ドローン開発
810分隊長に鹵獲ドローンの処分が一任されているのは、戦闘に使って消耗することが前提のためです。
結構な数が備蓄されてます。
ターボファンエンジンの噴射音が滑走路に響いていた。
滑走路から飛び立っていたのはグローバルホークRQ-4無人偵察機だ。
すでに20年近い機体ながら内部装備の換装によって未だに一線兵器の座を確保していた。一機18億円という高価格に加え運用基地整備を含めると数百億円とも言われる。莫大な設備投資の元を取るべく本日も偵察任務に向かっていた。
ここはキャンプ硫黄島。東京から遥か南に離れた米軍と自衛隊の最大拠点の一つだ。
ミサイル防御の面から沖縄から移された偵察部隊の所属する後方にある最前線だ。
無人偵察機は1ユニット12機が配置されている。
それに加え攻撃用にRQ-9プレデター1ユニットも配置された。無人機の集中運用基地である。
常時5機以上の無人偵察機が空中に維持できるように1機につき操縦員2名1ペアでローテーションが組まれている。
グローバルホークは最大36時間の作戦行動が可能なこともあり偵察作戦半径は5000kmに及ぶ。
損失を防ぐため朝鮮半島上空は高高度に限られた作戦だったが、今月より積極的に低中高度からの偵察を行うように指令がでた。
場合によってはプレデター帯同での作戦である。
キャンプ硫黄島では朝鮮半島での作戦は規定のものと判断され、緊張感をもって偵察任務をこなしていた。
「これは・・・何だろう?」
グローバルホークからの映像を見ながらモニター担当の小林2尉が隣の席の大石2尉に話しかけた。
「装甲車・・・いやクレーンか?」
「念のためミサイルじゃないか、赤外線とX線で捜査してみよう。機体をもう一度回してくれ。」
「了解」
大石2尉の操作で機体が回頭し画像が流れていく。
「走査開始」
小林2尉が操作を始めると、目標物からフラッシュのような光が輝いた。
「目標、発砲。緊急退避。」
グロバールホークの速度が急上昇すると高度をグンとあげる。
機体の近くを曳光弾が通り抜ける。
発射地点に稼働センサーを集中させる。
「12.7mm砲2門、移動が断続的?もしかして二脚歩行か?」
「ばかな、何の意味があるんだ?トラック並の大きさで2足歩行兵器なんて・・・」
小林2尉の言葉に大石二尉の呆れ声がつづく。
「わからないが、現実にそこにあるじゃないか!」
「プレデターがいればミサイルを打ち込むところなんだが・・・」
「近くに稼働機なしか・・・」
「いったん帰投して記録データの分析だな。」
「了解、帰投許可を申請する。」
この2足歩行メカだが、このペアだけでなく他の地域の偵察機からも報告が上がったことから、おそらく量産機であろうとの推測がなされ、幕僚本部での真剣な議論を巻き起こすことになるのだが、用途が全く不明であることからJTF-JSに対する追加任務に加えられることになる。
「やっぱり、ターキー01でないと乗ってて楽すぎるな。」
高橋3尉は指揮官用の予備機に乗っての作戦参加をしていた。
軍用無線波長、リンク16を使えるとはいえ、チックはハンガーの中、データの転送ラグによる不確定性のためリアルタイムでの演算は許可されてない。
「戦闘そのものは、順調なんだが・・・C4Iが使えないとこんな感じになるのか・・・」
朝鮮半島の戦場では起きないとは思うが、ECMで負ければ演算結果を伝送する事ができなくなる。
そうなった時を疑似体験ができる訳ではあるが、ドローンの数が10機程度では、指揮無しでも各個撃破してしまうためあまり参考にはなっていない。
久しぶりに自分で手持ち武器での射撃も行ったが、洩光弾を使っても避けられ命中できない。
中隊統制射撃をしようにも指示と処理能力が圧倒的に足りない。
「これだとターキー01に何かあったときを想定して対策が必要だな。」
まだ戦闘中だが攻撃力の性能を確認し終わると、溜息をつきながら対策を考え始める高橋であった。
その日の出撃の後、チックを個人用PCに呼び出すと相談を始めた。
「故障や戦闘による伝達不良ですか・・・」
チックの声は感情を含ませていない。
その分の演算ソースを別に振り分けているときの癖だ。
「普通に考えれば、装甲車両でしょうが、JTF-JPの目的からすると16式戦闘機動車クラスですね。ただ重量が26tですから」
「PS-3だと積載量は15t、87式偵察警戒車だとギリギリだが、AP搭載分とC4I改修分の重量が無理か・・・」
ちょうどいい特車がない。
「PS-3にC4Iを搭載することは?」
「向こう次第ですが、陸自の装備を海自に搭載するのは、防衛装備庁から文句が出るかと思いますし法律上も無理でしょう。」
「今回、積載許可が出ているのはAPのみか。」
「あと付属装備と我々用のドローンですね。」
「それだ!」
「?」
「ドローンを作ろう。急いで設計してくれ。要求性能は・・・」
俺はその日、一晩で要求性能をまとめるとチックに設計図を引かせ、整備小隊に招集して新型ドローンの試作を依頼した。
「高橋・・・これって・・・?」
佐藤3尉はチックが引いた図面をみて呆れていた。
俺は同じような表情を浮かべながら答えていた。
「搭載用ドローンだそうです。」
「確かに搭載用ドローンなんだが・・・大きすぎないか?」
「US-3に搭載できる限界の大きさです。」
「いいのか。こんなの作って?」
「材料は鹵獲したドローンの流用ですので、ここにある分は帳簿外資材ですから管理者がOK出せば行けます。」
そして管理者は第810分隊長つまり俺だ。
「まあ面白そうだからいいんだが、C4Iユニットはどうするんだ?」
「改良プログラムを組んだので自作します。」
「まじかい?機密保持は?」
「最重要部分はROM焼き付け+SSDで緊急破壊装置付で作ってます。」
「・・・まあ、やってみるか。」
「試作名は蜂型ドローン、足長蜂でお願いします。」
「了解、1週間くれ。」
「よろしくお願いします。」
こうして新型装備の開発が始まった。




