国の天宮のみです。」
やっぱりか、しかし、それなら大量のドローンの操作に使われるとマズイが……衛星の重さから考えると低軌道か、だとすれば周回軌道になるから、ドローンの操作は難しいか。
まだ試作品なのだろう。運よく見つけた感じだ。
「それにしても、不思議な挙動をする人工知能だな? お正月に変更」
俺の指示に対し、チックの返答が一瞬負荷で遅れた。
「それが人工知能ではないかもしれません?」
「人工知能じゃない?」
とてもじゃないが人がどうこうできるレベルの操作じゃないぞ。
3人でAIを操作してるってことだろうか?




