戦士の帰還
かもめに到着したときには安堵感で膝がくだけそうになっていた。
US-3がいくら優秀といっても、レーダー搭載ヘリコプターに探知されJ-15に攻撃されればひとたまりもない。
実用上昇高度が10000m以上あるとはいえ、ヘリを避けて高高度に上がれば地上レーダーで見つかる。
おかげで超低空で飛ぶUS-3の見張り役に足長蜂が先に飛んでアクティブ探査をするはめになった。
4番艦「かぶと」の重要性が身に染みてわかった。早く配置しないと。
PA隊が乗艦後、甲板に着陸する。
着艦すると直ぐにウサギを抱いた少女が艦橋の方から走ってくるのが見えた。
その姿を見たときに再び腹の底に怒りが湧いてくるのがわかった。
作戦中止の命令を聞いたとき一方的な身勝手さに対する政府に対する怒りそれに逆らえない自分の無力さへの怒りが同時に湧いてきたが、戦闘中で部下への安全確保のために頭を回した結果、怒りは去った。
その後に来たのは後ろ盾を持たない自分たちに対して国が取りうる制裁とその結果を予想しての恐怖。そして前線兵士としての訓練の結果の恐怖の抑え込みによる諦念だった。
それが彼女の姿を目の前にして、再び政府の我儘を、彼女が必死で食い止めたという健気さとに対する感動と同時に政府への怒りが再発したのである。
足長蜂から降りたターキー01の手前10mでウサギは彼女の腕から飛び出すとダッシュ&ジャンプでターキー01の頭上に飛び乗りメインカメラのレンズを舐めだした。
おかげで周りが見えにくい・・・
「すみません高橋、アリスも興奮しているようで、端末が・・・」
「端末?このウサギがか?」
「ええ、二足歩行の制御よりは楽な四足歩行で情報収集用によく見かける生き物のに偽装させたんですが、何か問題でも?」
「・・・まあ、いい、コクピットを開けたいからハンガーに行きたい。指示してくれ。」
チックの指示に従い、ハンガーに向かったがウサギの門歯って二本に見えるけど実は数本の細い歯の集合体だとか、どうでもいい内容が詳しくなる画像が、メインフレームに映っていたおかげで、繊細な挙動は取れず「感動の再会」とかいう雰囲気はどっかに消えて、うららと二人APで並んで静かに歩いていくという、なんとも気まずい時間を味わせてもらった。
ハンガーでようやくターキー01から降りた俺は抱き着いてきたうららに、反射的に高い高いをしていた。
「そこはハグじゃないの?」
「さすがに半日以上あの中にいたんだ、汗臭くて・・・抱きしめるならシャワーの後にさせてくれ。」
「…別に気にならないのに?あたしも兵士よ。」
「単なる俺の我儘」
「じゃあ、とっととシャワー浴びてくる!」
そういいながら、空中の彼女の小さい足が俺の頭を軽く蹴った。
この間をずっと兎はメインカメラを舐めながら観察していた。
「うらら、ちょっと待ってて」
彼女をパイプ椅子の上に置くと、小走りでシャワールームに飛び込む。
普段のトレーニングや整備でも使うから更衣室の専用ロッカーの中には着替え一式が放り込んである。
シャワーを浴びてボディーソープで汗と垢を流し、シャンプーしながら鼻唄を歌っていると、シャワールームの扉が開く音がした。
「第1分隊、整列!ノーブ01から06まで入浴、07から11は更衣室で待機。順次交代する。」
響く声は鈴木曹長の声だ・・・01ってかのは・・・まあ、前線部隊で裸を見られた程度は気にしてたら生き残れないか。
でも、ここって仕切りのあるシャワーが6本なんだよな?
6人だと一人あまるはずだが?
「失礼します!高橋副隊長。お背中お流しします。」
「うわぉ・・って恵美さん‥積極的ですね・・・」
「隊長と副隊長にはご苦労かけたようですので、せめてこれくらいはさせてください」
彼女の声には感謝の気持ちが現われていた。
俺がシャンプーで目が開けられないのもあって、いつの間にか背中を洗われている。
横の分隊員もヒューヒュー言いながら囃子立てる。
彼女が「こっち見るな!」と怒鳴ると「イエス、マム!」と勢ぞろいした声が返ってきた。
変な雰囲気にならないのはいいが、恥ずかしいことこの上ない。
「鈴木曹長、ノーブ隊は男女比どれくらいだ。」
「私の友人も勧誘してきましたので男性7人、女性4人です。」
「ハークの方は三浦曹長以下男性だけだったよな?」
「それが普通ですね。APの方は腕力が必要ですから、PAになって女性でも楽に動かせますから、その辺のデータ収集も進めてます。」
「ただPAは値段が張るからな。戦車よりは安いけど・・・」
「APを全部交換は無理でしょうが、特殊任務部隊用途で使えないか検討してます。」
そのあたりで背中を洗い終わったらしく、冗談で「前も洗いましょうか?」とか言ってくる。
さすがにホウホウの体でシャワー室を飛び出すと待っていたのは女性が3人と男性2人、男性は結構仕上がっている感じで、好感の持てる筋肉なのでトレーニング法を聞きたかったが・・・さすがに女性3人の裸の前でやることではないだろうと思い、さっさと身体を拭って着替える。
洗い物をランドリーに放り込むと、足早に更衣室の扉を開けた。
・・・そこには腰に手を当て仁王立ちした彼女がいた。
あ、これあかんやつだ。
政府への復讐の前に、さらに難しい任務が立ちふさがった。




