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嵐の夜に

マニューバユニット、絵は描けないんでフルスクラッチで立体化しました。

第21部の後半に写真入れてます。

全体的にグレーなのは低視認塗装、艶消しなのは空力抵抗低下&レーダー波攪乱のシャークスキン塗装によるとの設定です・・・僕の考えた最強戦闘機みたいなノリだなw

台風7号が迫っている。

台風の進路は予想通りならば東シナ海から朝鮮半島に抜けるはずだが、最接近時には対馬は暴風圏内に入るはずだ。

すでに大雨が降っており滑走路わきの排水溝からは、今夜の行方を示唆するように、雨水が盛大に噴出していた。


春3佐に日付を連絡し、ヒバラ屋に予約を入れたのは昨日、そして今日彼らを迎えに滑走路まで来たのであるが・・・乗ってる車両は非武装化した73式装甲車・・・すでに全車退役済みの兵員輸送車であり、これは佐藤3尉の私物である。

台風の中の移動を教えたら使えと言って貸してくれた。

この装甲車、作られてから半世紀以上たっているが整備の完璧性もあって走行に不都合はない。


運転席では鈴木1曹がレバーを握っている。

狭い窓から時折外を見ながら、あきれたような溜息をついているが・・・わからなくはない。

日没はまだのはずだが黒い雲で覆われた空は夜のように真っ暗だ。

車体には時折、飛んできた枝や空き缶がぶつかって高い音を立てている。

そのうち看板が飛んできてもおかしくないし、そもそも市内の道も冠水するかもしれない。

そうなるとキャタピラ装備の73式でもなければ移動もできないだろう。


・・・そこまでして飲みたいのか、アイツらは・・・


・・・わかる、気持ちはよくわかる。

鈴木1曹は筋肉の美しさを保つために日夜訓練している。

当然アルコールも節制しており、付き合い程度しか飲まない。

いくらチュンスルのファンでも彼の生き方を真似できはしない、というか真似するのが不可能だからこその憧れの対象なのだ。


一方、俺の方は普通に飲む。

体脂肪を下げているわけでもないので、飲んだ後のトレーニングメニューを増やすことにより十分対応できている。

それでも暴風雨警報の中、街に繰り出して飲みに行くという面倒は避けたい・・・できるならだが


「3尉、来たみたいですよ。」

滑走路の先に翼端灯が光っている。

まるで透明の道路でもあるように一直線の光の道が上空に伸びている。

そのままの隊列で着地する。

「ライトで居場所を教えてやれ。」

「わかりました。ライト点灯します。」

73式に搭載されたサーチライトが強力に滑走路の路面を照らす。

光に気付いたようで、MUが移動してくる。


73式は滑走路わきの大型倉庫の前に止めていた。

車載無線を手に取り、指示を出す。

「チック、倉庫シャッター上げてくれ。」

「了解、高橋、倉庫のシャッター上げます。」

おそらくガラガラ言いながらシャッターが上がっているんだろうが、風の音に消されてこちらまで届かない。完全に暴風圏内に入ったようだ。

やってきたMUは9機だった。

倉庫の中に次々と入っていき、全機収納するとシャッターを下げる。

73式を移動して倉庫のドアの前に後部扉を向ける。

これで、ほぼ雨にぬれず乗り込めるはずだ。

少し待つと倉庫のドアが開き、フード付きローブのような?長いポンチョのような服装をした人物が吐き出されてきた。

先頭の小柄な人物が春3佐だろう。

彼女は後部扉から乗り込まずに、助手席のドアまで来てノックしてきた。

ずぶ濡れだろうと、慌ててドアを開け車内に入れると、ほとんど濡れてない?

超撥水コートか。噂には聞いていたが、空自は装備がいい。

「出迎え、ご苦労、高橋3尉。またレトロでちょうどいい車両があったものだな。」

春3佐は何事もなかったように膝の上に座った。ほんとに膝の上に座るのが好きなんだな。

「この73式は整備隊長の私物です。今日の話をしたら貸してくれました。」

「では早速だが移動頼む。」

「はい、鈴木1曹、発進してくれ。」

「発進します。高橋3尉。」

彼女の返事とともにキャタピラのキュラキュラいう音が響き、社内が揺れる。

車載ライトで見る道路は、完全に川になっていて、そこかしこで車が止まっていた。

道路を流るの雨水は深い箇所では、車へのコントロールを失わせ、走行できないので通行止めである。


「これは装軌車じゃないと走れませんね。」

通行止めの看板を横目で見ながら鈴木1曹が呟いた。

車内はディーゼルエンジンのエンジン音とキャタピラの立てる音だけが響いている。


安全運転で走行すること20分。

無事にヒバラ屋の路地についた。

ヒバラ屋の店先までバックで入ると後部扉のロックを外す。


春3佐が社内マイクを手に取った。

「総員、降車。」

スピーカーから声が響く。

後部座席では一挙動で男たちが動き出す。

3秒後には誰もいなくなっていた。


「レンジャー並みの速度だな・・・」


「飲みに行くときの教導隊はレンジャーを超える。」

どこまで本気なのかわからない意見が春3佐の小さな口からこぼれ出た。

「さあ、われらも行くぞ。」

「まあ、警察も来ないだろうから、路駐にしよう。鈴木1曹も行こうか。」

「わかりました。」

3人が下りもおりて店に入ると

「お帰りなさい。兄貴&姐御。」

三郎が声をかけてきた。

姐御といわれるとき春3佐はうれしそうである。

(でも俺が春姉っていったら、完全におままごとの設定だよな。)

いまのポンチョ姿といい、本当に4才も上なのか疑問に思うことが多々ある。

「皆様方、すでに出来上がりのようです。」

「??」

三郎に案内された部屋には林立する1升瓶とともにマグロが8本倒れていた。

「ナニコレ?」

俺の呆気にとられた顔に春3佐が話しかけてきた。

「教導団の飲み会はいつもこうよ。始まって1分で一人2升ずつ焼酎を飲んで倒れる。」

「陸自でもやりませんよ。そんなこと!」

鈴木1曹が思わず突っ込んだ。


「三郎、悪いけどマグロ、店の前の車に放り込んでおいて。」

「わかりました。みんなー、お客様のオーダーだ。30代から50代までのパイロット。触りたい奴は手を挙げろー」

店の中を怒号が駆け抜けた。俺だ俺だコールである。

駆け付けた店員達は大胸筋と広背筋でTシャツをパツンパツンに弾ませ、膨らませた上腕二頭筋で袖口を伸びさせながら、歓喜の声を上げつつ、8人をたちまち運び去った。


「じゃあ、ゆっくり飲みましょうか。」

「そうですね。鈴木はどうする?」

「私は運転手なのでウーロン茶で。」


その後、3人で料理を摘まみつつ飲みながらも、これだったら、わざわざ台風を待ってやらなくても「おにいとまき」の食堂でやってもよかったんじゃないか?という疑問だけは拭えず、尋ねてしまった。

「でもこれだと「おにいとまき」でやっても良かったような気がするんですが?」

「私と飲むのは嫌?」

春3佐はからかうような声で訪ね返してきた。

「いえ、そうではなく、台風に合わせて事前に準備して宴会が1分で終了というのが大変そうだなーと」

「あの飲み方は教導団の本来業務が、戦闘ではなくパイロットの指導のせいもあるのよ」


・・・理由あるんだ・・・


以前に指導に行った航空団で飲み会で細々した操作を尋ねられて、答えたところ、中途半端に覚えたパイロットが高等操縦テクニックを使いこなしきれず墜落ということがあったらしい。

以来、飲み会では質問をさせる暇なく、飲みつぶれるのが教導団の伝統になったそうだ。

「飲むとどうしても口が軽くなるしねー」


・・・意外にまともな理由だった・・・

でもそれだと「おにいとまき」でやらない理由にはなってないような気がする。

俺の不満顔に気付いたらしい春3佐は続けて教えてくれた。


「おにいとまき」は高度20000mでしょう。いくら与圧してあっても機体内部は0.8気圧くらいになってるの。高度2000m位と同じ大気圧よ。」

それはわかる。旅客機と一緒の感じだ。

「そこでアルコールを飲むと早く酔いが回るの」

いいことじゃないか?早く酔いつぶれられるだろう。

「あの飲み方だと、つぶれるまでに12秒短くなって1升と7合位で沈没するのよ。」

「つまり飲みかけが3合できるんでもったいない。という酒飲みの論理で地上の方が喜ばれるの。」


・・・聞かなかなきゃよかった。確かに酒飲みは意地汚いところがあるが、3合のためにここまでの労力を費やすか?


「それぞれ好きな銘柄が違うから混ぜるわけにもいかないし、栓を開けると気圧が低い分アルコールも抜けやすいから・・・」

それって重要?絶対混ぜても飲むだろあの連中。


「ま、今回は恵美と飲みたかったのもあるからだけど」

「運転手ですみません」

「JTF-JPに連れてくみたいだから、また今度ということにしておく。覚えておいてね。」

「はい春3佐」

「うららでいいわ」

野郎の中で生活している女性陣か。いろいろ面倒なこともあるんだろうな。

AP乗りは体力直結な部分があるせいで男性比率が高い。

教導団は純粋に腕だが・・・あのオヤジ連中に勝てる女性は目の前の女性だけだろう。


3時間後復活した教導団に帰還の時間を告げられるまで3人でゆっくり飲んでいたが、たまにはこういう嵐もいいだろうと思った。


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