くろしお号
本日のうらら社長は完全私服モードだ。
横縞のTシャツにフリンジ付きデニムのショートパンツ。
Tシャツの襟刳りは深く、鎖骨も見えている為、男の子には見えない・・・と思う。
そこで、我々はどこで男女を見分けているのか・・・ちょっと考え込んでしまった。
髪型、これは重要だが、絶対ではない。
体格の大きさは全く関係がない。
・・・本当に何で直感的に見分けているんだろう?
自分の視線を注意してみると、どうも首筋から肩にかけてのラインが重要のようだ。
ということは僧帽筋か、そこが男女の分かれ目なのか!
ステロイド使用の影響がもっとも出やすい筋肉であるから案外あってるのかもしれない。
今日は一つ問題解決を進められた。
・・・
社長の目線が冷たい気がする。
仕方ない。かもめに乗り込んで10日たつが、これで1週間進展無しだ。
潜水艦の改造は余りに危険すぎる。
まず、外板だが超々高張力綱板を使っているため、溶接そのものにものすごいノウハウがいる。
溶接の温度、溶接後の冷却速度による金属結晶の成長調整、接着圧・・・etcだ。ちょっと間違えば脆弱部分ができて潜行能力が一気に失われる。
現状できるのは文献で確認された金属疲労の軽減法、加温
冷却による歪みの修正ぐらいなものだ。
それで中身をいじろうとしたが・・・やりたい改造は日本の特定メーカーに頼らないと安全性に不安が残ることが判明。
一番簡単な鉛蓄電池をリチウム電池に変えようとした時点ですら日本のY社以外では安定性に疑問があり、炎上する可能性があることが判明した。
・・・潜行中の船火事とか、危険すぎる。
このため、現状の鉛蓄電池ディーゼル機関を改良する方法が船の容量の問題からまだ見つかっていない。
燃料電池方式も考えたのだが、意外に燃費が悪い。
結局あさしお型でテストされそうりゅう型で使用されたスターリングエンジンを搭載する事になりそうだが、結構な価格と容量を食うため、船殻の一部を切断延長しなくてはならず工作強度の確保が・・・という悪循環に陥っている。
工作強度に関しては作業者の技術と直結するので、現状は佐藤3尉が召還している船舶関係の技師、真田3尉の着任を待つのみである。
とはいえ、少しは前に進みたいということもあり改造の企画を作っては破棄するというのが、この1週間続いている。
「ジン、まじめにやってる?」
「もちろん!」
「なんか、違うことを考えてたみたいだけど・・・」
君をみていたのさ・・・なんて軟派な言葉が出せるわけもなく・・・黙って視線をはずす。
「これでも読んでみたら?」
出されたのは小澤さ○る氏の漫画「青の○号」である。
偶然だが青の○号はくろしお号という名前で大きさも2700t、くろしおは2800t、AIP(非大気依存動力)を後付け(青は原子力だが)という奇妙な符号がある。
パラパラとめくっていると、
とあるシーンで俺は「これだ!」と叫んだ。
うららが顔を寄せてきて漫画のページをのぞき込んできた。
髪からいい匂いが漂ってきて思わず撫でたくなる。
「これのどこが?」
そのページには青の1号、コーバック号が撃沈されるページが描かれていた。
「このデザインだよ」
パワーパックを外付けにして船体と翼でつないで船殻の外側に配置する方法ならば、既存の船体に手を加えずAIPをいくらでも増やせるし、今後他の潜水艦にも流用できる。
その場でラフスケッチを書き上げる。
船体に合わせた輪っかから4枚の羽根が生え、その先端にAIPを内蔵した魚雷型のパワーパックが装備されている。
翼にはスラストが付けられ非常時の推力と、急な方向転換に用いられる。
「なるほど、これなら」
くろしおのディーゼルエンジンと蓄電池を下すことで内部容量に余裕ができる。
燃料タンク(ディーゼル&AIP用燃料)を増設してもおつりがくる。
メンテナンスが若干面倒になるが、パワーユニット丸ごと交換整備を前提にすれば、整備時間は短縮できると思う。
あとは、推力のバランスと取りつけ位置をチックにシミュレートさせる。
演算結果から設計図を引き、3Dプリンタで模型を作って、風洞実験を行う。
その結果水中速度を8ノット上昇させ28ノットまで向上する見込みがついた。
あとは漫画から影響を受けた音響デコイや潜航艇を設計してみる。
「高橋、デコイはともかく潜航艇に意味があるんですか?」
「俺には意味はないが、お前には意味があるだろ。」
「?」
「海戦ではアリスは動けないから、フラストレーション溜まるだろう。」
「ああ、彼女用ですか。」
チックも納得したようだ。
「そうなると潜水艇にも武装が必要ですね。」
「通信装置も考えないと・・・赤外レーザーかな?」
こうして我々は真田3尉が到着前に彼に多大な宿題を用意するのに成功した。




