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真田六郎 技術開発部長

モデルはもちろん「こんなこともあろうかと」の真田さんです(笑)

ジェットタービンの音を立てながらCH-47JAがかもめの上に着艦した。

前後に大きなローターがタンデムでついた輸送用ヘリであり、1960年代の開発にも関わらず、改良改良で現在も第一線で活躍し続けている優秀なヘリコプターだ。

後部ハッチが開くとそこからコンテナが吐き出されてくる。

連結した二台のコンテナはゴム車輪が取り付けられていてスムーズに牽引できるようにしてある。

「AP第1分隊牽引開始!」

待ち構えていた鈴木曹長が部下に声をかける。

こういう作業はAPにとってはうってつけだ。

コンテナの台車にワイヤーを繋ぎ、犬ぞりの犬のようにコンテナを引っ張っていく。

コンテナがヘリから引き出され、エレベーターに向かったころ、側面のタラップから一人の男が下りてきた。

角刈に整えた黒髪に海自の第1種礼装の白服がよく似合う中年である。

彼はこちらに気付くとゆっくりと歩み寄ってきた。

「春3佐と高橋3尉とお見受けします。自分は真田六郎です。ただいまから着任します」

そういいながら敬礼を決めてきた。

「春よ、今の肩書は代表取締役社長になるわ。あなたも技術開発部長としての着任だから、その辺は佐藤顧問に聞いてるとは思うけど?」

「はい、聞いています・・・が急に切り替えるのも難しいのでおいおいでお願いします」

「高橋だ。肩書は副社長だが、うららさんのすぐ下の部下という点では同格だ。気を使わないでくれ。」

「了解です。」

「早速だが真田さん、潜水艦の改造案が出てるので、専門家の目から見た意見が欲しい。疲れてるところ悪いが会議室でいいか?」

「ええ、ヘリで30分飛んだだけですから、疲れはありません。始めましょうか」

会議室に移動してくろしお号の改造ラフ案を見てもらった。

彼の目から見て、ラフ案はギリギリ合格ということらしかった。

「船殻に手を付けなかったのは大正解ですね。ここに手を付けるとなると熟練工集団が必要になるので本土の乾ドックが必要でしょう。」

とはいえ手を入れなければならないところもものすごい量らしい。

設計図はたちまちの内に修正線と書き込みで真っ赤になっていった。

修正点は主に材料変更と耐久性を考えたデザイン変更だった。

「最初のデザインだと、金属疲労で2000時間もたたないうちに潜水性能が落ちていました。」

ぐうの音も出なかった。確かに耐久性は考えてなかった。

彼が書いた図面は船体後方に4つのスクリューのついたドーナツ状の推進器をおいて、そこから伸びるブームがスクリュー軸跡の部分に接続する形をとっていた。

「船殻に余計な穴はあけたくないので、現状開いてる部分を流用しました。ブームの中にパイプを通して燃料を供給します。」

そのまま、それをデータ化すると、細かい演算をしながら必要強度を求め、加工鋼材を指定していく作業に入った。

「あの、真田さん、一気にやらなくてもいいんですよ?」

「・・・」

彼は作業に集中してこちらの声が聞こえてないようだ。

一心不乱にキーボードとCADパッドを操作している。


「でも、こんな優秀な人が3尉ってのも不思議だな?」

「そうね、あなたや佐藤と違って大学出で、士官候補生で入隊したはずよね。」

「経歴書は出しておいたはずだが、まだ見てないのか社長?」

「佐藤顧問、見たけどなぜ3尉なのか、疑問になる経歴よね」


「そうなんだ」

おれの頷きに佐藤顧問が頷く。


「優秀すぎるんだよ、あいつは。」

「優秀すぎる?ですか」

「旧式の護衛艦を改修して延命処理する設計をさせれば、新型艦艇を超える性能にしてしまう。新型艦艇を設計させると非常識な性能が出て、従来の戦略・戦術データでは運用しきれないものを作ってしまう。そこに他人からの妬みヤッカミが加われば、昇格できんわな。せめて佐官になってからやれば何とかなったが新任3尉がやったんでは上官の面目丸つぶれだ。」

「なかなかに恵まれない人ですね」

「もったいないじゃない。もっと偉くして大仕事を任せればいいのに」

憤懣やるかたない感じで社長が口を尖らせた。

「それがな、さっき言った旧式艦艇の改修作業が問題になった。新造艦艇を1隻あきらめれば5隻新型並の艦艇を手に入れられるとわかったとき、財務省から圧力がかかって一時期新造艦艇が極端に減った。」

「それが20年代の30DE計画遅延ですね。補助艦艇が船齢が古いのって彼のせいもあるのか。」


「まあ、それで割喰ったのが新任の佐官で、船が増えないと船長になれないというのが、もろに効いた。以来、海自では鼻つまみ者だ。」

「佐藤顧問、なんでそんな人物知ってたんですか?」

「別調2課では要注意人物だったからな。待遇が悪くて不満があり、海外に引き抜かれると機密が一気に流れるだけでなく、その国の軍事技術革新を起こしかねない奴ということで、海幕本部もこちらに出せてホッとしてるだろう。」

「そういう経歴なら、こき使ってリターンを十分にしてあげたいわね。」


社長のお墨付きがでた・・・こき使われるのは既定路線らしいぞ、真田さん。




大型護衛艦は甲型でDD(汎用)DDH(ヘリコプター搭載)乙型DEが沿岸警備等に用いられる小型護衛艦です。

現在30DEと呼ばれる計画が進行しています。これは警備用の船を若干大型化して多目的に安価に作ろうという計画です。

この世界では真田さんのせいでこの計画を遅らせて、年間5隻新造予定を2隻にして旧式船を改修する方向になってます。そのせいで退役予定の船が現役だったり、退役した船が現役復帰したりしてます。

船の数は大きく増えてません。これは30DEでは操作人員の削減も予定されていたのですが、そこまでは無理だったので、船の数を増やせなかったという理由があります。

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