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襲撃開始

アリラン8号はアリラン5号や3A号と同じくウクライナ・カザフスタン合弁のドニエプルロケットが2023年に打ち上げた設定になっています。

ウクライナ製のロケットエンジンとか・・・ちょっと嫌な感じがしますが・・・

対馬沖を北上する「かもめ」を追うように、三機のUS-3が海上に展開していた。いずれも新設計のエアクッション艇を一隻づつ搭載している。US-3への搭載を前提に設計された、全長12m、幅3mという、通勤電車のような細長い設計だ。そして各艇には、通勤客よろしくPAが一個分隊づつ搭乗している。しかも座席は無く安全バーに掴まる設計ときては、益々ラッシュの通勤電車のようだ。とはいえAP一個小隊を積載出来る設計の上陸艇なので、すし詰めという訳ではないが。そして、1号車ならぬ1番機「さくら」には第1分隊、2番機「ぼたん」には第二分隊が搭乗している。3番機「くるま」は非常時に備えた予備物資の上陸艇を積載している。

これらの上陸艇は波高2mまで運用可能で最大5t搭載しても海面30cmまで浮上して、時速60kmだせる。

とまあ上陸専用に割り切った設計をしている。強襲上陸なんてむろん無理だろう。

もっとも通勤客は定期代わりのPA装着前提なので、最悪、沈んでも海底を歩いて上陸すればいいという強引な考えがあるのは言うまでもない。

ちなみに俺は足長蜂ペーパーワスプに乗るのでそっちには載らない。


最後の4番機「かぶと」は本土の生産工場で対電子戦用に全面改修中である。

EC-1電子訓練機のような押しつぶれたブルドック顔になる予定で、乗員からはデザインに不満が出ているが、機内にスパコン持ち込んでそれ専用の発電装置を組み込んでも、最高速度と航続距離は若干減少するだけで、もともと12人で運用していた機体のおかげで、人員も2人しか増やさなくて済むとなれば試す価値は大ありで・・・開発コードECS-3は順調に改修が進んでいるようだ。


「全員、搭乗済みました。」

「よし、全機元山に向かって進発。」

「作戦名、「酔払いの千鳥足ドリンカーウォーカー」発令!」

艦橋に真田さんの声が響き渡る。

「さくら、離水完了、進路11時、異常無オールグリーン

「ぼたん、離水完了、異常無オールグリーン

俺はカモメから足長蜂を発艦させると通信を開始した。

「以後さくら搭乗第1分隊識別コードはハークとする。ぼたん搭乗第2分隊はノーブである。隊長機あてに作戦内容を転送中である。受領後各隊長報告せよ。」

「ハーク01 鈴木曹長です。受領しました。」

「ノーブ01 森曹長です。受領しました。」

「予定では1時間後に船外放出ウォータースライダーだ。それまでに隊員に伝達しておくように」

「「了解しました」」


MUは速度の関係から30分後に発艦し現地近くで合流ということになる。

合流地点までMUは高度30m程度の超低空で接近してくるはずだ。

US-3の方も高度100m程度なのでダウンバースト一発で海面衝突になる。

今頃、パイロットたちは胃の痛みを抑えてレーダーや各種気候計とにらめっこになっているだろう。

こういう時、足長蜂は海面上空2mをホバリングに近い感じで移動できるので、すごく楽だ。

操縦は基本FUフライトユニットとチック任せなので俺が手を出すことはほとんどない。


海面は穏やかで絶好の観光日和である。

そんな話をしたらハークもノーブも怒り出しそうなのでしないが・・・

彼らの命は、今まさにパイロットの腕が握っていて、自分では何もできない状況なのだから。

おそらくは皆、作戦伝達事項とにらめっこで気を紛らわすので精一杯だろうから。

30分も飛行しているとMU隊離陸の連絡が入ってきた。

あと20分前後で合流して元山近郊のドローン基地の破壊に入る。


破壊目標は、送信用の電波設備、ドローンの整備保管倉庫、発電用設備の3点で重要度は前者ほど高い。

基本的にはMUによる穿孔爆弾とティルミット反応を利用した焼夷弾の組み合わせだ。焼夷弾はナパーム一歩手前というかFAEというべきか悩むようなものになっているが、対建築物用に改良されたものだ。

基本的にはティルミット反応で3000℃まで上がる熱を利用して密閉状態から超臨界状態の燃料を爆墳させ、それが爆燃することで指向性のある熱と衝撃波を作り出している。

建物のどこかに穴を開けそこに向かって爆墳することで内部での加圧力を高めて建物破壊に用いるようにしたものだ。

穿孔爆弾は劣化ウラン弾等を使った戦車砲弾を爆弾にしたようなもので、ウラン弾芯が対象を貫通するように設計した爆弾だ。

威力は50口径120mmAP弾に匹敵するので、理論的には1mの鋼板をぶち抜くことができる。


「こちらアリスリーダー、12時方向にターキー01視認。2分後に合流。」

通信が入っていたので合流予定方向に光学系探査を回すと、V字に編隊を組んだMUが見えてきた。

恐ろしいことに飛行高度20mから30mで編隊長を一番下にした高度から見てもV字編隊を組んでいる。

レーダー反応はせいぜいカモメ程度の大きさの鳥と変わらない。

ステルス性は順調に効果を発してるようだ。


「アリスリーダーへ目標ポイントはAからPまで、前者ほど重要度高い。AからDは確実に爆破、少なくともJまでは爆破要望、KからPまでは地上部隊で対応可能。」

「各機の武装は事前計画通り、侵入経路はチックの指示待ちでいいの?」

「今チックはリアルタイムの軍事衛星画像から、最適侵入コースを計算中だ。あと200秒で指示が出る。」

俺のHUDにはすでにカウントダウンで180台になった待ち時間が示されている。

敵の兵力配置まで見ながらの管制指示だ。AIの能力の見せ所というところだろう。


「侵入コース算出完了、データ送信します。」

「おいおい・・・チック、教導隊に餌やりすぎじゃないか。」

「彼らの技能も考慮に入れてあります。各機2発づつの穿孔弾と焼夷弾ですので中隊12機で24セット、AからDは3機で1セットづつ攻撃、EからJは二機で1セット攻撃、KからNは単機で1セット、OとPはハークとノーブにそれぞれ任せます。」

地図上に示された作戦矢印は、単純なコースを組み合わせたもので、それでも敵の密集地は避けるように設定されていた。

「俺の出番がないぞ。」

「あなたはこの戦場での最後の予備兵力になります。破綻した場所に向かって飛んで行って穴埋めしてもらうことになります。」

「出番がないことを祈るよ。」


元山まであと3kmという海上でUS-3は着水し、後部ハッチを開けた。

中から芋虫のようにホバークラフトが滑り出し、海岸に向かって舵を切った。


そのころには地上からは爆発音というより轟音が聞こえてくる。

電波塔の基部の建物が一瞬膨れ上がり破裂する。

その後は基部を失った電波塔が崩落していく。


「ど派手だな。」

「MUは増槽の代わりに爆弾積んでるんで、作戦可能時間はあと8分です。その後はかもめに戻って給油です。」

「さっさと爆弾おろして帰ってもらおうか・・・残りは歩兵の仕事だな。」

3カ所あったブンカー式のドローン倉庫も吹き飛んでいた。


「こちらアリス01、作戦終了、帰投する。幸運を。」

「ターキー01受領。帰るまでが遠足だ。帰路は気を付けて。」

「こちらアリスリーダー、そちらも逃げ損ねないでね。」


アリス01というときにはマシンボイスが、アリスリーダーの時にはうらら社長の声がする。

これはアリス01も大分成長しているのではないだろうか?

チックに向かってそういうと。

「人間に対するインターフェイスはまだまだ発展途中です。いくつかの定型を使い分けているだけです。」

と結構辛辣な意見だったが・・・「人間に対するインターフェイス?」と突っ込むとAI同士のインターフェイスは問題ないようで惚気が入ってきた。

途中で打ち切らせて戦況を表示させると敵戦車など重武器は衝撃で指示が出てないのか、ほとんど動きがない。

その間にホバーが発電所に接近。各自で攻撃をはじめた。


日本人の感覚からすると発電所がこれだけたくさんあるのは不思議なのだが・・・アジア地域では小規模火力発電所の並列送電で送電網の安定性を上げている部分もあり、元山の大きさで5カ所の発電所というのはごく普通の様式になる。


「装甲部隊に動きあり。街の北の平地に脱出する模様です。」

「街の外で防衛戦線を作るつもりか・・・案外、勘がいいな。」

我々はこれから後南に脱出してそのまま西へ移動である。


西には山が見えている。ホバーは山道が苦手なので道路を使わせてもらう。


黄海北道にそって西に向かい、新坪郡まで走り、そこからは川の上を移動して平壌すれすれまで西に向かう。平壌近郊の江東郡から北上して平地を走って、別の川に、そのまま北上して新成川に到達する。250km程度の行程だ。予備の3番機に燃料や武器は搭載してあるので、たぶん行けるだろう。

軌道上から情報衛星も見張っていてくれることだし、最悪の時はUS-3が救出に来る予定だ。

「こちら、ターキー01状況終了、ハーク01、指揮を執り黄海北道を侵攻せよ。」

「ハーク01了解。指揮を執り黄海北道に向かいます。」

「ターキー01は先行し、警戒に当たる。以後無線封鎖、緊急時のみ発信可、判断は分隊長判断で。」


そのまま足長蜂は先行して山地に向かう。道路も無視して高度100m程度で移動する。

「チック、敵の動きは?」

「大規模なものはないですね・・・中継用電波塔と停電で正確な状況がつかめてないようです。」


北に逃げた装甲部隊から連絡が入って、他の街の部隊が動き出すまでどれくらい余裕があるか・・・

「鬼ごっこだな。ちゃんと見張っていてくれ。」

「了解です。今停止軌道に衛星が1基いますので、これを使い捨てる覚悟で情報収集します。」

「上から許可出るのか・・・?」

「大丈夫です。本来の名前はアリラン8号ですから・・・」

「・・・こっそりやれよ・・・」

「これって拾得物扱いになるんでしょうか?」


宇宙空間に国内法は通用しないから拾得物にはならないだろうが・・・バレたら亡命韓国が騒ぎそうだな。まずバレないとは思うが。

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