先行者に続くもの
先行者は中国の人型ロボットです。
画像検索すれば万里大王の姿が想像できます(笑)
アリス01との模擬空戦は12秒で終わった。
「勘違いしないでよね。あたしたちは教導団よ。敵の動きをコピーすることで訓練させるのが目的の部隊なんだからね。決して勝てなくて悔しいとかそういうことじゃないのよ。」
ツンデレっぽい言葉とは別に攻撃はドS級だった。
アリス01は最高速度で近づいてくると射程ギリギリでピンポンの玉のように跳ね上がった。
そのまま弧を描くように機首を真下に向けることで射線を外さず、足長蜂の上空12時方向を抑えこんだ。
こちらも射線を外そうと運動や捻りを入れたが、射線を外さず横向きや上下の軌道を行うMUには勝てなかった。
完全に飛んでる方向と機首の向きは別々だし、メインノズルも明後日の方向を向いていたが、慣性と重力と補助ノズルの推力だけでこちらの機動をことごとく潰した。
アリス01のAIがこちらのターボファンの傾きから次の軌道を予測したらしい・・・さすが空戦特化型。
「アリス02もこれくらいは楽にできるわよ。調子に乗って空戦しないように!」
「判った。足長蜂は電子戦増強用装備として運用する。」
敵の動きがさっきのアリス02の動きなら防御に徹すれば落とされることはないだろう。
もしドローンなら支配して直掩に流用すればいい。
チックが言うには次回からはプロペラピッチの調整だけで横回転を生めるよう試算したのでそう簡単にはやられないとは言っているのだが・・・
ともあれ、国内でのテストは終わりにした。
対馬にやってきたUS-3に乗り込むと、釜山に向かって出発である。
今回のJTF-JSの作戦目標は「朝鮮半島に出現した巨大歩行兵器を確認せよ!」である。
俺たちの活動前に硫黄島から事前調査に出た無人偵察機が迎撃されたとされる歩行兵器を確認、可能ならば捕獲するのが目的である。
ただこの兵器はおそらく2足歩行兵器で重機関銃装備とまでしか解明されていない。
ステルス性が極めて高く、全体像がいまいちはっきりしない。
頭と胴体に至っては外縁部分以外はレーダーが反射しないため正確な形状は不明である。
かろうじて脚部は形状がわかっているのだが・・・それも地上反射の電波を拾うためノイズが多く武装装着個所は不明である。
弾道から頭部分に機銃が装備されているのは間違いないとされるがそれ以外は未確認である。
資材を戦車以上に使うはずなので武装が機関銃のみとは考えられない。
そこで今回は偵察で配置が確認され、海に近い土地として釜山の強行偵察任務が入った。
US-3の巡航速度は470km/h 対馬・釜山はおよそ100km、つまり15分で到着である。
先行するUS-3からポロポロとMUが落ちていく。
落下しながら翼を展開して周囲に偵察に散らばっていった。
「US-3、3号機着水。」
MUが安全を確保してくれたので我々の3号機は沿岸近くに着水する。
足長蜂をフロートに乗せて海面へ・・・折り畳んでいた翼を展開、ターキー01で乗り込む。
フックにゴムボートの牽引ワイヤーを引っ掛けると、飛行を開始してAP小隊を曳航していく。
「こちらターキー01、朝鮮半島上陸、今!AP小隊散開、任務開始します。」
「こちらスキッパー03、01、02の姫様たちはまだ兎を見つけていない。パーティー終了までは2時間。お祭りの時には花火をあげろ。オクレ」
「こちらターキー01、コピー、オーバー」
ヨンド島南岸の砂浜に上陸したが、まったく人影がない。
最前線とは言え大都市なんだから民間人がいてもいいはずなのだが?
気付くと砂浜の出店も全くない。
「こちらキューピー02 03から06までは南、07から11までは北に向かわせます。02は南に、01はこの付近で待機願います。」
「こちら01、02の鈴木曹長、充分、気を付けてくれ。人影がなさすぎる。」
「戦闘配置完了ということでしょうか?」
「そうみておいた方がいいだろう。」
チックのディスプレイに地図とAPの現在位置が青の円で示されている。
時折付近を飛んでいるMUの青三角が高速で地図を横切っている。
「いないなー?」
ターキー01のモーター音だけが響く静かな状況だったが、それもわずかな間だった。
「アリス07、コンタクト、兎を発見。」
マップを拡大するとアリス07は対岸の市街地ドン区にいた。
「機銃効果なし。もう100発はぶち込んだはずだが、動きに変化なし。」
「足長蜂出撃、データ収集に向かう。02以下ドン区にむかえ。」
足長蜂の機関銃は12,7mm50口径である。7.7mm機銃のMUよりは威力がある。
「接敵して、敵、防御力を確認する。」
1分後には交戦場所に到着していた。
「なんだ・・・これ?」
そこにいたのは巨大な全高15m程度の二足歩行兵器だった。
外観は何といえばいいのか・・・がっちりとした鉄骨むき出しな脚、そして股間からそびえたつ125mm戦車砲・・・その上の胴体はフレームしか存在しない、かろうじて腕の付け根だけはモーター室が見えるが・・・うでもただくの字に曲げた棒に手の部分に錘がつけてある。肘関節はない。
対空射撃を行っている機関銃は頭についているようで、そこだけ鉄板が張られ投げやりな表情の顔になっている。もしかして操縦者も頭に搭乗しているのか?
他に搭乗場所なさそうだし。
アリス07の機銃は空っぽの胴体をすり抜け後ろの地面に着弾している。
「チック、アリス07へ画像転送。射撃を中止させろ。」
「了解。」
「チック、敵の戦力推定・・・データベースにないか?」
まあ、ないとは思うが、あんな兵器聞いたこともない。
「・・・ありました。2000年に国防科学技術大学から発表された「先行者」の拡大型と思われます。」
「あったぁ?」
「頭の部分に万里大王と書かれています。」
思わず突っ込みたくなるが万里の長城もセメント製にする国だ。いうまい。
「推定性能はわかるか?」
「結構な出力ありますね。足の中央の125mm砲と骨格を推定すると20tぐらいだと思います。走らせれば瞬間出力もとれるとは思いますが。」
「走れるのか?あれ。」
「左右の腕はバランサーでしょうから走るのはかろうじて可能だと思います。」
バランサーと割り切れば肘関節はいらないか・・・
「それにしても開発目的は何だろう?」
「おそらく先行者の移動速度向上のためにサイズを大きくしただけかと・・・」
「は?」
「防衛科学大の威信がかかっていますので、とりあえず完成して動くことが重要なんだと思います。」
「いやいや、そこでなんで速度上げるの?」
「おそらくAPの歩行性能が流れたんだと思います。」
「?」
「日本の二足歩行兵器に負けるわけにはいかない・・・というところでしょうか。」
「・・・さっさと倒すぞ・・・」
俺はチックに頭の頂点部分に機関銃を叩き込ませた。
「なんか揺らいでます・・・」
「おそらくパイロットは鳴らされた鐘にいる状態だろうな。」
可愛そうとは思うが・・・設計者を恨め。
「あ、戦車砲がこっちを向いてます。」
「ギリギリまで引き付けて垂直上昇!」
ドコーーン
戦車砲の反動は万里大王を後ろにこかせるには十分な反動を持っていた。
「中のパイロット・・・死んでないか?」
15mからの落下である。普通なら死ぬ。
少し待つとAP小隊がやってきてこけた万里大王に近づいていく
「キューピー02以下キューピー小隊、目標捕獲。パイロットはエアバックで無事。捕虜として確保。」
「パイロットは丁重に扱え。あまりにも可哀そうだ。」
自分があの立場だったらと思うと涙を抑えきれない。
結局、万里大王は手足を解体すればUS-3に積めることがわかり、無事に帰投、任務を完了することができた。
「それにしてもなんでこんなものを脅威と思ったのかね?」
「レーダー反応と軍事衛星の視認では、まさかフレームだけとは思わないでしょう。実際に探査レーザー打ち込んでも通り抜けたでしょうし。究極の光学偽装とステルス性を持っていると早合点しても仕方ないのでは?」
そういわれるとそうかもしれない。
だとするとこの大王の本当の任務はカカシ?もしくは鳴子なのか?
「まあ、鉄骨溶接や光ケーブルの純度から、ある程度は製造技術を割り出す参考位にはなるか。」
「次もこんな敵だと楽でいいですね。」
チック、フラグを立てるのはやめてくれ。




