足長蜂(ペーパーワスプ)
自衛隊ベストボディは今年からの開催ですので・・・設定年数がわかるかも・・・まあ、年二回とか休止の年とかがあるかもしれないので・・・あくまでも目安ですが。
「じゅーきゅううぅ・・・にじゅうぅ!」
サイドセプスキックバックを20回×3セット行った。
25kgダンベルなのだが上腕三頭筋はパンパンになっている。
ターキー01で出撃していた時に比べると、普段使わない筋肉が鈍ってきているようだ。
1か月でこれだと筋トレメニューを見直さないといけない。
二の腕にクールスプレーを噴き付けて熱を飛ばす。
そのままシャワーを手早く浴びると整備場に向かった。
ターキー01のオーバーホールがようやく完了したとの連絡が入っていた。
予定よりも5日遅れたが、整備班が悪いわけではない。
ひとえに新型ドローン、足長蜂のせいである。
開発ネーム「ペーパーワスプ」は設計図のみ、初心者運転手からつけたのだが・・・見事に内実を示していた。
仮組をして出力試験の段階でじゃじゃ馬ぶりを発揮、専用のAIで動作制御しないと水平上昇すらままならない。このAIのデータが揃うまではチックが3コア稼働で補佐するはめになった。
その後も、機動時の強度不足が懸念される個所の発見や対策。燃料タンクの燃料減少に伴う重心制御、マニュアル操作での飛行安定性の確立等々、よく2週間で組み上げたと驚くばかりである。
整備場にはターキー01を中心に、蜘蛛のように6方向に腕を伸ばした巨大ドローンが鎮座していた。
腕と腕の間に膜を張ったら空飛ぶ円盤になりそうである。
それぞれの腕の先にはターボプロップエンジンが取り付けられ、むき出しのプロペラがついている。
積載サイズの制限から腕は途中で直角に折れるようになっている。
ターボプロップはPT-6A-6、1950年代から使われているベストセラーである。
数万台の生産が行われ安定感は抜群である。・・・そのせいで敵のドローンに使われているのだが・・・
出力は1基あたり570馬力。得られる最大浮力はプロップ6機で2.5tである。
これをフレーム、操作系、燃料系、ターキー01搭載用設備、C4Iもどき+通信システム、武装で割り振ったら搭載燃料は1.5t(最大航続時間3時間、行動半径1000km)という結果になった。
この辺は徐々にチューンしていくことになっているので改善が見込めるだろう。
ともあれこの機体、ターキー01が乗って移動できる。
しかし他の機体はまだデータが不足しているので不許可であり、専用機ということになる。
というのもドローンの形態であるから、翼がついておらず、オスプレイのようにプロップエンジンを傾けることで推力を得る。
フレームは設計で空力で浮力が生まれるようにしてあるため。高速なほどエンジン出力は少なくて済み、航続距離は伸び、戦闘機動も余剰出力の関係で激しくできるのだが・・・機体にかかるGの問題から、作戦速度は当面700km/h以下に制限されている。
以上が足長蜂、全備重量2.5tのドローン・・・すでにドローンというよりマルチコプターといった方がいいとは思うのだが、書類上の問題でドローンである。
展開時全幅は6mであるが、腕を折りたたむと幅2.3mに抑えることができる。
将来的には捕獲タンカーを空母代わりに使う運用法も視野に入れている。
もっともAPの対地制圧能力は人間に毛が生えた程度なので、侵攻用には使えないだろう。
せいぜい機動防御や遅滞戦闘が有利になる程度・・・と思っている。
武装は倉庫にあったM2に自動給弾装置を加えた程度である。
射撃軸は固定で、可動装置は軽量化の面で見送った。
もっともターキー01ディスプレイに表示される狙撃ポイントマークは、距離や風速による着弾のズレを補正して表示されるため命中値は意外に高い。
左右角は定置旋回で調整できるというドローンの特性も大きく働いている。
これらのペーパーワスプの癖の確認と、ターキー01の緊急脱出装置の増設などで時間がくったのだが、海自のUS-3が明後日に装備搭載に来るということで、残りは作戦中につめていくということで合意ができている。
おかげで佐藤3尉も整備兵として一緒に行くことになった。
「まあ、今年の自衛隊ベストボディを目指して、機内でトレーニングさせてもらうぞ。」
自衛隊ベストボディは自衛隊内部のボディービルコンテストである。
ポージングに敬礼が入っているあたり自衛隊らしいが、最も重要な点として陸、空、海で争う、各自衛隊の面子をかけたガチの試合である。
陸自が有利なように思えるが、空自は整備兵または基地通信兵、海自は乗艦者の中から選ばれて特訓を行っている。
陸自はボディーを完全に仕上げるとスタミナの問題が発生してしまうので、同じく非戦闘部門の方々が頑張ってくれている。
佐藤3尉はその中でも一目置かれるカリスマだ。自衛隊ベストボディ部の陸自コーチも務めている。
第15回自衛隊ベストボディでは45歳にして、みごとに栄冠を陸自にもたらした。
今回は第17回になるが前回の雪辱に燃えている。(前回は海自の甲板員だった。)
「書類仕事がない分だけトレーニングに回せるだろう。」
「基地から整備小隊長がいなくなって大丈夫ですか?」
「整備そのものは中隊だから、他の小隊長がいる。問題ないはずだ。」
「まだ大会まで2か月あるんですが・・・」
「今年はギリギリまで絞るからな・・・当日の体脂肪5%が目標だ。」
「・・・・飴、大量に買っておきますね。」
冗談抜きで6%を切ると、頻繁に栄養をとらないと餓死する。
基礎代謝が高いだけにすぐにガス欠になるのだ。
そこでよく用いられるのが飴だ。ステージ直前でも用いることができ、即効性が高い。
予備のターボプロップエンジンより重い彼の手荷物をコンテナに収め出発の準備はできた。
あとは戦闘小隊と整備小隊に集合をかけて、宴会をして今日は終了だ。
明日はターキー01の慣らしと足長蜂の最終確認でつぶれるだろう。
今日の宴会は陸自基地の食堂だ。さすがに通常日に外で2個小隊を集めるのは無理がある。
「アリスから連絡です。今日の顔合せに教導隊も出席したいそうですが?」
「焼酎自前で準備するならOKと返信しておいてくれ。どうせ5分も持たないし皆に教えておくのもいいだろう。」
「飲み方ですか?人員ですか?」
「どっちもだ。両方濃いからなぁー」
そんな話をチックとしていると水平線の向こうからターボファンの音が聞こえるような気がした。




